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世界子供白書 20162030 年までに普遍的で質の高いケアを提供するための戦略には、ケアの提供対象 を拡大すると「同時に」公平性の格差を縮小するという 2 つの密接に関連する目標が 含まれる必要がある。ここでもやはり、普遍的提供を実現するために、人口の 20%
の最貧困層に対する提供を、20% の最富裕層に対する提供よりはるかに速いペースで 拡大しなければならない。死亡率が高い 63 カ国では、保健支援の国内提供率を 20%
の最富裕層の水準にまで向上させれば、5 歳未満児の死亡事例の 4 件に 1 件を防ぐこ とができ、それらの国における 5 歳未満児平均死亡率を約 30% 低減させることがで きる(図 1.8. を参照)。
統合的な「肺炎と下痢に関する世界行動計画」の中で世界保健機関(WHO)とユニ セフによって策定された他の戦略では、2025 年までに肺炎と下痢による予防可能な 死亡をなくすために必要な対策を示している。この計画では、現行の支援を拡大する ことのみによって、67 億米ドルのコストで死亡者数を 3 分の 2 減少できると見込ん でいる
100。
子どもの栄養に関しては、世界の発育阻害の子どもの 90% が住む 34 カ国の調査 により、90 万人の 5 歳未満児の命を救う可能性を持った 10 の実証された支援が示さ れた。この支援の範囲は、急性栄養不良の治療から、補完食の供給、母乳育児、ビタ
子どもの健康:公平な人生のスタート>> 国民皆医療制度のメリット
注:拡大モデルにおける保健サービスには、専門技能を有する保健従事者の立会い、ビタミン A の補給、ワクチン接種などの支援が含まれていた。63 カ国 で全世界の 5 歳未満児死亡数の 88% を占める。LiST 分析は、ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院の国際プログラム研究所において、
Adrienne Clermont、Yvonne Tam、Neff Walker の 3 氏によって実施された。
出典:Johns Hopkins University による Lives Saved Tool (LiST)分析(2015 年)。
140
120
100
80
60
40
20
0
0 25 40 60
5 歳未満児死亡率のベースライン
(出生 1,000 人あたりの死亡者数)
40% 低減★
20% 低減 支援を拡大した場合の 5 歳未満児 変化なし
(出生 1,000 人あたりの死亡者数)死亡率
80 100 120 140
図 1.8.
63 の国では、公平性のある支援の提供を実現すれば、5 歳未満児死亡率を約 30% 低減させるこ とができる
国内提供率を最富裕層の水準にまで向上させることによる 5 歳未満児死亡率への影響
ミン A や亜鉛の補給まで及ぶ。当調査では、34 カ国における必要範囲の 90% を満た すために必要な、現行の形の栄養支援対象拡大に要する追加年間コストは、約 96 億 米ドルに上ると推定している
101。
この推定値は説得力を持つものの、場合によっては、保健制度のサービス提供能力 を強化することの重要性から注意を逸らすことにもなる。
適切な訓練と動機づけを実施された医療従事者は、効率的かつ公平で柔軟性のある 保健制度に不可欠な活力源である。子どもや母親の死をもたらす原因の診断、予防、
治療のために必要な支援は、独立したテクノロジーではなく、専門技能を有する保健 従事者によるコミュニティ・レベルの医療従事者、助産師、看護師、医師らによって 提供される必要がある。
医療従事者の慢性的な不足が、進展の加速化の大きな障害となっている。多くの国 において、医療従事者は都市部や比較的恵まれた人々にサービスを提供する施設に集 中している。彼らは、報酬の低さ、教育を継続する機会の欠如、労働条件の厳しさ、
供給品や設備の不足、あるいは自分自身の家族に対する社会サービスの欠如などの理 由から、遠隔地で働くことを避ける場合がある。
世界保健機関(WHO)は、国民の基本的ニーズに対し比較的高い水準の保健制度適 用を目指している国では、住民 1 万人に対して最低 23 人の医療従事者が必要である と推計している
102。こ閾値を下回っている国では、出産時の熟練ケアの提供や、新生
家の前で子どもにポリオの経口ワクチ ンを投与する保健員。バグダッドのサド ルシティーにて。(イラク)
©UNICEF/UNI199369/Khuzaie
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世界子供白書 2016 子どもの健康:公平な人生のスタート>> 国民皆医療制度のメリット
出典:世界保健機関、Global Health Workforce Statistics(2014 年)。
ソロモン諸島 ナイジェリア ミャンマー ジンバブエ パキスタン ラオス ケニア ガーナ ガンビア カンボジア
ザンビア イエメン ベナン モーリタニア アフガニスタン ルワンダ ギニアビサウ パプアニューギニア ブルキナファソ コートジボワール バングラデシュ マリ セネガル タンザニア モザンビーク マラウイ トーゴ 中央アフリカ共和国 リベリア エチオピア シエラレオネ ニジェール
0 5 10 15
医師、看護師、助産師の数(人)
20 25
WHO が定める最低閾値 = 人口 1 万人あたりの 医師、看護師、助産師の数、23 人
図 1.9.
多くの国では医療サービス提供者が不足している
人口 1 万人あたりの医師、看護師、助産師の数と WHO が定める最低閾値
児および幼児に対する救急サービスや専門サービスの提供に不自由している。サハラ 以南のアフリカのほとんどの国と南アジアの死亡率が高い国の多くは、この閾値を大 きく下回っている(図 1.9. を参照)。
2035 年までに、世界ではさらに 1,290 万人の医療従事者が必要になると考えられ る。現在すでにサハラ以南のアフリカでは 180 万人の医療従事者が不足しており、こ れに対して協調的行動がとられない場合、人口の増加に伴って不足数は今後 20 年間 で 430 万人にまで上昇するだろう
103。コロンビア大学地球研究所の推計によれば、
サハラ以南のアフリカに新たに 100 万人のコミュニティ医療従事者を供給するだけで も、その追加コストは年間 31 億米ドルになる。しかしその投資が可能であれば、命 が救われ苦しみが軽減されることに加え、生産性が強化されることで、推定で年間 194 億米ドルの投資効果をもたらすと考えられる
104。
西アフリカのエボラ危機により、リソース(資源)もスタッフも足りない保健医療 制度の脆弱性が浮き彫りになった。大流行直前のシエラレオネおよびリベリアでは、
人口 1 万人に対する医療従事者の数は 3 人に満たなかった
105。リベリアでは、430 万人の人口に対して 50 人ほどの医師しかいなかったのである
106。危機のさなかにお ける医療従事者の死亡により、感染流行国においてそもそも限られていた熟練医療サー ビス提供者が激減することとなった。エボラ危機から学んだ教訓のひとつは、伝染病 の流行を阻止して不可欠な支援を提供するためだけでなく、国やコミュニティの回復 力の強化を手助けするためにも、強力な保健医療制度が必要だということである。
この点について、インドネシアの全体的な医療従事者数と人口の比率は WHO が推 奨する水準に近いが、同国の医療従事者は国内全域において不均衡に配分されている。
貧困層にサービスを提供している施設では、基本的な設備や訓練を受けたスタッフが 不足していることが多い。そのため、マルク、パプア両州の女性のおよそ半数は、専 門技能を有する保健従事者の立会いなしで出産しており、これはスマトラにおける水 準の 2 倍を上回っている。一方で都市部の女性は、農村部の女性と比べると出産時に 専門技能を有する保健従事者が立ち会う可能性が 3 倍以上も高い
107。
医療従事者数と人口の比率が世界で最も低い国々は、公平性の問題にも直面してい る。リベリアでは、医療サービスが最も行き届いている郡における専門技能を有する 保健従事者の数と人口の比率は、最もサービスが行き届いていない郡よりも倍以上高 い
108。
タンガイル医科大学病院の新生児 特別室で、早産で生まれた赤ん坊 の顔を拭く医療従事者。(バング ラデシュ)
©UNICEF/UNI195711/Mawa