子どもの権利条約では、すべての子どもたちに学校へ通い、学習する権利があるこ とを認めている。この権利は幼児期の早い段階に始まり、持続可能な開発目標(SDGs)
の中で各国政府に「すべての少年少女が、質の高い早期幼児教育、早期幼児ケア、就 学前教育に確実にアクセスできるようにする」ことを要求している根拠のひとつとな
っている。
教育が公平性の促進剤としての役割を果たすためには、貧困下や教育水準の低い環 境に生まれた子どもたちが直面する不利な状況の軽減を促す、早期幼児支援から始め る必要がある。質の高い早期幼児ケアおよび教育への投資は、公平性と効率性という 2 つのメリットをもたらす。
成功のためのひとつの鍵は、各種開発セクターの枠を超えて、栄養、健康、および 水と衛生に関する慣行を含めた、包括的支援の提供である。またこうした総体的アプ ローチでは、子どもの保護も考慮され、乳児および幼児に提供されるケアの質に重点 が置かれなければならない。
総体的アプローチが成功をもたらすかもしれないという示唆がいくつかある。栄養、
養育、刺激を組み合わせた包括的支援により、幼児の認知発達における著しい進歩が もたらされることが示されている
121。栄養状態の改善と学習への準備が教育成果の向 上につながり、子どもたちの健康状態が向上して、おとなになってからの所得水準が 上昇することになる。ジャマイカにおける長期的調査では、早期幼児教育と関連して おとなの平均所得が 42% 増加したことが明らかになった
122。米国における調査では、
早期幼児期への投資に対する回収率は、1 年で 7 〜 10% と推定されている
123。
教育:公平な機会の創出>> 教育へのアクセス – 最初の段階から
38%
の子どもたちが読んだり、
書いたり、簡単な算数を
学 ぶ こ と な く 小 学 校 を
卒業する
早期幼児教育を受ける権利の保護および拡大の取り組みは、数十年にわたって進め られている。多くの場合、それらの取り組みは大成功へとつながっている。しかし入 学者数を見ると、進展のペースが危うくなっていることが示唆されている。2011 年 以降、全世界の非就学児の数は増加しているのである
124。
ほとんどの国では、早期幼児教育プログラムに参加している子どもは全体の半数に 満たない
125。約 1 億 2,400 万人の子どもおよび青少年が、学校に入って教育課程を 全うする機会を与えられていない。2013 年のデータにおいて、これには初等学校就 学年齢の子どもが約 5,900 万人(図 2.1. を参照)、そして前期中等学校就学年齢の青 少年が約 6,500 万人含まれている
126。就学していない初等学校就学年齢の子どもた ちの過半数が、サハラ以南のアフリカに住んでいる
127。さらに、入学者数におけるジェ ンダー間の格差も引き続き問題となっている。
入学者数の傾向は、早期幼児教育の重視に加えて、今後 15 年間にすべての子ども たちに初等および中等教育を行きわたらせることを求める、持続可能な開発目標
(SDGs)4 の達成に向けて順調な伸びを示せていない。実際、もし現在の傾向が続い た場合、2030 年には次のような状況が予想される。
◦ 6,000 万人を超える初等学校就学年齢の子どもたちが、依然として就学していな い可能性がある
128。
◦ 低所得国では、初等および前期中等教育の修了率が、それぞれ約 76% および 50% になる
129。
◦ 低中所得国では、初等教育における修了率が 92% 近くに達し、前期中等教育に おいては 80% 超となる
130(図 2.2. を参照)。
同じく現在の傾向が続くと、2030 年には低所得国は初等および前期中等学校の普 遍的修了を実現する軌道に依然として乗っておらず、その実現は次の世紀への変わり 目頃になると見られる
131。
北部地域にあるコティンギリ小学校 の給食時間(ガーナ)
©UNICEF/UN04349/Logan
44
世界子供白書 2016すべての人々に対する効果的学習と併せた、初等および中等学校教育への普遍的ア クセスに向けた道筋の図式化は、まず置き去りにされている子どもたちを特定するこ とから始まる。学習の機会から排除されている子どもたちは、さまざまな形の不利益 に直面することが多い。通常は、農村部に住む貧困世帯の女子たちの間で、教育への アクセスが最も欠如している
132。また子どもたちは、出身民族や障がいに基づく差別 によっても、不利な立場やサービスの欠如に直面する。
一部の非就学児は、一度も学校に足を踏み入れることがない。また最貧困世帯の子 どもたちをはじめ多くの子どもたちは、有意義な学校生活を送る準備ができていない まま初日を迎える
133。そして教育制度に沿って学習を進めていく中で、一部の子ども たちは初等学校を修了する相当前に落第してしまう。その他の多くの子どもたちにとっ ても、初等教育から前期中等教育、あるいは前期中等教育から後期中等教育への移行が、
依然として乗り越えられないハードルとなっている(図 2.3. を参照)。
教育:公平な機会の創出
>> 教育へのアクセス – 最初の段階から
50%
40%
30%
20%
10%
0%
西部・中部
アフリカ 東部・南部
アフリカ 南アジア 中東と
北アフリカ CEE/CIS※ ラテン アメリカと カリブ海諸国
東アジアと
太平洋諸国 サハラ以南の
アフリカ 世界
非就学児の割合
39%
(4,300 万人)
2000
2000 15%
(9,900 万人)
(3,300 万人)21%
9%
(5,900 万人)
4%(700 万人)
5%
(1,100 万人)
6%
(300 万人)
7%
(200 万人)
10%
(500 万人)
18%
(800 万人)
20%
(3,300 万人)
34%
(1,900 万人)
43%
(2,200 万人)
26%
(1,800 万人)
16%
(1,200 万人)
6%
(1,000 万人) 5%
(100 万人)
6%
(400 万人)
2013 2013
図 2.1.
5,900 万人の非就学児の過半数がサハラ以南のアフリカで生活している
2000 年と 2013 年の非就学の初等学校就学年齢児の数と割合(ユニセフの地域分類による)
出典:ユネスコ統計研究所グローバル・データベース(2015 年)に基づくユニセフの分析。
※ CEE/CIS:中部・東部ヨーロッパ独立国家共同体 円の大きさは非就学児の数を表している。
1,000 万人 500 万人 100 万人 2000
2013
注:予測は現在の傾向をもとにしている。
出典:ユネスコ、EFA Global Monitoring Report、‘How long will it take to achieve universal primary and secondary education?’、Technical background note for the Framework for Action on the post-2015 education agenda、Paris、2015 年 5 月。
すべての国 高中所得国 低中所得国 低所得国
0 0
100% 100%
80% 80%
60% 60%
40% 40%
20% 20%
2010 2030 2100 2010 2030 2100
2.2a 初等教育の 修了率
2.2b 前期中等教育 の修了率
120%
100%
80%
60%
40%
20%
0
サハラ以南のアフリカ 南アジア 中東と北アフリカ ラテンアメリカと
カリブ海諸国 東アジアと太平洋諸国 CEE/CIS※
図 2.2.
もし現在の傾向がこのまま続いた場合、世界はすべての子どもたちへの初等および中等教育の提供 を実現するための軌道から外れる
2010 年から 2100 年の所得別国グループおよび初等・前期中等学校の修了率予測
図 2.3.
多くの少年少女が進級の際に落第する
サハラ以南のアフリカと他のユニセフの活動地域における、就学前、初等、中等教育の総就学率(2013)
※ CEE/CIS:中部・東部ヨーロッパ独立国家共同体
就学前教育、男 初等教育、男 前期中等教育、男 後期中等教育、男