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運転者の非接触心拍測定

ドキュメント内 博 士 学 位 論 文 (ページ 111-121)

第 6 章 結論

1.3 運転者の非接触心拍測定

105

106

r 60

T

(1)

となる.しかしながらアイドリング状態では,包絡線の周期が不等間隔となり,心拍数の 算出が困難となる.

(2)包絡線周期の周波数領域における特徴

心拍の鼓動と相関なく発生すると考えられるエンジン振動や呼吸により発生する振動の 影響を除去するため,包絡線周期の周波数領域での特徴を用いて心拍数を算出する方法に ついて検討する.周波数領域で観測される,パワースペクトルの調和的特徴によるi番目の 倍数周波数をfi とすると,倍数周波数の間隔Δfi は,

 

1

1 1

1

i i i

f f f

i i

T T

  

    

(2)

である.よって,調和成分の周期Tの決定により,(1)式から心拍数r[brm]を算出すること が可能となる.ここで,計測可能なΔfii=k1,..,kiとすると,複数のΔfiを平均化した心 拍数rは以下となる.

 

 

2

2

1 60

1 2

k k i

fi

k

r k (3)

(a) エンジン停止中

(b) アイドリング中

Fig.A.3.1 4-8Hzにおける乗員の体表面振動(時系列)

107

Fig.A.3.2 2-8Hzにおける乗員の体表面振動(周波数)

周波数領域に変換し,呼吸等の体動によるノイズ成分のレベルが大きい周波数帯域をフ ィルタで切り取った上で,複数の倍数周波数の間隔Δfiを検出することにより,アイドリン グノイズ成分の影響を低減した心拍数算出が可能となる.Fig.A.3.2にエンジンOFFにした 場合の計測結果から得られたパワースペクトルを示す.

また,心拍成分のピークとノイズ成分のピークが重なる場合,心拍成分のピークが複数 の倍数周波数成分のピークとして現れるため,別の心拍成分のピークを観測して補うこと でエラーを低減した心拍数の算出が見込まれる.

1.3.2 パワースペクトルのパターンマッチング

fi

は等周波数間隔で構成されるため,(3)式による平均化よりも,あらかじめ作成した周 波数パターン波形をマッチングさせれば,心拍成分の特徴をより精度良く算出できると考 えられる.

パターン波形として,Δfiを一定値とした調和関数hr f を (4)式に示す.hr fn次の 調和成分のピーク周波数からなる波形であり,計測信号のパワースペクトルから同一周波 数成分の値を重み関数wn( )f として決定し,振幅を設定する.

     

1

,

n

f f f

r l

l

h wn p

 

(4)

ただし,

60

max

2 m

n f

r Ndt

 

    

 

であり,

,

r

60

ll r N t

とすると,pl f

108

 

 

 

1 1 1

1 cos 2

1 2 2

2 1 2

0

r l f

r r

f l m

p m m

l f l

  

        

     



        



の時 上記以外の時

(5)

で設定する関数であり,f を周波数,rを心拍数,Δt を標本化周期,NをFFT点数,fmaxを 最大周波数とし,α=0.54,m=5とする.

一意の周波数を持つ心拍数に対し調和パターンPl(f)をl=1からnまで加算したものと,

パワースペクトルから作成した重み関数 wn(f)を使用してその心拍数の場合のパターン波 形hr(f)を導く事ができる.

心拍数の決定のため,計測信号のパワースペクトルとマッチング誤差が最小となるパタ ーン波形を一つ選択する.パターン波形は30-180bpm の151 本とし,パワースペクトルと のマッチング誤差は,以下で定義する距離関数 D(n)を評価関数として用いてパターン毎に 算出する.計測された元のパワースペクトルをP(f)とすると,

  2

   

1

2

2 1

1 1

l

n f r f

f l

D P h

l l

 

 

(6)

となる.ただし,f :周波数,l1,l2 :バンドパス周波数の低域側と高域側である.

1.3.3 実験手法と装置

パターンマッチングを利用した提案手法と時間領域で算出する従来手法との比較を行う.

また,本実験に際し被験者には事前に十分な説明を行い了解を得ている.

(1) 装置

実験装置について概略をFig.A.3.3に示す.

Fig.A.3.3 実験装置

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実験には,直列4気筒,排気量2.4Lのセダン型乗用車,及び4気筒とは振動の周波数成 分の異なるV型6気筒,排気量3.0Lのセダン型乗用車を使用した.また,乗員の微小振動 が測定可能な圧電素子を使ったセンサを運転席のクッション部に設置し,別途,心電図か ら心拍数を算出するために電極を胸に取り付けた.

本実験にあたり検討した圧電素子を Fig.A.3.4 に示す.今回の実験では,最も精度の高 かった空気導圧センサのデータを採用している.

Fig.A.3.4 圧電素子選定 (2) 実験方法

比較のために電極式センサを使って心電図のR-R間隔から心拍数を同時計測し,1秒間毎 のデータに置き換えた上で誤差を測定する.測定誤差E(t) は,(7)式に示すように,毎秒算 出する心拍数HR(t)と心電図から毎秒得られる心拍数ECG(t)との誤差を60秒間平均化した ものとした.

   

 

60

1

1 1 100

60

t t

t t

E HR

ECG

 

    

 

(7)

使用データはサンプリング周波数 100Hz で計測した微小振動から 3 秒間を切り出して使 用する.また,心拍数の算出処理は 1 秒毎に行う.周波数領域での算出に使用するバンド パスフィルタは,微小振動に含まれる心拍成分をできる限り計測できるように 2-8Hz とす る.また,パワースペクトルの算出ではデータ列を分割して周波数解析を行い加算平均す るSliding-FFTの手法を用いて精度向上を図る.ここでFFT点数を1024点として周波数分 解能を0.1Hzとする.

算出する心拍数の範囲は 30-180bpmとし,これにより設定する 151本のパターン波形を パワースペクトルの計測毎に算出し,マッチング処理を行う.また,マッチングの評価関 数から最良値を選択する際のエラーを防ぐため,過去 5 秒間に算出した心拍数から出力心 拍数を予測してフィルタをかけた.

時系列での算出手法で使用するバンドパスフィルタは,心拍成分を残したままノイズの 影響を最大限除去することを目的とした 5-7Hz のバンドパス周波数と,アイドリングノイ

110

ズの影響が少ない0.5-3Hzの2通りのパターンとした.

エンジン振動の基本的な周波数の影響を確認するため,被験者を1名とし,直列4気筒,

排気量2.4Lのセダン型乗用車の運転席に着座させ,体を安静にしたままエンジン回転数を 変化させ,心拍数のノイズの条件を変えて測定誤差を確認した.エンジン回転数は,0rpm,

600rpm,700rpm,1000rpm,2000rpm,3000rpmの6パターンとした.

さらに補足実験として,振動周波数成分違いの影響を確認するため,V型6気筒,排気量 3.0L のセダン型乗用車で実験を行った.実験では運転席に被験者を着座させ,体を安静に したままエンジン回転数600rpmのアイドリング時における心拍数の算出を行った.被験者 数は5人とし,出力された心拍数の誤差を測定する.

1.3.4 時系列手法に於ける実験結果

(1)時系列における手法

時系列での手法による結果を Fig.A.3.5 に示す.心拍数はバンドパスフィルタを通した 波形の極大値から自動的に算出した.バンドパスフィルタのバンドパス周波数を 5-7Hz に 設定した場合の結果を図中の丸印で示す.また,5-7Hzのノイズを避けるために,バンドパ ス周波数を0.5-3Hzとした場合の結果を四角印で示す.

エンジンをかけない場合はどちらも10%以内の誤差となる算出結果が得られた.また,エ ンジン回転数が2000rpm と3000rpmの場合はどちらも誤差10数%となり,エンジン振動の 影響が少なかった.一方,アイドリング時の600rpm,750rpmの場合,エンジン振動による 影響により5-7Hzで70-100%の誤差であり,0.5-3Hzで20-30%の誤差となった.

(2)周波数領域による手法

エンジン OFF時,パワースペクトルを 1 秒毎に 180 秒間計測した結果をFig.A.3.6-(A) に,アイドリング時の結果をFig.A.3.6-(B)に示す.エンジンOFFの場合には,時間変化に

より 3.4Hz,4.3Hz,5.3Hz 付近にゆらぎを含んだピーク成分が観測され,連続した調和成

分のピークが確認できた.一方,アイドリング時の場合,3.3Hz,4.3Hz 付近にピークは見

111

られるが,ノイズによる影響が大きく,エンジン OFF の場合と同様な傾向は見られなかっ た.Fig.A.3.7にFig.A.3.6-(B)の算出に用いた120-123秒の時系列データを示す.この区 間での被験者の心拍数は心電図により 64bpm であり,計算から時系列の包絡線周期は 0.

94secと推測されるが Fig.A.3.7からは観測することはできなかった.そこで,Fig.A.3.7 の時系列データのパワースペクトルを Fig.A.3.8 に示す.周波数領域では調和成分として 3.1Hz,4.4Hz,5.2Hz,6.3Hzのピークが観測されており,ピーク間隔から(3)式による平均 化を行い,心拍数を62bpmと算出することができた.

112

1.3.5 パターンマッチングによる実験結果

(1)パターンマッチングによる手法

心拍数ごとの周波数パターン波形 151 本を作成し,マッチングさせた場合に得られた距 離関数をFig.A.3.9に示す.

心拍数の増加に従いピーク間隔が広がる複数個の極小値が得られ,評価関数として最良 となる距離関数の最小値から心拍数が 65bpm と算出される.なお,心電図から得られてい る心拍数は64bpmであった.

以上のマッチング処理を毎秒行った結果をFig.A.3.10に示す.算出した心拍数は心電図 より得られた心拍数の時間変動と比べ,絶対値に差があるものの,同一周期で変動を行っ ていることが確認できた.また,過去に算出した心拍数でフィルタ処理をかけることで,

算出結果に大きな誤差が生じることはなかった.ただ,距離関数から最適値を選択する際 に隣り合うピークを選択したと見られる結果が見られた.

Fig.A.3.5 で示した実験時と同じデータを本手法で使用した結果をFig.A.3.11に示す.

エンジンOFFの場合,誤差は数%となり,良好な結果であった.アイドリング時である600rpm,

750rpm の場合,誤差が 10%以下となり,時系列における算出で得られた誤差から改善が見

られた.また,その他の回転数においても誤差10%以下の結果が得られ,全ての回転数で良 好な結果となった.

113 (2)振動周波数の違いの影響

V型6気筒,排気量3.0Lのセダン型乗用車を使用し,エンジンOFFとアイドリング時の 場合に算出した測定誤算の結果をFig.A.3.12 に示す.被験者は Fig.A.3.11の結果が得ら れた実験時と同一被験者とした.

直列4気筒の場合,Fig.A.3.11で示したようにエンジンOFFの場合に2%,エンジン回転

数600rpmのアイドリング時に6%の誤差であったが,V型6気筒に変更した場合,エンジン

OFFで6%,アイドリング時に3%の誤差となり,V型 6気筒においても良好な結果が得られ

た.4 気筒と比較すると,アイドリング時に誤差が 3%程度改善しており,アイドリングノ イズの振動振幅が低減したため測定誤差が改善された影響と考察される.

(3)被験者違いによる影響

V型6気筒での被験者5人による測定誤差の結果をFig.A.3.13に示す.なお,エンジン 回転数はアイドリング状態とした.被験者は A を除いて,その他の被験者については両方 の条件共に誤差が数%以内となった.

エンジン OFF の場合はノイズが少なく,良好な心拍数の算出が行われているはずである が,被験者 A,B,E ではアイドリング時の方が誤差が少ない.この原因として,呼吸等の

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