第 2 章 救命救急活動の実態調査によるリスクファク タの抽出
2.2 救命救急実態調査(千葉北総病院)
2.2.1 調査方法と対象
日本医科大学千葉北総病院救命救急センター(3次医療機関)を拠点とし,そこに救急搬 送された交通事故患者を調査対象とした.日本医科大学千葉北総病院を調査の拠点として 選定した理由としては,3次医療機関かつドクターヘリの拠点病院であり,重傷患者の搬入 実績が多いことにある.また AIS コードの記録等傷害データが充実していたため,当該病 院を次の拠点として救急救命活動の実態調査を行うこととした.Fig.2.2.1にここで使用し た「救急隊 交通外傷調査シート」を示す.この調査シートを用いて,交通事故患者を救急 搬送してきた後に,その救急隊員に救急搬送時間ならびに救急活動記録を振り返って記述 を依頼しデータを収集した(1).北総病院救命救急センターには年間で650件以上の交通外傷 患者が救急搬送されており,その約半数の250件程度がAIS(Abbreviated Injury Scale )3 以上の患者である.
調査項目は事故の概要として,患者の年齢,性別,事故概況(相手車種,衝突速度(推 定)など),事故形態(単独,2台,多重事故),衝突形態,事故発生現場概略図を記録する.
救急搬送時間に関する項目は,事故発生時刻(推定),消防の覚知時刻,救急隊現場到着時 刻,現場出発時刻.病着時刻および搬送手段(救急車,ドクターヘリ)である.これらの データより,救急搬送時間の分布を算出する.
次に事故現場に到着し,患者に接触したときの状況評価(主訴を含む),レスキュー要請 有無,北総救命救急センターへの搬送を選定した搬送理由を調査した.搬送理由は,「緊急 治療を伴う事故と判断したから」,「車体変形が大きいから」,「距離が近いから」,「エアバ ッグが展開しているから」,「車外放出があったから」,「傷害の程度が判断できなかったか ら」,「シートベルトをしていなかったから」,「他の病院からの転送」とし,実際の事故現 場ではどのような情報を手がかりに患者の重傷度や緊急度を判断し,3次医療機関への病院 選定を行っているかを抽出することを試みた.
また車載データのAACNへの活用の有用性を調査するため,事故車両の情報として負傷者 が四輪車の乗員の場合は,車種,乗車位置,横転・車外放出の有無,同乗者の死亡,走行 速度(推定),シートベルト着用状況,エアバッグ展開状況,シートリクライング位置,自 走可否,ドア開閉可否,バンパー潰れ有無,ハンドル変形有無,フロントタイヤ損傷有無,
シート変形の有無である.車体変形は,NASS CDS の車体の変形分類コードCDCを参考に車 体正面,側面をそれぞれ分割した図に変形箇所をマーキングするようにした.
患者が二輪車および自転車に乗車の場合には,車種,ヘルメット装着有無,車体破損状 況,走行速度(推定),放出距離,車体変形のマーキングである.患者が歩行者の場合は,
衝突した相手車両の接触箇所,ボンネット変形有無,バンパー潰れ有無,走行速度(推定), 放出距離である.
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Fig.2.2.1 救急調査シート
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患者の実傷害は,救命救急センターでの初期治療の後,医師が解剖学的重傷度評価 AIS (Abbreviated Injury Score)(2)ならびに,ISS(Injury Severity Score)(2) ,病院到着時の生 理学的重傷度評価 RTS(Revised Trauma Score)(2)および所見を記載する傷害調査シートを 作成して記録した.後日,この「傷害調査シート」と「救急隊 交通外傷調査シート」をマ ッチングさせてデータベースを作成した.
本研究では,平成21年8月から平成23年12月の期間に収集できた127人のデータを分 析対象とした.Table 2.2.1に収集データの概要として,患者の性別,年齢,AISの最大値 Maximum AIS(以下MAIS:MAISが3以上は重傷に相当する),ISS(ISSが15以上は重傷に 相当する),病院到着時 RTS,衝突形態,搬送手段の分布を四輪車事故,二輪車事故,自転 車事故,歩行者事故別に示す.
Table 2.2.1 プレホスピタルデータと傷害データ (127名)
ただし,調査シートに未記入であった項目は不明データとして集計には入れていない.
またMIASは,現時点で傷害調査データに記録できた人数のみを集計した.
乗車車種別をみると四輪車事故が71人(56%),二輪車事故が39人(31%),自転車事故が5 人(4%),歩行者事故が12人(9%)であった.患者の性別は,男性84名,女性31名であった.
年齢分布は,18 - 54歳が62名と最も多く,17歳以下が14名,55歳以上は30名であった.
患者の実傷害の分布をみると,MAIS 3 以上を有する患者は,四輪車事故が9人,二輪車 事故が7人,自転車事故は 0人,歩行者事故が1人である.米国の先行研究における重傷 度の基準とされるISS 15以上(3)の患者は,四輪車事故が8人,二輪車事故が6人,自転車 事故は0人,歩行者事故が1人であった.病院到着時RTS 7.84未満(生理学的重傷度に異 常がみられる場合)の患者は,四輪車事故が11人,二輪車事故が6人,自転車事故が1人,
歩行者事故が2人と患者全体の15 %であった.衝突形態は,単独事故が32人,車両相互事 故が81人,多重衝突事故は7人である.搬送手段は,救急車搬送が118件であり,ドクタ ーヘリ搬送は9人であった.
Motor vehicle (n=71)
Motorcycle (n=39)
Bicycle (n=5)
Pedestrian (n=12)
Over all (n=127)
Gender Male 44 32 4 4 84
Female 19 4 1 7 31
Age -17 3 9 2 0 14
18-54 36 22 2 2 62
55- 18 2 1 9 30
MAIS MAIS 3+ 9 7 0 1 17
MAIS1,2 35 21 2 7 65
ISS ≧15 8 6 0 1 15
<15 36 22 2 7 67
RTS at Hospital <7.84 11 6 1 2 20
7.84 32 22 1 6 61
Crash type Single 22 9 1 0 32
Non-single 43 28 3 7 81
Multiple 6 1 0 0 7
Tarnsportation Helicopter 5 3 1 0 9
Ambulances 66 36 4 12 118
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