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第2章 新教育大学の歴史

第3節 轍育大学と職長期研修の結合

1 参議院文教委員会の「附帯決議」

 第84回国会参議院文教委員会会議録第14号昭和53年6.月1日によ ると、参議院文教委員会は、その委員会においていわゆる新教育大 学(法律案成立過程で大学の名称が教員大学→教育大学に修正され たので以後新教育大学とする)に関する法律案の衆参本会議決議前 に、先にみた論議等の文教委員会審議の経緯を配慮した形で、以下 の附帯決議を決定した。

 「国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正す  る法律案に対する附帯決議(案)

  今回新設の教育大学及び放送教育開発センターに関し、政府及  び関係者は、左記の事項について特段の 配慮を行うべきである。

 一、本大学の大学院に現職教員が出願するにあたっては、適正な   手続・基準に基づく公正な運用、を図るとともに、入学者選抜は、

  現職教員を受け入れるにふさわしい適切な配慮の下に、大学が   主体的,に行うものとすること。

 二、本大学の教員組織については、小・中・高等学校等において   優れた教育実績を持つ者を含め、既設の教員養成大学・学部の

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教員組織の整備との関係に留意しつつ、広く優れた人材3を求め るように努めること。

 なお、本大学の運営にあたっては、他大学との単位互換・教 員の交流等、研究教育の提携協力。を積極的に進めるように配慮  するとともに、学外有識者に意見を求めるにあたり・大学の自  主的な運営,を損なうこととならないように配慮すること。

三、既設の教員養成大学・学部については、大学院を含め、整備  充実の推進6に努めること、また現職教員の研修については、

 本人の自主性を:尊重,しっっ、本大学の大学院のみならず、多」垂  な研修の機会の確保。に努めること。

四、放送教育開発センター(略)

       右決議する。

 r全会一致をもって本委員会の決議と決定いたしました。』(委員  長)」    ※(原文縦書、下線は発表者が記入)

 この附帯決議は、審議過程で論議になった点を含めて本法律の今 後の運営に関して一定の指針を与えたものである。したがって、附 帯決議の趣旨に沿うように、新教育大学で最初に創設される兵庫教 育大学側(創設準備室を含めて)は昭和53年10月に、「兵庫教育大学 の構想の概要について」(注33)を示した。けだし、この概要が附帯

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決議の趣旨に沿っているのか、また沿った形で運営されていくのか は、発足にあたって求められたことであった。つまり、いくつかの 懸念を払拭し現職長期研修の機会として十分機能することが求めら れていたといえよう。 附帯決議の示す具体的なものは、ほぼ以下 のものであったと思われる。

 (1)受験、入学の際必要とされる同意・同意書に関する派遣者側、

 受け入れ側の、適牲な手続・基準に基づく公正な運用、を図る。

 *(同意・同意書の問題)

(2)現職教員の入学試験の方法内容に関して、学部から直接受験す るもの、あるいは従来の他大学院の入学試験等を比較検討して 適切な配慮の下に、大学が主体的2に実施する。

 *(入学試験科目、合格基準の問題)

(3)教官に、教育実績(初中等教育)の経験者を含む広く優れた人材 3をあつめる。

 *(教官確保、カリ㌔ラムの問題)

(4)他.木学との単位互換、教員の交流等、研究教育の提携協力4を 配慮する。

 *(他大学との関係)

(5)大学の自主的な運営5を図る。

*(大学の管理運営、参与制度、副学長制)

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 (6)他教員養成系大学学部の整備充実の推進。を図る。

 *(他大学の大学院の設置の問題)

 (7)本学をはじめとして、現職教員の研修は、本人の自主性を尊重,

 すること。

 *(研修性格の確認)

 (8)他大学の大学院を含め、現職教員のために多様な研修の機会の  確保8を図る。

 *(研修機会の拡大)

 以上のような項目となろう。その項目を大別してみると、

☆新教育大学側(同意書、入学試験、教官確保、カリキュラム、大          学管理運営)

☆派遣者側(同意書、研修性格、研修機会の拡大)

☆現職教員側(直接・間接に総ての項目)

とすることができよう。項目の中でも、とりわけ、同意・同意書の 問題が、新教育大学大学院での現職教員の現職長期研修運営上に大

きな影響力をもっことは、否定できないといえる。では、派遣者側 が、兵庫教育大学側より発表された「兵庫教育大学の構想の概要に ついて」をどのようにとらえたのであろうか。

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2  新教育大学への教員派遣について(文部省通知)

 発表されたその概要に基づいて、最初の入学試験をひかえた昭和 54年6月13日、都道府県教育長協議会第3部会が「新教育大学への 現職教員の派遣について(案)」をまとめて文部省に要望事項を提出

した。これを受けて、同年6月28日、文部省初等中等教育局長名で、

各都道府県教育委員会教育長あてに「兵庫教育大学への教員派遣に

ついて」という通知が出された(注34)。

 都道府県教育長協議会の「案」の主な内容は、(1)受験資格は現職 経験3年以上の教員、(2)入学志願者の申請に基づき、市町村教育 委員会が都道府県教育委員会と協議の上、受験の同意を与える、(3)

同意は長期研修計画、長期人事計画との調整に留意して行なうこと、

(4)新教育大学への派遣は、市町村教育委員会の出張命令による研 修として扱うこと、(5)在学中は単位取得状況等あらかじめ指示さ れた事項を市町村教育委員会に定期的に報告させる、(6)原則とし て2年間の派遣期閤の延長は認めない、(7)学生としての義務違反、

地方公務員としての義務違反があった場合には都道府県教育委員会

・市町村教育委員会として必要な措置をとる、などというものであっ

た。

 これに対して、文部省初等中等教育局長の「通知」(注35)は、都道

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府県教育長協議会の「案」をそのまま受け入れたものであった。市町 村教育委員会が受験の同意を与える場合の手続き及び基準について

は、要望事項の「大学院入学時において教職経験3年以上となる者 のうち積極的な勉学意欲を有する者」を、「通知」では、「例えば次の ような基準により同意を与えるもの」として、①入学志願者が大学 院修了後も当該都道府県において教員として勤務する意思を有する

こと、②入学志願者の大学院派遣が学校運営上支障がなく、かっ有 益であること、③入学志願者の心身が長;期研修に耐え得るものであ

ること、としていた。

 この同意の基準が先の「附帯決議」の観点に応えるようになってい たのかどうかの問題がある。

 本人の受験希望を:尊重するかたちはとっているが、「積極的な勉学 意欲を有する・・同意を与えるものとする」として教育委員会が勉学 意欲の存在を判断しうることから、受験希望者全員に同意を与える

ことにならないこともありうるとの懸念が残り、教員人事行政の手 段として利用されることになるのではないかという疑念は完全に消 えていない(注36)とする指摘がある。しかしながら、受け入れ側の 定員(入学試験で選考されるから問題は別としても)、派遣者側の教 育財政上の制限からくる派遣人員の定数の事実を欠落させてはなら ない。結果として、同意の次年度等の先送り、派遣者側での選抜等

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も予想される。つまり、勉学意欲の存在の観点だけでなく、他の観 点からも、受験希望者全員に同意を与えることにならないことが有

り得ることは、否定できないであろう。

 もとより、受験・入学を含む同意として述べてきているが、総て 受験のみの同意であった場合には、また別の問題が起こるであろう。

例えば、受験でき、合格したが入学許可(派遣者側の)が得られな い場合が考えられよう。この場合は大学側の定員割れのみならず、

受験者に多大な負担をかけることとなるだろう。仮に総ての都道府 県がこのような同意の与え方をしたとすると、大学側が(大学院の 定員のおよそ3分の2を現職教員とする前提で)各都道府県別に合 格者定員(派遣可能人員)を作成し入学試験の合否判定に適用すると

いうことも、考えられないことではない。

 「受験にあたっての同意を与える場合、市町村教育委員会は、学 校運営上の支障となるような条件を排除して同意を与えることが求 められるが、学校運営上の支障を理由として同意を与えないという

ことも起こりうる。同意の手続きに学校の教員集団の意思が反映さ れることが必要であり、職場を離れて長期にわたる研修を行なうに は、事の性質上、学校運営の実際に直接かかわる教職員集団の意思 を無視しては不可能である。したがって、入学志願者は職場の教職 員集団の同意と支持のもとで長期の研修ができるよう、あらかじめ

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校長を含む教職員集団の意思形成をはかり、校長の具申に基づいて 市町村教育委員会が同意を与える手続きを確立する必要があるだろ う」(注36)という指摘がある。もとより、学校運営上の支障となる 条件を排除するために代替教員の補充等があると考えるのが相当で

あろう。しかしながら、先の指摘にあるように教職員集団の意思を 無視はできないが、そのことでただちに教職員集団の意思が反映さ れることが必要と結論づけられるだろうか。

 そもそも、研修とは研修希望者の自主性が尊重されてこそ有意義 であり成果がある、ということは誰もが認めることである。この場 合の長期研修も例外ではない。問題はその希望者本人の意思と他の 意思が一致しない場合である。他の意思とは、ここでいう派遣者側

と学校の教職員集団(手続きの確立に際して条件とした場合)が考 えられよう。つまり、学校の教職員集団の意思が受験希望者の意思 を拘束する、あるいは受験希望の 足かせ になることも否定できな いと認めざるを得ないであろう。教職員集団の意思が恣意に流され ないとは言い切れないともいえよう。また、教職員集団の意思と校 長の意思が異なる場合も想定できよう。したがって、できるかぎり 研修希望者の意思が活かされる方法が検討されるべきであろう。

 次に、大学が「定員確保のために同意を得ている者で定員枠を維 持するというようなことになると、やがては入学試験が形式化し、

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