第2章 新教育大学の歴史
第2節 新鞘大学の創設
新教育大学・大学院(新構想の教員大学・大学院として構想され ていた)が創設に至るまでには、当初の構想から7年余りの経緯が ある(注20)。その間に構想について多少の修正が加えられている。
この点については■でふれる。
第84回国会(昭和53年)で成立した「国立学校設置法及び国立養護 教諭養成所設置法の一部を改正する法律」を中心として、新教育大学
・大学院の構想、同法案成立における審議内容・問題点と構想から 成立までの7年余りの経緯をみる。
1 教員のための新しい大学・大学院(構想)
いわゆる新構想教員大学・大学院の構想が登場する以前において、
教員の現職教育(研修)は大学院レベルでなく大学・学部レベルで想 定されていたといえよう(注21)。そこで、新構想教員大学・大学院 の構想が登場する以前についてふれたうえで、構想から成立までの
経緯をみる。
昭和33年に行なわれた第16回中央教育審議会答申「教員養成制度 の改善方策について」では、次のように述べられている。
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「七 現職教育
(1) 国、地方教育団体および大学の緊密な連係の下 に充実した計画的現職教育を行うよう組織する必 要がある。
(2) 教育大学には研修課程を設け、継続的に研修が 行なわれるようにするなど現職教育を制度化する。
なお、教育大学以外の教員養成を目的とする大 学にも研修課程を設けることが望ましい。
(3) 現職教育を受けさせるための経費負担、教育に 支障なきようにするための代替教員の配置などを 措置する。」
ここでは、教員の現職教育(研修)を大学においても実施すること、
又その実施のための制度化の必要性を述べており、この答申は教員 の大学での現職研修制度確立への一段階とみてもよいだろう。
また先の第1節2でも述べたように、その後の 大学・大学院 の考え方の変遷により、昭和38年中央教育審議会答申「大学教育の 改善について」では、大学院の修士課程を各方面の現職者の再教育 を行うことも必要であるとした。ここに、産業界をはじめとする教
育への期待・要求の高まり、又ILOユネスコ「教員の地位に関す
る勧告」(昭和41年10月5日教員の地位に関する特別政府間会議採択)
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第2章新教育大学の歴史
などによって、教職の専門職としての専門性(専門的な知識及び技 能)の必要性という考えかたが大きく取り上げられていたことも見 逃せないと思われる。新構想大学・大学院の構想準備が出来つつあっ
た時期とすることもできよう。
中央教育審議会は 第三の教育改革 (注22)として、昭和46年6月 11日に「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的
施策について(答申)」を行った。
ここにおいて初めて、教員大学・大学院構想が正式に登場するの である。答申のなかでこの構想に関しては以下のように述べている。
「第1編 学校教育の改革に関する基本構想 第2章初等・中等教育の改革に関する基本構想 9 教員の養成確保とその地位の向上のための施策
(5) 教員のうち、高度の専門性をもつ者に対し、特別の地位 と給与を与える制度を創設すること。そのための一つの方 法として、教育に関する高度の研究と現職の教員研修を目 的とする高等教育機関(「高等教育の改革に関する基本構想」
第2■・・一・1の第4種(「大学院」)に属する。)を設けること。
(6) ・…教員の地位が高い専門性と職業倫理によって裏づけ された特別の専門的職業として、一般社会の尊敬と信頼を
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説明
集めるたあには、教員が自主的に専門的な職能集団を組織 し、相互にその研さんに努めることが必要である。教員自 身が、そのような教育研修活動を通じ、不断にその資質の 向上に努めるならば、その建設的な意見は社会的に評価さ れ、国民の期待とするところにこたえることになろう。
さらに、教職にあるものが、その経験を掘り下げ不断の研修を 積み重ねてその専門性を高めることが、教育の質的な向上にとっ てもっともだいせつである。そこでそのような教員の努力を制度 的に助長するため、教員の中ですぐれた教育実践をもつ者と、教 育に関する高度の研究と教育を行う第4種の高等教育機関(「大学 院)」などで研修をうけその高度の専門性を認定された者に対して、
職制と給与の上で別種の待遇を与えるような制度を設ける必要が ある。これによって、教員の専門性の水準と社会的・経済的地位 の向上をはかるとともに、教員養成大学に対してすぐれた教育実 践の経験を有する教員を供給することも可能となるであろう。」
(下線記入は筆者)
この構想によって、教員の現職教育(研修)の一方面として大学院 レベルで実施される現職教育(研修)が制度化に向かって出発したの
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である。すなわち、その後昭和47年に各界から報告・建議等が矢継
ぎ早に行なわれたのである(注23)。
基本構想を具体化するために、文部省に「新構想の教員養成大学 等に関する調査会」が設けられ、昭和49年5月20日に報告書が出さ れた。後昭和50年11月に「兵庫教育大学」の創設準備会、昭和51年
8月に「上越教育大学」の創設準備会が設置されて審議が重ねられて きた。そして、昭和53年2月10日国会に関係法律案が上程されたの
である。
しかしながら、創設準備会の設置から「関係法律案の国会提出の 時点までに2年余りの年月があったにもかかわらず、審議の結果ど のような結論が出され、あるいはどのような問題が残っていたのか 審議過程での諸問題を示す関係資料は公表されなかった」(注24)と
いう指摘がある。また、昭和49年11月に国立大学協会教員養成特別 委員会が「教育系大学・学部における大学院の問題」について見解 をまとめた際、同委員会は「教員大学」の大学院について、「任命権 者の推薦を入学志願の条件とすれば、これが人事上の手段となり、
大学院というよりは教員研修所になるおそれがあるなどと批判的意 見をのべていた」(注24)。 これらの問題は、国会の審議で取り上げ
られていくのである。(後述)
新構想の教員大学・大学院の構想から創設までの経緯の概略を三
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すと以下のようになる(注25)。(大学院修士課程についてのみ)
①中央教育審議会答申昭和46年6.月11日
②教育職員養成審議会建議昭和47年7月3日
③自民党教育改革第1次試案昭和47年7月
④自民党教員養成大学設置要綱案昭和47年7月
⑤新構想の教員養成大学等に関する調査会報告昭和49年5月20日
⑥創設準備室の構想「教員大学の概要」昭和53年3月
⑦兵庫教育大学「兵庫教育大学の構想の概要について」
昭和53年10月
※以下の①〜⑦は上記の答申・建議・試案・報告・概要を示す。
◇目的・性格
①現職教員の研修第4種高等教育機関(大学院)
②現職教員の研修修士課程大学院(全国にブロックごと設置)
③教員の再教育一特別な分野の教員の再教育(特殊)、教員養成大 学の教官、研究者の養成
④なし
⑤初等・中等教育の実践にかかわる諸科学の研究、教員の資質の
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向上
⑥現職教員の研究、研鎭
⑦現職教員の研究、重鎖、初等・中等教育の実践にかかわる諸科学 の研究、高度の資質の酒養
◇定員
①〜③なし
④400人程度(2/3以上現職教員)、各専攻30〜40人 ⑤300人(2/3は教職歴3年以上の現職教員)
⑥300人(2/3は教職歴3年以上の現職教員)
◇入学資格・選抜方法
①なし
②すぐれた実績と能力を有する現職教員で任命権者の推薦を得
た者
③一定の教職経験を有する者
④3年以上教職経験を有する者を原則、大学の教官志望者、特別の 事情のある者はこのかぎりでない
⑤大学卒業を原則、教諭1級免許所有者、教職経験2〜3年程度以 上、現職教員の入学方法という観点から適切な方法をとる
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⑥出願に際し教育委員会の同意が必要
⑦都道府県教育委員会と市町村教育委員会の協議を経て、市町村 教育委員会の同意書が必要(公立小中学校教員の場合)
学力検査(共通科目、専攻科目)と口述試験
◇修業年限
①なし ②2年程度 ③なし
④1年又は2年
⑤2年、1年又は半年を単位とする断続的履修、課題研究又は修 士論文作成の段階では、教職に従事しながら履修、夏期又は夜間 の履修可能、30単位以上の修得
⑥2年30単位以上履修 ⑦2年30単位以上履修
◇教育課程
①〜④なし
⑤学校教育研究科一学部レベルの教育との関連を考慮、初等教 育に特徴をもたせる配慮。30単位以上の修得、課題研究、修士論
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文の審査及び試験の合格、
専攻(教育学、学校教育、教科教育、幼児教育、心身障害児教育)
⑥学校教育専攻(教育基礎、教育経営、教育方法、生徒指導コース)
教科・領域教育専攻(言語系、社会系、自然系、芸術系、生活・健康 系)、幼児教育専攻、障害児教育専攻
⑦学校教育専攻(教育基礎、教育経営、教育方法、生徒指導コース)
60人、幼児教育専攻20人、障害児教育専攻30人、教科・領域教育 専攻(言語系、社会系、自然系、芸術系、生活・健康系)190人 共通、専攻、自由科目、教育実践との関連で有機的に編成、
課題研究から修士論文へ発展
◇身分・待遇(在学中、修了後)
①高度の専門性をもつ者に特別の地位と給与を与える劇評の創 設(職制と給与で別種の待遇)
②在学中の身分、給与の保障措置、卒業者に上級免許状授与 処遇に特別の措置
③修了者に1〜2号俸特別昇給
④現職のまま大学院入学、 在学期間1年→1号特別昇給
在学期間2年→2号特別昇給 ⑤現職教員の身分保障の制度的検討第2節新教育大学の創設 98