6〜10年
第2節 現職長期研修の成果
1 大学院での成果とは何か
(1) 大学院設置基準第3条(修士課程とは)
大学院設置基準第3条は「修士課程は、広い視野に立って精深な 学識を授け、専攻分野における研究能力又は、高度の専門性を要す る職業の高度な能力を養うことを目的とする」として、修士課程に ついて定めている。もともとこの第3条は、大学院設置基準の制定 過程で論議になった結果である。つまり、修士課程については研究 能力の開発を基本としながらも、専門的職業人の養成や研究者の養 成など幅広い期待があり、また場合によっては一貫教育の立場から 学部教育の延長とするみかたもあるということである。
教員のための大学院として創設された新教育大学大学院は、専門 的職業人たる教師の養成・研修を目的としている。その点で新教育 大学大学院の修士課程の目的は、専門的職業人の養成を主たるもの としているといえよう。しかし修士課程の目的を専門的職業人にお くか研究者の養成におくかは必ずしも相反する概念ではなく、専門 分野によっては両者の関係をこのように二者択一・的な考え方でとら えることは誤りであろう。
第2節現職長期研修の成果 230
第4章現職長期研修の課題
したがって、新教育大学大学院学校教育研究科(修士課程)の目的 としては二者択一的なものとなっているが、目的が教育に携わる専 門的職業人の養成・研鐙という専門分野の性質上、 研究能力の開発
を基本においた研究・教育が行われることが期待される。
(2) 研究・教育と成果
調査の結果から(第3章に詳細)、兵庫教育大学大学院の修了生は、
受験動機として、教育実践と結びついた教育研究の機会として受け とめている傾向が示されていた。入学時の研究テーマ設定も教育実 践での問題意識からなされていることが示された。またその一方で 受験動機として 学問研究として理論を深めたい という回答者が11 混いたこと、入学時の研究テー・・マ設定で 学問研究として設定して
いた 者が35画いたことは、先の修士課程の目的との関連で注目さ
れる。
しかし、調査項目として 学問研究 を明確にしておかなかったこ とから回答者の 学問研究 に対する認識に差が無かったといえない 点で、この項目のこれ以上の検討はできないと考える。そもそも教 育実践での問題意識から設定された研究テーマが学問研究でないと はいえないのである。つまり、学問一科学(哲学も含めて)である限 りは「世界の一部分を対象領域とする経験的に論証できる系統的な
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第4章現職長期研修の課題
合理的認識」(広辞苑昭和55年版)といえるのであって、学校教育(学)
そのものが数多くの学問領域を内包しているのである。したがって、
研究が学問あるいは学問的になるかは、テーマそのものの問題では ないといえるのである。最終的な修了生の学位論文の内容について は、 学問研究領域に重点をおいた内容であった とする回答が過半 数を占めたのであるが、この結果も 学問研究領域 の認識の差の問 題で、内容に入った検討はできない。
では受験動機→入学時テーマ→学位論文の修了生自身の評価の推 移は何を現しているのかということになる。学問研究としての回答 が順に全体の4.8%→21.7%→55.1%となっているなかで、大学院 での研究・教育に対して修了生はかなり満足のいくものであったと いう回答をしていた。修了生の一つの傾向として、教育実践の問題 から出発し学問領域に迫ろうとした意識があり、そのことを肯定的 に評価しているといえよう。
研究・教育のなかで中心となるのが専門科目と課題研究となって いることが調査の結果推測できる。その評価もほぼ満足のいくもの であるとしている。どのような点から判断したかということに関し ても、大学院での研究・教育全体の成果と一致している。そこに在 学中(研修中)の成果とその成果を促した研究・教育があったといえ よう。つまり、専門科目(特に演習)と課題研究が、修了生の大学院
第2節現職長期研修の成果 232
における研究・教育(=現職長期研修)の成果を左右していたという ことがいえる。
2年間の大学院生活で最も得たものは何でしたか という質問で は、研究方法を得たこと(態度・厳しさも含めて)、友人(多様な考え、
情報)などをあげているのが目立っ(表V[一2)。
表V卜2 2年間で最も得たもの (単位:人)
\
項 目
学校教育 教科領域 計1 友人(多様な考え、情報)
35 52 87
2 研究方法(態度・厳しさも含む)
30 51 81
3 自己をじっくりみつめるための
條ヤ
920 29
4 教官の指導(良き指導・助言) 9
14 23
5 研究の成果(主に修士論文の内容)
11 11 22
5 教育に対する幅広い考えかた
ニ認識
913 22
7 研修・二丁による自分への自信 0 6 6
8 子供を見る目を養った 1 3 4
9 家族への再評価 1 1 2
合 言出 105 171 276
※複数回答も含む、記入者のみの集計
第2節現職長期研修の成果 233
2 成果は教育現場に活かせるか
2年問の大学院在学中に得た成果の中で、修了後の教育実践(広 義)に最も役に立っているものは何ですか という質問では、以下の
回答であった(表W−3)
表V卜3教育実践で最も役立っているもの
\
項 目
学校教育 教科領域 計1 研究方法
18 46 64
2 教育を広い視野からみれる
@ (ゆとり、考えかた)
17 13 30
3 児童・生徒理解の深まり
11 12 23
4 研究成果(主に修士論文) 9
11 20
5 専門教科の知識、教養 2
17 19
6 教育理念、教育思想 6 9
15
7 友人 4 7
11
8 心構え(使命感、意欲的、積極的) 0 6 6 8 物事に対する判断力の増加 2 4 6
10 教官の助言(言葉、指導) 1 2 3 12 教育法規(1,1)、読んだ本(1,1)
サの他(1,1) 3 3 6
合 言十 73 130 203
※複数回答も含む、記入者のみの集計
第2節現職長期研修の成果 234
第4章現職長期研修の課題
この教育実践に最も役立っているものとしての回答は、先の2年 間で最も得たものとしての回答とほぼ一一itしている。
特に目立っのは、教育実践に最も役立っとして回答している者の 中で、 友人 をあげた者が少なく、それと反対le 児童・生徒理解の 深まり をあげた者が多かったことである。
これらの結果は、修マ生にとって大学院での研究・教育による成 果の内容としては、教育実践に役立っことこそ(たんなる技術・知識
ということではなく直接間接的にということも含めて)最大の成果 であると言えることを示している。
したがうて、修了生が得たとする成果がこの現職長期研修(大学 院での研究・教育)でなければ得られない成果(研究方法、研究成果、
友人、教官、専門知識など)であるとするならば、今回の調査結果 をみる限りでは、この現職長期研修制度自体にも一応の成果があっ たということができよう。
ではこれらの成果を教育現場で活かせているのかということが、
次の課題となる。修了生の実態として、成果を活かせる(発揮でき る)と活かせないとした回答で2分されている。もとより、修了生 個人によって成果そのもののとらえかたが違うので断定はできない が、成果の内容とは別に、成果発揮のための職位、職員関係、職場 内での立場の不明確さ、教職員組合の根強い反対等の問題がある。
今後、これらの問題を解決していく姿勢が教育関係者に望まれる。
第2節現職長期研修の成果 235
第4章現職長期研修の課題
3 成果を活かすには
(1)成果をどのように活かすか
成果をどのように活かすについて、 機会をつくって成果を活か すべきである とした者が114名(50.7%)、 求められれば必要に応 じて成果を活かすべきである とした者が87名(38,7%)であった(図 表w−3)。
機会をつくって成果を活かすべきであるとする積極的な考え方と 求められれば必要に応じて成果を活かすとするやや消極的な考え方
に二分されている。
図表V卜3 成果を教育実践にどのように活かすか(単位;人)
o 2e 4e 60 so loe
L一一..N一.lltnyA30
56.6%B16
30.2%第1期生滞
C 1
1.9%D
6 11.3%A
28 52.8%B
21 39.6%第2期生湧 C
1 1.9%;D 3
5.7%A156i47.1%
B5042.0%
第3期生il
C 6 5.0%D 7 5。9箔
, ρ , 昌 ■ 噛 , 、 鴨 F
こロ ゴ ロ ロ
, 「 ■ ■ ■
, 昌 噛 ,
第2節現職長期研修の成果 236
図表W−3(続き)
O 20 40 60 80 100
A
41 49.4%学校教育
B
33 39.8%n CI 2 2.4%
D 7 8.4%
A 7351.4%
教科領域
B
5438.0%G
6 4.2%D
9 6.3%A
11450.7%B
8738.7%全体
C 8 3.6%n 1農 7 1⑦ζ
勿 笏
uxiv i/u
X2検定N,S.
※ A:機会をつくって成果を活かすべきである
B:求められれば必要に応じて成果を活かすべきである C:成果を活かす必要はない
D:その他一(意識しないで自然に,日々の実践で,子供達に)
活かすべきである
またこの結果は教育実践に対する回答者の考え方が積極的、やや 消極的であるという問題は別にして、成果を何らかの形で活かそう
という考え方であることが示された。しかしごく少数であるが2年 間の成果を活かす必要はないと回答した者がいたが、その考え方の 理由までは今回の調査ではわからない。
そこで次ぎに、修了生(回答者)がこの現職長期研修(大学院での 研修)をどのようなものであると考えているのかをみていく。
第2節現職長期研修の成果 237
(2) 現職長期研修の考え方
修了生が新教育大学大学院での現職長期研修をどのように考えて いるかでは、年度別、専攻別、教職経験年数別とも有意差が認めら れなかった。 実践的な教育研究の推進者として役立っ研修 、 教育 実践の問題解決のたあに、研究方法を身につける研修 とした積極的 な考え方87名(38.9%)と 学問にふれる、一つの方法としての研修
とした考え方に二分された(図表V卜4)。
図表W−4 現職長期研修としての考え (単位:人)
O 20 40 60 80 100 A
23 28.0%B
42512%
学校教育
C
13 15.9%D
4 4.9%A
22155%
B
8157.⑪%教科領域
C
2920.4%D
10 7.0%A
45 20.1%B
123 54.9%全体 C
42 18.8%D 14 63%
X2検定N,S.
※A:実践的な教育研究の推進者として役立っ研修 B:学問にふれる、一つの方法としての研修
C:教育実践の問題解決のために、研究方法を身につける研修 D:その他 (個々により違う研修,教育現場の資質向上につな がる研修等)
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