5)-1 輸出管理に係る条約やガイドライン等
輸出管理は、保障措置及び核セキュリティ対策同様に核不拡散を図る上で重要な手段で ある。
特に MNA 施設である蘭国 URENCO の子会社からウラン濃縮技術を盗み出し、パキスタンで 原爆を製造したとされ、「パキスタン核開発の父」と呼ばれる A.Q.カーン博士が作り上げた
「核の闇市場」により、パキスタンからウラン濃縮技術や機器、核兵器製造技術等がアジ ア、中東、アフリカ等のハブを経由して北朝鮮やイラン等に密売され、当該国でのウラン 濃縮や核兵器開発に寄与したとされる。故に各国における輸出管理の徹底は核不拡散にと って極めて大きな意味を持つ。
原子力資機材や技術の輸出管理に関し、メンバー国に法的義務を課さない(紳士協定)
ガイドラインが、原子力供給国グループ(NSG: Nuclear Suppliers Group)ガイドライン48 である。この NSG ガイドラインは、原子力供給国が非核兵器国への原子力資機材・技術の輸 出に係り遵守すべき指針を定めたもので、原子力の専用品・技術の移転に係る「NSG ガイド ラインパート 1」と、原子力関連汎用品・技術の移転に係る「NSG ガイドラインパート 2」
からなる。そして被供給国に対して、IAEA 包括的保障措置の適用、移転資機材の平和目的 の利用、移転資機材等への防護措置の実施、移転資機材を再移転する場合は再移転先国か ら同様の保証の取り付け、を確認する政府保証を取り付けることを要求している。
2012 年 9 月現在の NSG グループの加盟国は 46 カ国49で、アジアでは日本、韓国、中国、
ロシア、カザフスタンが加盟しており、日本の場合は外国為替及び外国貿易法(外国為替)
で NSG ガイドラインの記載事項を担保している。また、NSG ガイドラインは、濃縮、再処理 に関する施設、設備、技術が移転される場合は、供給国の関与や多数の国の参加を求める 措置を慫慂し、多国間の地域燃料サイクルセンターに係る国際的活動を促進すると規定し、
ウラン濃縮及び再処理技術が移転される際の MNA を奨励している(パラグラフ 6(e))。 2011 年 6 月の NSG ガイドラインの改正では、ウラン濃縮や再処理といった機微な施設、
設備、技術(濃縮・再処理品目)の輸出に関しては、すべての原子力資機材、技術の移転に 比し、特別な要件が付されることになり、以下のように規定されている(NSG ガイドライン パラグラフ 6:濃縮及び再処理関連の施設、設備、技術の移転)。うち、特にウラン濃縮に 係る移転については特別の規定を置いている(パラグラフ 7:濃縮施設、設備、技術に関す る取りきめ)。なお、以前のガイドラインでは、NSG グループは濃縮・再処理品目の輸出を自 制するとの記載に止まっていた。
受領国が以下の全ての要件を満たさない限り、供給国は濃縮・再処理品目の移転を許可 しない(パラグラフ 6(a)、客観的クライテリア)。
NPT への加盟、NPT 上の義務の遵守
IAEA の報告書で、保障措置協定への重大な違反が指摘されていないこと、IAEA 理
48 INFCIRC/254/Rev.11/Part 1, Date: 12 November 2012
492012 年 9 月現在の加盟国は 46 カ国で、NPT 非加盟国はメンバーとなっていない
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事会の決定により保障措置義務の遵守、原子力平和利用への信頼性の構築に関し、
追加的な措置を要求されていないこと、IAEA 事務局により、保障措置協定の履行 が不可能である旨が報告されていないこと
NSG ガイドラインを遵守し、国連安全保障理事会決議 1540 に従い輸出管理を履行 している旨を国連安全保障理事会に報告していること
供給国との間で、非爆発利用、恒久的な保障措置、再移転に関する保証を含む政 府間協定を締結していること
供給国に対し、国際的なガイドラインに基づく、相互に合意された核物質防護措 置を適用するコミットメントを行っていること
IAEA 安全基準に対するコミットメントを行い、原子力安全分野の国際条約を発効 させていること
上記の要件につき、ガイドラインは、下記に記載する供給国の主観的クライテリア(供 給国が移転を許可するか否かを検討するに当たり、「関連要因を考慮する」(パラグラフ 6(b) 後半)を別にすれば、受領国が上記の要件を満足させることできれば、濃縮・再処理品目 が移転される可能性があることを示したとも言える。また、パラグラフ 7 が規定するウラ ン濃縮施設、設備、技術に係る取極めは以下の通り。
受領国が包括的保障措置協定及び追加議定書を発効させているか、あるいは、これら が未発効な場合には IAEA 理事会が承認した適切な保障措置協定(核物質計量管理の地 域的な取極めを含む)を IAEA との協力により履行していること(パラグラフ 7 (c))
2008 年 12 月 31 日の時点で、濃縮ウランの相当規模の生産が実証されていた特定の濃 縮技術をベースにした濃縮施設(既存の濃縮施設)についてはブラックボックス方式50 による移転(パラグラフ 7(b))。新たな濃縮技術ついては原型プラントの導入前段階に ついてはブラックボックス方式外での移転を許容(パラグラフ 7(c))
供給国と受領国は移転される施設の設計、建設が IAEA 保障措置の適用を促進するよう な太陽でなされるように協働する(パラグラフ 7(e))
供給国は、受領国に対し供給国自身と同等、あるいはそれ以上のセキュリティ上の取 極めを行うよう求める(パラグラフ 7(f))。
上記に従えば、ウラン濃縮施設を既存のウラン濃縮技術を移転して新設する場合には、
ブラックボックス方式をとることとなる。
5)-2 放射性廃棄物の処分目的の輸入禁止
使用済燃料及び放射性廃棄物の引き取り(輸入)について、上述した放射性廃棄物等安 全条約は以下を規定している。
使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全を確保する最終的な責任は国が負う(同 条約前文(vi))
放射性廃棄物はその管理の安全と両立する限り、それが発生した国において処分され るべきことが原則(同条約前文(xi)の前段)
いかなる国も、外国の使用済燃料及び放射性廃棄物の自国の領域内への輸入を禁止す る権利を有する(同条約前文(xii))
ただし、放射性廃棄物が共同事業により発生する場合には、いずれかの締約国の施設 をその他の締約国のために利用するという締約国間の合意によって、使用済燃料及び
50ロンドンがドラインは、「ブラックボックス方式」との言葉を直接使っておらず、「複製を許容しない、
あるいは不可能とする」との用語を使用している
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放射性廃棄物の安全かつ効率的な管理が助長され得る(同条約前文(xi)の但し書き以 降)。
最後の点につき、MNA 施設においても、解釈上、MNA の加盟国が同意すれば他の MNA 加盟 国で発生した使用済燃料及び放射性廃棄物の管理が不可能なわけではない51。
一方、東南アジア 10 カ国52が加盟する東南アジア非核兵器地帯条約(バンコク条約)は 域内における大気中、海洋、領土への放射性物質、放射性廃棄物の投棄・排出を禁止し、
カザフスタンを含む中央アジア 5 カ国53が加盟する中央アジア非核兵器地帯条約(セメイ条 約)は、加盟国の自国領域内で他国の放射性廃棄物の処分を許可しない旨を規定している。
したがって、MNA にこれらの条約締結国が加盟する場合、それらの国野領域内では他国の放 射性廃棄物の処分をできない。
その他、国や州の法律で使用済燃料の持ち込みにつき規定している国もある。例えば、
ロシアの法律によれば、他国で発生した使用済燃料のロシアへの持ち込みに係り、一時的 保管と再処理の場合に許容され、前者の場合は保管後に発生国に再処理せず戻されるか、
再処理後に廃棄物と一緒に戻されることになる。
5)-3 MNA における輸出管理制度の提案とその評価
上記を踏まえ、本稿では以下の輸出管理制度を提案した。
表 6.9 MNA 施設における輸出管理制度の提案 MNA 準拠法(原則) その他の要求事項
タイプ A パートナー国の法律 NSG ガイドラインの遵守(ただし供給国の主観的クライテリア
(NSG ガイドラインパート1パラグラフ 6(b)後半)を除く
放射性廃棄物はそれを発生させた国が処分の責任を負うとの 原則を認識。使用済燃料や放射性廃棄物の取り扱いに係り、
放射性廃棄物等安全条約の遵守及び非核兵器地帯条約の尊重
加盟国での原子力資機材等に関する輸出管理制度の統一化
*ただし、立地国の要件を満たすパートナー国/ホスト国に関し ては、それら全体を 1 国同様に取り扱い、加盟国内の核物質 の移転を国際間移転と見なさない
タイプ B ホスト国の法律
タイプ C 立地国の法律
同上
*タイプ C の施設を有する立地国に加え、立地国の要件を満た すパートナー国/ホスト国に関しては、それら全体を 1 国同様 に取り扱い、加盟国内の核物質の移転を国際間移転と見なさ ない
タイプ A~C の MNA 施設の共通項:
タイプ A~C の MNA 施設は、各々パートナー国/ホスト国/立地国の管轄下にあるため、
原則として、それらの施設は、各々の国の輸出管理に係る法規制に従う。
タイプ A~C の MNA 施設を有するパートナー国/ホスト国/立地国は、原子力資機材の輸
51放射性廃棄物等安全条約は、「放射性廃棄物管理」とは、「放射性廃棄物の取扱い、前処理、処理、調整、
貯蔵又は処分に関連するすべての活動(廃止措置に関する活動を含む。)をいい、排出を含み、敷地外の 輸送を除く」と定義し、また「使用済燃料管理」とは、使用済燃料の取扱い又は貯蔵に関連するすべての 活動をいい、排出を含み、敷地外の輸送を除く」と定義している。
52ラオス、ミャンマー、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、タイ、カンボジア、シンガポール、インドネシ ア、フィリピン
53カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン