• 検索結果がありません。

経済性 一国管理との比較

ドキュメント内 ( ブランクページ ) (ページ 112-124)

これまで多くの研究グループが、核燃料サイクルの国際管理化について議論を行ってき

91,92。これらの研究において、多国間管理枠組みには、核不拡散のメリットのみならず、

費用対効果のメリットがあることが示されている。特に、経済性の観点から、多国間管理 の施設は一国管理のそれと比べ、生産規模が大きいことから、規模の経済が大きく働くこ とが言及されている。

これまで、核燃料サイクルや再処理施設のコスト評価に関する研究は、多数行われてき

ており93,94,95,96,97、これらの先行研究の中の LaMontagne (2005)では、多国間管理に関する

経済性評価を行っている。特に、LaMontagne (2005)においては、フロントエンドに注目し ており、一国管理ケースのウラン濃縮コストは、資本コストを含めて数 10 億ドルになると 予想している。その一方で、多国間管理のケースにおいては、約 6 億ドルになると評価し ている。すなわち、フロントエンドのみの評価においても、一国管理と比較し、多国間管 理枠組みの方が、経済的メリットがあることを示している.しかしながら、LaMontagne (2005)の評価では、上で述べたような多国間管理の経済的メリットである規模の経済につ いて分析されておらず、さらに、バックエンドのコストが考慮されていない。

他方において、IAEA (2005)では、多国間管理における核物質の海上輸送について言及が されている。多国間管理枠組みでは、大規模な機微技術施設を限られた数の参加国に設置 することにより,サイト数が減少し、核拡散リスクは小さくなる。一方で、核物質の海上 輸送の機会が増加すると示されている.さらに、その海上輸送の機会の増加が、輸送時の 事故の可能性を増加させると指摘している。それゆえ、多国間管理全体でみた場合、一国 管理より輸送コストが大きくなるものと考えられる。

このように、多国間管理と一国管理とでは経済的な観点において、規模の経済と輸送コ ストに関してトレードオフの関係にあると考えられる。特に、多国間管理では、規模の経 済というメリットが存在する一方で、海上輸送が一国管理より上昇するというデメリット を併せ持つことが考えられる。

そこで本節では、フロントエンドとバックエンドの両方を考慮した多国間管理枠組みに おける核燃料サイクルのコスト評価を行う。特に、規模の経済、輸送コスト、再処理開始 の遅延に関して、他国間管理と一国管理の経済性比較を行い、どの程度の輸送コストであ れば多国間管理ケースに経済的メリットがあるのかを明らかにする。さらに、アジア諸国 に、中間貯蔵や再処理等の施設があると想定し、それぞれの施設間の輸送シナリオを設定 する。それぞれのシナリオに対する輸送コストを算出し、上記のモデルに組み込むことで、

91 V. Meckoni, R.J. Catlin, L.L. Bennett, “Regional nuclear fuel cycle centres: IAEA study project,”

Energy Policy, 5, 267-281 (1977).

92 IAEA (International Atomic Energy Agency), “Multilateral approaches to the nuclear fuel cycle,”

Expert Group Report to the Director General of the IAEA, Vienna (2005).

93 OECD/NEA (Nuclear Energy Agency), “The economics of the nuclear fuel cycle.” OECD/NEA, Paris (1994).

94 M. Bunn, S. Fetter, J.P. Holdren, B. van der Zwaan, “The economics of reprocessing vs. direct disposal of spent nuclear fuel,” Project on Managing the Atom, Belfer Center for Science and International Affairs. John F. Kennedy School of Government, Harvard University, Cambridge, MA (2003).

95 S.A. LaMontagne, “Multinational approaches to limiting the spread of sensitive nuclear fuel cycle capabilities,” Belfer Center Programs or Projects: International Security; Preventive Defense Project, Belfer Center for Science and International Affairs. John F. Kennedy School of Government, Cambridge, MA (2005).

96 E.A. Schneider, M.R. Deinert, K.B. Cady, “Cost analysis of the US spent nuclear fuel reprocessing facility,” Energy Economics, 31, 627-634 (2009).

97 G.D. Recktenwald, M.R. Deinert, “Cost probability analysis of reprocessing spent nuclear fuel in the US,” Energy Economics, 34, 1873-1881 (2009).

108

輸送シナリオを考慮した多国間管理枠組みの経済性評価を行う。

2)-1 評価モデル

原子力委員会の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会における核燃料サイク ルコストモデル98を参考に経済性評価モデルを構築する。

原子力委員会の試算モデルでは、「再処理モデル」、「直接処分モデル」、「現状モデ ル」の 3 つのケースそれぞれのコストを算出し比較を行っている。本節では、「現状モデ ル」における中間貯蔵ケースを参考にすることで、図 6.10 のようなモデルにより評価を行 う。炉内滞在期間を経て(0 時点から 間)、時点 において、中間貯蔵施設に使用済 燃料を輸送する。時点 から まで使用済燃料を貯蔵し、時点 において再処理施設へ輸 送され、再処理、MOX 製造が開始される。さらに、時点 において、再処理された燃料と MOX 燃料により発電を開始する一方で、時点 において、高レベル放射性廃棄物(HLW)の 処分を行う。

これらの核燃料サイクルに関する総コスト (円/tU)は以下のように表すことができ る:

ここで、 , , , , , , は、それぞれウラン燃料、中間貯蔵施設へ の輸送、中間貯蔵、再処理施設への輸送、再処理、MOX 燃料製造、HLW 処分に関するコスト 単価(円/tU)を表している。また、 は割引率である。

図 6.10 評価モデルの概要

98 原子力委員会,原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会,核燃料サイクルコストの試算,

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_hatsukaku.htm.

𝐶𝑎𝑙𝑙 = 𝐶𝑢𝑓+ 𝐶𝑡𝑠𝑡 𝑟𝑡−1 1 + 𝜌 𝑡𝑡𝑠𝑡+𝑡𝑔(𝑡−1)

𝑡=1

+ 𝐶𝑡𝑠 𝑟𝑡−1 1 + 𝜌 𝑡𝑡𝑠+𝑡𝑔(𝑡−1)

𝑡=1

+ 𝐶𝑟𝑡 𝑟𝑡−1 1 + 𝜌 𝑡𝑟+𝑡𝑔(𝑡−1)

𝑡=1

+ 𝐶𝑟 𝑟𝑡−1 1 + 𝜌 𝑡𝑟+𝑡𝑔(𝑡−1)

𝑡=1

+ 𝐶𝑚𝑜𝑥 𝑟𝑡 1 + 𝜌 𝑡𝑟+𝑡𝑔(𝑡−1)

𝑡=1

+ 𝐶𝑑 𝑟𝑡−1 1 + 𝜌 𝑡𝑑+𝑡𝑔(𝑡−1)

𝑡=1

(1)

Uranium fuel fabrication

Power generation

Temporary storage

Transport, Reprocessing and MOX fuel fabrication

・・・

tgp

0 ttst

Transport to Temporary

storage

tts tr tg

Power generation

・・・

td

HLW Disposal

109

発電電力量 (kWh/tU)は、以下のように表される:

ここで、H は平均取出燃焼度(MWd/tU)、Thは一日の時間数(24 h/d)、 は熱効率、 は 発電量単位変換(1000 MW/kW)を表している。(1)式を(2)式で割ることにより、核燃料サ イクルコスト Call/P(円/kWh)を算出することができる.

上で述べたように、多国間管理枠組みにおける施設では、一国管理の施設と比べて規模 の経済がはたらくと仮定する。Schneider et al. (2009)では、再処理施設に規模の経済が あるものとして分析しており、本研究においても再処理施設に焦点を当て、以下の式によ って一国管理の再処理施設のコスト単価(円/tU)を導出する:

ここで、 , はそれぞれ、多国間管理、一国管理の再処理コスト(円)、 , は それぞれ、多国間管理、一国管理の再処理施設の処理容量(tU)を表している。 はスケ ーリングパラメータを表しており、0.6 から 1 の間の値をとる。例えば、一国管理の施設の 容量が多国間管理のそれより小さいと仮定したとき( )、 の場合は、(3) 式から一国管理と多国間管理のコスト単価(円/tU)は同じ値になることがわかる.しかし ながら、 の場合は、一国管理のコスト単価は多国間管理のそれより大きくなる。本 研究では、(3)式の規模の経済に関する条件を用いて、多国間管理と一国間管理それぞれの 再処理コストに違いがあるとする。

また、本研究では、中間貯蔵施設や再処理施設への輸送コストは、一国管理と比較し、

多国間管理の方が大きくなるとして分析を行う。すなわち、多国間管理と一国管理とのコ スト構造の差異は以下のとおりである:

ここで、 , はそれぞれ、多国管理、一国管理ケースにおける中間貯蔵施設への輸 送コストを表しており、 , はそれぞれ、多国管理、一国管理ケースにおける再処 理施設への輸送コストを表している。

2)-2 数値分析

(ア) パラメータ

本節では、前節の評価モデルを用いて、多国間管理と一国管理のそれぞれのケースにお 𝑃 = 𝐻𝑇𝜂 1 − 𝐿 𝜉 1

𝑡𝑔𝑝

1 1 + 𝜌

𝑥

𝑑𝑥

𝑡𝑔𝑝 0

𝑟𝑡−1 1 + 𝜌 𝑡𝑔 𝑡−1

𝑡=1

(2)

𝐶𝑟𝑖

𝐶𝑟𝑚 = 𝑀𝑟𝑖 𝑀𝑟𝑚

𝛾

→ 𝐶𝑟𝑖 = 𝑀𝑟𝑖 𝑀𝑟𝑚

𝛾

𝐶𝑟𝑚

(3)

𝐶𝑟𝑚< 𝐶𝑟𝑖

𝐶𝑡𝑠𝑡𝑚 > 𝐶𝑡𝑠𝑡𝑖 𝐶𝑟𝑡𝑚 > 𝐶𝑟𝑡𝑖

(4)

110

けるサイクルコストを算出し、規模の経済や輸送コストに関するトレードオフの関係を分 析する。

本分析で用いる基本ケースのパラメータは、原子力委員会の試算モデルの「現状モデル」

における中間貯蔵シナリオのパラメータ(割引率𝜌 )を用いる。それぞれの時点のパ ラメータは、𝑡 ,𝑡 , 𝑡 , 𝑡 , 𝑡 , 𝑡 と なおり.𝑡 と𝑡 との差𝑡 − 𝑡 である 20 年間が中間貯蔵期間となる。本節の分析では、中間 貯蔵期間𝑡 − 𝑡 が、20 年を基本ケースとし、後節において 20 年から 100 年までの期間の場 合の分析を行う。

一国管理ケースにおける再処理コスト単価は前節で述べたように、(3)式より求める。原 子力委員会の試算モデルのデータから、割引率 3%のときの再処理事業の総割引現在コスト は 60,604 億円、総割引処理量は 14,759tU と見積もられている99。六ヶ所再処理施設の処理 容量は 800t であることから、(3)式の𝐶 と𝑀 をそれぞれ、60,604 億円、800t とする。

また、Schneider et al. (2009)において,再処理コストに関してスケーリングパラメータ 𝛾 0.8, 1.0 のときの分析を行っている.本研究においては、スケーリングパラメータ 𝛾 0.8 を基本パラメータとして、後節において𝛾 0.7-0.9 の比較分析を行う。これらの 設定により、任意の一国管理ケースの再処理施設容量𝑀 に対して、𝐶 が算出される。例え ば、六ヶ所再処理施設の 10 分の 1 の容量である 80t のとき、𝐶 9,605 億円となり、再処 理事業単価は 65,080 万円/tU となる。すなわち、容量が 800t のときの 1.58 倍のコストに なり、規模の経済の影響があることがわかる。

また、多国間管理ケースの使用済燃料の輸送コストは、一国管理のときより大きくなる とし、本分析では、一国管理ケースに対して 1 倍~10 倍になるときのサイクルコストを算 出する。これらを表にまとめる。

表 6.14 各事業要素の単価(割引率 3%)

多国間管理 一国間管理 ウラン燃料 万円/tU 27,100 27,100 SF 輸送

(発電所→中間貯蔵)

万円/tU

1,600-16,000 1,600

中間貯蔵 万円/tU 5,200 5,200

SF 輸送

(中間貯蔵→再処理)

万円/tU

1,700-17,000 1,700 再処理 万円/tU 41,100 65,100(80tU)

MOX 燃料 万円/tHM 41,500 41,500 HLW 処分 万円/tU 11,000 11,000

99 これらの値により、割引率 3%のときの再処理事業単価は、41,062 万円/tU となるが、原子力委員会の試 算モデルにおいて記載されている値は 41,100 万円/tU となっており、有効桁数 3 桁として表示しているも のと考えられる。

111

図 6.11 サイクルコストに関する輸送コストの影響

(イ) 多国間管理と一国管理とのコスト比較

前節のパラメータ設定の下、多国間管理と一国管理のそれれぞれのサイクルコストを算 出し、輸送コストに対してコスト比較を行う。図 6.11 において、一国管理ケースのサイク ルコスト(1.410 円/kWh)と多国間管理ケースに対する輸送コストの依存性について示され ている。図に示されているように、輸送コストが増加するにしたがい、多国間管理のサイ クルコストが大きくなることがわかる。また、一国管理ケースの輸送コストに対して多国 間管理のそれが 4.47 倍かかるときの前後において、それぞれの損益が分かれ、4.47 以下で あれば多国間管理ケースの方がサイクルコストは小さく、それ以上であれば、一国間管理 の方がサイクルコストは小さくなることがわかる。

一国管理ケースにおける再処理施設の容量の影響について分析したものが図 6.12 である。

図 6.13 に示されているように再処理施設の容量が 40tU, 80tU, 200tU と

(a) 一国管理ケースの再処理容量の影響 (b) 再処理容量・輸送コストの損益分岐点 図 6.12 サイクルコストに関する輸送コストと再処理容量の影響

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Cyc le co styen /k Wh

Ratio of transport cost to the indigenous approach Indigenous approach

MNA

0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 1.7 1.9

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Cycle costyen/kWh

Ratio of transport cost to the indigenous approach 40 tU 80 tU 200 tU Indigenous approach MNA

0 1 2 3 4 5 6 7

0 100 200 300 400

Ratio of transport cost to the indigenous approach

Capacity of reprocessing facility for the indigenous approach (tU)

MNA

Indigenous approach

ドキュメント内 ( ブランクページ ) (ページ 112-124)