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保障措置

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核兵器不拡散条約(NPT: Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)第 3 条は、

非核兵器国による IAEA の保障措置受諾義務を規定し、非核兵器国は IAEA と保障措置協定を締結、

その原子力活動につき、保障措置を受ける義務を有する。

以下に、IAEA 保障措置協定の種類と各々の協定の概要と、欧州 27 カ国から成る欧州原子力共 同体(EURATOM:European Atomic Energy Community)やアルゼンチンとブラジル間の保障措置の 仕組みである地域保障措置について記載し、その上で MNA 施設の保障措置制度を提案し、続いて 評価を行う。

1)-1 保障措置の種類及び内容

IAEA 保障措置協定には、INFCIRC/153 型保障措置協定(包括的保障措置協定)、INFCIRC/66 型保 障措置協定及び自発的協定がある。また、これらのいずれかの保障措置協定を締結した国との間 で追加的に締結される保障措置強化のための追加議定書(AP: Additional Protocol、INFCIRC/540)

がある。さらに、IAEA と複数国からなる国際機関及びその加盟国が締結した保障措置協定として 地域保障措置協定がある。現在、この地域保障措置協定は、IAEA、欧州原子力共同体(ユーラト ム、EURATOM:European Atomic Energy Community)及びユーラトム加盟国で締結した保障措置協 定 ( INFCIRC/193 ) と 、 IAEA 、 ブ ラ ジ ル ・ ア ル ゼ ン チ ン 核 物 質 計 量 管 理 機 関 ( ABACC:

Brazilian-Argentine Agency for Accounting and Control of Nuclear Materials)、ブラジル及 びアルゼンチンが締結した保障措置協定(INFCIRC/435、四者間協定)の 2 つがある。

前者につき、ユーラトムの業務の一つとして、原子力平和利用の研究開発と推進と域内核燃料 の安定供給とともに、民生用核物質の目的外使用の確認があり(ユーラトム条約第 7 章)、ユーラ トムは保障措置を EU 域内で強制的に執行している。ユーラトム保障措置の特徴としては、以下が 挙げられる。

 保障措置の目的は核物質の目的外使用の検認

 未申告核物質及び未申告の原子力活動は対象外(別途欧州委員会が決定)

 仏国及び英国内の国防目的の設備、物質を除いた全ての民生用施設を査察対象としている

 ユーラトムが査察官をリクルートし、加盟国に対し査察を行う

 査察官はユーラトムから発効された公式書類を提示することにより、保障措置に必要な範囲 で全ての場所及びデータにアクセスできる

 ユーラトム保障措置の敷衍に係り、欧州委員会規則が作成されている

また、核物質の所有権はユーラトムにあり、施設は核物質の使用権のみを有する。加えて「核 物質の引き上げ」という罰則が存在する。

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加えて INFCIRC/193 は、基本的に INFCIRC/153 の内容を取り入れているが、ユーラトム加盟国 が共同して保障措置協定を締結すること及びユーラトムがその加盟国に対し保障措置を適用する ため、以下の調整がなされている7

 従来の個別国との保障措置協定では、IAEA の保障措置は当該個別国の核物質計量管理制度の 結果を検証する方法で適用されることになっていたが、この協定では加盟国に対するユーラ トム保障措置制度の結果を検証する方法が適用される

 ユーラトムの保障措置制度を活用するため、IAEA 保障措置適用上、ユーラトム加盟国を地域 として取り扱い、加盟国の核物質の移動については、国際間移転としての手続きをとらない

 IAEA は、ユーラトム査察と一諸に査察を実施し、可能な限りユーラトムの査察活動を観察す る形で行ない、必要な場合は IAEA 独自の査察を行なう

 ユーラトムは、その査察計画を IAEA と協力して作成する。また IAEA の同時査察の有無にか かわらずユーラトム査察の実施結果はすべて IAEA に報告される

 IAEA との保障措置協定及び付属議定書の適用を容易にするため、ユーラトム及び IAEA の代 表からなる連絡委員会を設置する

2011 年のユーラトム保障措置実施に係るサマリーによれば8、2011 年にユーラトムは、再処理 施設、ウラン濃縮施設、核燃料製造施設、原子炉及び貯蔵施設、研究室等で計 1,299 回の査察を 実施している。またユーラトムは、域内における査察の効率化のため、1992 年に IAEA とニュー・

パートナーシップ・アプローチ(NPA: New Partnership Approach)に署名し、“one job one person”

の原則に基づく査察活動の重複の回避と補完手段としての品質管理手段の導入、査察機器や分析 能力の共用、情報の共有、研究開発や査察官訓練の協力、査察官の滞在を機器で置換するための 技術の共有化等で合意している。

一方、後者の ABACC による保障措置につき、ABACC は、互いに国境を接し、軍政権により核兵 器開発構想が取りざたされていたアルゼンチンとブラジルが、1980 年 4 月の「原子力平和利用の 開発と適用のためのアルゼンチン・ブラジル協定」から約 12 年に渡る信頼醸成措置の最後のプロ セスとして署名・発効した「原子力平和利用のためのアルゼンチン及びブラジルの協定」(二国間 協定)に基づき設立された機関である。ABACC は核物質及び原子力施設の平和利用を基本約束と し、核物質の不転用の検認を目的とした共通核物質計量管理制度(SCCC: Common System for Accounting and Control of Nuclear Materials ) を 実 施 す る 。 四 者 間 協 定 は 基 本 的 に は INFCIRC/153(corrected)と同じであるが、ABACC が保障措置を適用し不必要な IAEA との保障措置 活動の重複を避けること、原子力潜水艦については保障措置の適用除外とされていること等が異 なる。

7原子力委員会ホームページ、 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/wp1973/sb130201.htm (アクセ ス日:H24.2.6)、他

8 European Commission Directorate-General for Energy, “Summary Report on the Implementation of Euratom Safeguards in 2011”, July 2012, Ref. Ares(2012)1315222 - 08/11/2012

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1)-2 MNA 施設における保障措置の法的枠組みとその評価

本稿では、タイプ A~C の MNA 施設につき、地域保障措置を中心とする以下の形態の保障措置を 提案した。地域保障措置を導入したのは、上述のユーラトム及び ABACC の例で明らかなように、

地域保障措置が地域の核不拡散の向上と加盟国間の信頼性向上に寄与しているからである。

なお、以下の表では、タイプ A~C の MNA 施設における保障措置制度を提案するとともに、比較 対象として日本と、すでに地域保障措置を導入しているユーラトム及び ABACC についても記載し た。

タイプ A~C の MNA 施設に適用される保障措置の共通項:

 MNA 加盟国間で地域保障措置制度を導入、その旨を地域保障措置協定で規定する。

 MNA 加盟国と AMMAO と IAEA で保障措置協定を締結する。

 MNA の地域保障措置部門は、RSAC(地域計量管理制度)及び地域保障措置の実施機関としての 役割を果たす。

タイプ A 及びタイプ B の MNA 施設の保障措置:

 事業者が行った計量管理データを、パートナー国/ホスト国の規制機関と、RSAC 実施機関と しての MNA の地域保障措置部門がチェックする。

 MNA の地域保障措置部門と IAEA の査察には、パートナー国/ホスト国の規制機関の査察官が 同行することもあり得るし、データのチェックと査察の双方を MNA の保障措置部門に委ねる 場合もある。

タイプ C の MNA 施設の保障措置:

 タイプ C の MNA 施設の運転は、MNA 事業者の現地法人(立地国法人)との契約に基づき、国 際共同産業企業体が行う。したがって施設の計量管理は国際共同産業企業体が行う。その計 量管理等のデータは、RSAC の実施機関としての MNA の地域保障措置部門がチェックし、IAEA と共同で、あるいは単独で査察を行う。

 MNA 施設が立地国政府の領土内にあり、立地国内の法律の適用を受けることから、立地国政 府は、国際共同産業企業体が行う計量管理データのチェックや、AMMAO の保障措置部門が行 う査察等に加わることも可能。

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表 6.1 MNA 施設等における保障措置制度の提案

保障措置の目的 CS AP 地域保障措置 準拠規定(国内法、協定、その他) 計量管理者(=施設運転者) 計量管理

データチェック者 査察の実施者 日本 核物質等の核兵器への転用防止 ○ ○ × 原子炉等規制法

 日本と IAEA 間の保障措置協定9 日本の事業者 日本の規制機関  IAEA

 日本の査察官が同行

地 域 保 障 措 置

EU 諸国 核物質等の目的外使用の防止 ○ ○ ○

 EU 諸国の国内法

 ユーラトム条約第 7 章及び下部(EURATOM 保障措置の適用に関する委員会規則

(302/2005))

 ユーラトム加盟国のうち非核兵器国/ユ ーラトム/IAEA 間の保障措置協定10

 仏国/ユーラトム/IAEA 間の保障措置協定

11

 英国/ユーラトム/IAEA 間の保障措置協定

12

各国の事業者

地域計量管理制度13の実施機関と してのユーラトムが行う(各国の 規制機関が加わる場合もある)

ユーラトム保障措置部門と IAEA(ユ ーラトムの査察に各国の査察 官が同行する場合もある)

アルゼン チン、ブ ラジル

核物質等の核兵器への転用防止 △

14 △ ○

 アルゼンチン、ブラジルの国内法

 「原子力エネルギーの平和に限定した利 用のためのアルゼンチン共和国及びブラ ジル連邦共和国間の協定」

 アルゼンチン/ブラジル/ABACC/IAEA 保障 措置協定(INFCIRC/435、四者間協定)

各国の事業者 各国の規制機関と ABACC

ABACC と IAEA(ABACC の査察官 は事実上、両国の査察官から 構成されるため、両国でお互 いの施設を査察)

MNA

タイプ

A 同上 ○ ○ ○

 パートナー国法

 MNA 地域保障措置協定

 MNA 加盟国(パートナー国、ホスト国及 び立地国を含む)/MNA の主体(AMMAO)

/IAEA 保障措置協定

パートナー国の事業者 パートナー国の規制機関と MNA の 地域保障措置部門

MNA の地域保障措置部門と IAEA(MNA の査察には、パート ナー国の規制機関が加わる場 合もある)

タイプ

B 同上 ○ ○ ○

 ホスト国法

 MNA 地域保障措置協定

 MNA 加盟国(パートナー国、ホスト国及 び立地国を含む)/MNA の主体(AMMAO)

/IAEA 保障措置協定

ホスト国の事業者 ホスト国の規制機関と MNA の地域 保障措置部門

MNA の地域保障措置部門と IAEA(MNA の査察には、ホスト 国の規制機関が加わる場合も ある)

タイプ

C 同上 ○ ○ ○

 立地国法

 MNA 地域保障措置協定

 MNA 加盟国(パートナー国、ホスト国及 び立地国を含む)/MNA の主体(AMMAO)

/IAEA 保障措置協定

MNA の事業者が設立した立地 国の現地法人から施設の運 転を委託された事業者(国際 共同産業企業体)

立地国の規制機関と MNA の地域保 障措置部門

MNA の地域保障措置部門と IAEA(MNA の査察には、立地国 の規制機関が加わる場合もあ る)

CS:包括的保障措置 AP:追加儀提唱

9INFCIRC/255 及び INFCIRC/255 Add.1

10INFCIRC/193 及び INFCIRC/193 Add.8

11INFCIRC/290 及び INFCIRC/290 Add.1

12INFCIRC/263 及び INFCIRC/263 Add.1

13地域計量管理制度(RSAC: Regional System of Accounting for and Control of nuclear material)

14アルゼンチンとブラジルは IAEA との間で個別に CSC を締結していないが、アルゼンチン、ブラジル、ABACC 及び IAEA との保障措置に係る協定(四者間協定)で CSC の内容を網羅している。また、アルゼンチンとブラジルは AP を批准していないが、四者間協定が AP の内容まで網羅しているかについては議論がある。

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