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貧困削減に向けた政府のキャパシティ

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第 2 章 インド政府の取組みと成果

2.2. 貧困削減に向けた政府のキャパシティ

表 2-24 中央政府による食糧補助金支出

(単位:1000万ルピー)

1997/98 1998/99 1999/2000 2000/01

食糧補助金額 7,500 8,700 9,200 8,100

政府支出に占める割合(%) 3.23 3.11 3.03 2.39

(出所) Planning Commission, “Mid-term Appraisal of the Ninth Five Year Plan (1997-2002)”, p.236, Table-1より作成

2-25

は、主要な農村貧困削減プログラム46への中央政府の予算と実績を示したもの

である。

2003/04

年度の予算執行状況は、いずれのプログラムも使用可能額の

85

%を上

回っている。貧困層に雇用機会と食糧を提供するスキームである

SGRY

に最も大きな予 算配分が行われており、

2002/03

年度

499

億ルピー、

2003/04

年度

589

億ルピーが支出さ れた。農村貧困層に住宅を供給するスキームである

IAY

に対しては

258

277

億ルピー、

貧困層の生計活動支援を行う

SGSY

に対しては

100

億ルピー前後の支出が行われた。

表 2-25 農村貧困削減プログラムへの中央政府支出

(単位:1000万ルピー)

2002/03 2003/04

使用可能額

(a)

支出額 (b)

支出率(%)

(c)=(b)/(a)

使用可能額

(a)

支出額 (b)

支出率(%)

(c)=(b)/(a) SGSY 1,077.05 921.15 85.53 1,214.13 1,044.25 86.01 SGRY 6,246.20 4,990.89 79.90 6,952.81 5,886.98 86.41 IAY 2,994.20 2,767.92 92.44 2,939.46 2,578.85 87.73

(出所) Planning Commission, “Mid-term Appraisal of the Tenth Five Year Plan (2002-07)”, p.239, Table 7-Iより作成

2.2.2.

地方分権化と地方政府

貧困削減プログラムの実質的な実施主体は州政府であり、各州政府の実施能力がそれぞ れの州における貧困削減に影響を与えている。本項では、州政府の実施能力に焦点を当 てて、分析を行なう。

インドは連邦制をとっており、政治的には州政府の権限が強い。第

73

憲法修正におい て地方分権化が明記され、州政府の権限・所管が拡大されたが、その一方で、州政府の 財政的基盤は脆弱であり、財政赤字および債務を抱え、多くの州が財政面で中央政府に 依存しているのが現状である。州政府の自主財源は、中央政府により課税され州政府が 徴収する税金47に加えて、中央政府により課税・徴収され州政府に配分される税金48お よび中央政府により課税・徴収され中央・州政府間で分与される所得税が中心となって いる49

2-26

は州レベルでの

5

カ年計画の資金計画の合計を示したものである。これを見る

と、第

8

次計画以降、州政府の自主財源は予算に対し大幅に不足しており、借入金と中 央政府からの財政移転に依存している。

1990

年代後半から

5

カ年計画の実施にあたり、

州政府の自主財源が大幅に不足している大きな要因としては、民間投資誘致のため税率 引き下げによる州政府の税収の低下と公務員の給与引上げに伴う一般歳出の増加が挙 げられている50

2-26

州レベルの

5

ヵ年計画の資金調達状況

65カ年計画

(1980-85)

75カ年計画

(1985-90)

85カ年計画

(1992-1997)

95カ年計画

(1997-2002)

資金源

千万ルピー 千万ルピー 千万ルピー 千万ルピー 州政府自主財源 35,169 28 30,220 18 -6,480 -4 -105,407 -52

借入金 43,691 35 61,377 37 90,643 52 215,334 107

州政府財源総額 78,859 63 91,596 55 84,163 48 109,927 55 中央政府の支援 47,174 37 73,854 45 90,643 52 91,719 45 資金総額 126,034 100 165,451 100 174,806 100 201,645 100

(出所) Planning Commission (2001) “Approach Paper to the Tenth Five Year Plan (2002-2007)”, p.15, Table Vより作成

(注) 2001/02年度計画の資金調達は、政府レベルでの議論をベースにしたもの

IMF

のレポートによれば、州政府の財政面での問題としては、

中央政府からの財政移転への依存 歳入プール制度51

モラル・ハザード ソフトな予算制約

といった問題が指摘されている52

47

農地以外の相続税・遺産税、通行税、鉄道利用税、州間取引税、州間取引にかかわる委託販売税

48

印紙税および医薬品・トイレタリー製品に課税される消費税

49

関税および法人税は中央政府により課税・徴収され、中央政府の税源となっている。また、連邦消費税

については、議会の承認が得られた場合に、中央政府および州政府間で分与される。

50佐藤  隆広「第

2

章  インドのマクロ経済政策の現状と課題:財政・金融・為替問題」(財務省委託)

51

中央政府により課税・徴収され州に配分される、あるいは中央と州とで分与される財源。

52

Catriona Purfield, (2004), “The Decentralization Dilenmma in India”, International Monetary Fund, IMF Working

中央政府による財政支援として、開発予算に関わる支援、特定の分野での問題を解消す るために特定の州に供与される無償支援53および各州に対し県レベル以下の行政能力な どのキャパシティの強化を支援する無償支援が行なわれている。開発予算を補填する財 政支援は、それぞれの基礎・社会インフラ整備や貧困対策プログラムにより様々な形態 によって行われる。

インド全体では、州予算に占める中央政府からの財政支援の占める割合は

45

%である。

同割合が

100

%を超えている州が

5

州(アッサム、マニプール、メガラヤ、ミゾラム、

ナガランド)あり、いずれもインド東北部の面積の小さな貧困州である。また、

50

%以 上の州は

9

州に上る。また、開発予算についても、多くの州で割合は小さいものの、ド ナーによる支援を受けた援助プロジェクトが実施されており、ドナーからの援助資金が 導入されている。最も援助額が大きい州は、アーンドラ・プラデーシュであり、

1997

年度から

2001

年度までの

5

年間の合計は

838

億ルピーであり、

2001

年度だけでも

376

億ルピーに上っている。

1

人当たり援助額でみても

221

ルピーと最も大きい(表

2-28

)。 なお、歳入プール制度は、各州政府が歳入を増加させるための取組みを行うインセンテ ィブを失わせていることが指摘されている。また、中央から配分される財源の州政府間 の水平的配分を、人口、所得格差、面積、インフラ、徴税努力、財政規律の指標を重み 付けして行うという報告書が

2000

7

月に出された第

11

次歳出改革委員会(

ERC

Expenditure Reforms Commission

)によって提出された。あらたな制度による水平的配分

では、所得格差の比重が高く、徴税努力や財政規律の比重が低いため、財政運営の健全 化に努めている州への配分が小さくなるという不公平をもたらすため、健全財政に取組 んでいる南部のアーンドラ・プラデーシュ、タミル・ナードゥ、ケーララや西部のマハ ーラーシュトラおよびグジャラートなどの州が見直しを求めて反発するなどの事態も 生じた。

さらに、中央政府からの財政支援への依存は歳出を拡大させる傾向を伴っているため、

歳入が伸びないにも関わらず、歳出が増加するといった悪循環をもたらし、州政府の財 政赤字の拡大を引き起こしている。中央政府の州政府に対する中央銀行を通じた貸付を 含む財政支援は、州政府のモラルハザードやソフトな予算制約54による財政赤字および 債務負担の増大の原因となっている。

その他に、農業セクターに依存している経済構造を抱える州では、農業収入は課税され ないため、構造的に財政不均衡を招きやすいといった問題も指摘されている。また、州 の政治的な背景から歳出拡大への圧力が高い州も存在している。

Paper

53

例えば、初等教育就学率の低い州に対し、初等教育拡大のための無償資金が供与された。

54財政赤字が発生しても、中央政府による支援が期待されるため、当初予算を超える支出が行われるなど、

予算管理が緩やかである状態。

表 2-27 中央政府から地方政府への財政支援

(単位:1000万ルピー)

主な州 6

1980-85

7

1985-90

8

1992-97

9

1997-02

10

2002-07

州予算に占め る中央央政府 からの財源の 割合(%)

アーンドラ・プラデーシュ 1,021.00 1,830.40 7,090.58 17,267.97 22,241.89 47.72 アッサム 1,215.05 2,560.46 4,925.70 7,761.58 9,527.60 114.58 ビハール 1,442.48 2,686.94 6,151.06 10,474.63 11,721.41 55.82 グジャラート 622.80 1,283.75 2,578.99 11,325.20 13,156.34 32.89 ハリヤーナー 280.58 431.31 1,932.22 3,884.95 3,180.00 30.92 カルナータカ 589.00 1,241.53 3,842.77 8,582.41 17,992.82 41.31 ケーララ 494.57 1,294.45 2,907.89 4,185.70 10,838.55 45.16 マディヤ・プラデーシュ 1,104.91 2,017.79 3,794.20 9,324.32 10,168.13 38.82 マハーラーシュトラ 1,046.46 1,817.23 6,223.47 9,532.33 9,770.39 14.66 オリッサ 759.37 1,378.91 3,677.05 9,231.50 14,607.72 76.88 パンジャーブ 261.65 285.34 6,182.59 4,188.73 3,979.00 21.33 ラージャスターン 731.35 1,325.08 3,692.00 7,210.79 9,640.56 35.29 タミル・ナードゥ 757.11 1,715.64 6,676.64 8,465.63 15,006.13 37.52 ウッタル・プラデーシュ 2,342.18 3,219.48 12,915.79 25,996.67 35,410.12 59.31 西ベンガル 729.42 1,331.77 4,997.43 13,303.52 14,345.50 50.09 インド全体 16,557.06 31,424.80 93,833.81 185,259.63 254,091.51 45.28

(出所)Planning Commission (2002) “Tenth Five Year Plan 2002-2007” Vol.III, p.118, Table 6.1およびp.126, Table6.4より作成 95カ年計画の数値は合意ベース。

(注) 10次五カ年計画の数値は予測ベース。

表 2-28 援助によって実施されたプロジェクトの金額(第

9

5

カ年計画)

(単位:千万ルピー)

主な州 1997

年度

1998 年度

1999 年度

2000 年度

2001 年度

合計額 年平均額 1人当たり 援助額 (年額:ルピー) アーンドラ・プラデーシュ 1,117.94 624.72 1,440.51 1,442.34 3,755.84 8,381.36 1,676.27 221.36 アッサム 0.22 33.16 41.19 78.26 93.25 246.08 49.22 18.48 ビハール 132.26 112.78 130.41 63.67 16.83 455.96 91.19 11.00 グジャラート 219.27 267.65 512.33 891.24 1,604.96 3,495.45 699.09 138.17 ハリヤーナー 221.25 165.01 280.85 296.66 151.93 1,115.70 223.14 105.84 カルナータカ 264.48 316.49 456.70 579.50 1,691.74 3,308.91 661.78 125.49 ケーララ 38.73 40.85 41.55 77.16 96.99 295.28 59.06 18.55 マディヤ・プラデーシュ 117.32 163.26 598.67 172.68 819.60 1,871.53 374.31 61.99 マハーラーシュトラ 1,073.68 597.13 245.36 318.70 289.23 2,524.11 504.82 52.18 オリッサ 535.54 415.83 391.56 516.34 310.50 2,169.76 433.95 118.22 パンジャーブ 149.91 171.11 106.35 187.15 209.58 824.11 164.82 67.86 ラージャスターン 230.11 225.17 188.09 248.42 99.12 990.91 198.18 35.09 タミル・ナードゥ 568.52 305.16 591.41 775.14 340.19 2,580.42 516.08 83.09 ウッタル・プラデーシュ 721.39 465.05 431.22 1,697.90 606.37 3,921.92 784.38 47.24 西ベンガル 542.31 886.21 819.67 636.09 688.45 3,572.74 714.55 89.07 インド全体 5,954.25 4,824.89 6,341.06 8,093.24 10,945.23 36,158.66 7,231.73 70.42

(出所) Planning Commission (2002) “Tenth Five Year Plan 2002-2007” Vol.III, p.90, Annexure-3.12より作成

ドキュメント内 untitled (ページ 65-69)