第 3 章 貧困削減に向けたパートナーシップ
3.1. 援助機関による取組み
3.1.4. 二国間援助機関
(1)
日本日本は、対インド二国間援助の
30
%以上を占めるトップドナーである(表3-3
)。日本 の支援は、貸付の比率が圧倒的に高く、対インドODA
の95
%以上が貸付によるもので ある(表3-4
)。2003
年度の援助実績は、有償資金協力が1,250
億円、無償資金協力が18
億円、技術協力が10
億円であり、2003
年度までの援助額の合計は2
兆3,498
億円と なっている88。他ドナーが社会インフラを重点的に支援しているのに対し、日本は運輸・エネルギーなどの経済インフラ整備に焦点をあてている。
対インド支援では、これまで以下の分野を重点分野としてきた。
経済インフラ 貧困対策
82
Government of India “External Assistance Brochure 2000-2001”, Government of India, Ministry of Finance (http://finmin.nic.in/) 2006
年3
月現在83
Asian Development Bank (2004) “Annual Report 2004”, Asian Development Bank
84
Asian Development Bank (2003) “Country Strategy and Program (2003-2006)”, Asian Development Bank
85
UN System in India Web-site(http://www.un.org.in/)Inter Agency Working Groups, 2006
年3
月現在86
“India Common Country Assessment”, Office of the UN Resident Coordinator, 2000
87
United Nations (2000) “India United Nations Development Assistance Framework (UNDAF)”, United Nations
88外務省『政府開発援助(
ODA
)国別データブック2004
年度版;南西アジア地域;インド』(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki/kuni/04_databook/) 2006
年3
月現在環境保全
2005
年11
月に発表された「対インド国別援助計画」最終案89では、重点目標として 経済成長の促進貧困・環境問題の改善 人材育成・人的交流の拡充 が、掲げられている90。
貧困問題に対する日本の基本的アプローチは、「経済成長を通じた貧困削減」の追求に ある。そのため、インド経済成長のボトルネックの一つとなっているインフラの絶対的 不足・未整備の解消を目的として、円借款によるインフラ整備を行うとしている。さら に、「貧困・環境問題の改善」においては、教育や医療、保健サービスへの限られたア クセスが、貧困層や社会的弱者に一層の負担を強いていることから、これらに対して、
ハード・ソフト両面で支援を行っていく方針である。また、地方の住民所得の向上や雇 用の促進なくして貧困問題は解決しないとの認識に基づき、地方開発にも力を入れると している。防災、観光開発、環境問題も貧困と関連があることから、対インド国別援助 計画の最終案には、これらに対する取り組みも盛り込まれている。
2003
年4
月に、日本の対インドODA
全体の戦略性・透明性・効率性の向上のための現 地体制の強化を目的として、在インド大使館、国際協力銀行(JBIC
:Japan Bank for International Cooperation)
、国際協力機構(JICA:Japan International Cooperation Agency)を正式メンバーとした在印
ODA
タスクフォースが結成されている91。(2)
英国英国は日本と並ぶ対インド援助主要ドナーの一つである。インドは、
2003/04
年度に英 国が供与したODA
のうち最大の被援助国である92。英国国際開発省(DfID: Department for International Development)は、2005/06
年度には、2億8,000
万ポンドの支援を予定 している93。英国は貸付を行っておらず、全て無償資金および技術協力である94(表3-4
)。 セクター別では、教育や保健を中心とした社会インフラ関連の支援が多い(表3-5
)。DfID
は、2004
年から2008
年の援助重点分野として、以下の3
つを挙げている95。 重点地域における貧困削減に対する総合的な取り組み持続的かつ平等な経済成長のための環境整備 上質なサービスへの貧困層のアクセス向上
「重点地域における貧困削減に対する総合的な取組み」では、計画、貧困モニタリング、
89
外務省(2005
年)「対インド国別援助計画(最終案)」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/) 2006年6
月 現在90
2005
年現在、JBICはi)経済インフラの整備、ii)貧困層が裨益する地方開発、iii)環境問題への対応の
3
つを支援の重点分野としている。91財団法人国際開発センター 「インド国別評価報告書」 財団法人国際開発センター
2004
年92
Organisation for Economic Cooperation and Development, “Aid Statistics, Donor Aid Chart”
(http://www.oecd.org/) 2006
年3
月現在93
DfID Web-site (http://www.dfid.gov.uk/countries/asia/india.asp) 2006
年3
月現在94
インド政府の”Economic Survey 2004-2005” (http://indiabudget.nic.in/) 2006
年5
月現在 によれば、1980−81
年に行われた1.5
千万ルピーの貸付が、確認できるローンの最後である。95
DfID (2004) “Partnership for Development, DfID’S Country Plan in India 2004-2008”, DfID
財政支援などのセクター横断的な取り組みを行っている。財政支援は、アーンドラ・プ ラデーシュとオリッサにおいて、州政府の予算に直接資金援助する形で行われている。
「上質なサービスへの貧困層のアクセス向上」に関する支援では、教育や衛生設備、水 に対する貧困層のアクセス向上のため、国家プログラムや個別プロジェクトを支援する ほか、市民社会(
Civil Society
)に対する支援を強化していくとしている。地域別には、引き続き貧困者比率の高いアーンドラ・プラデーシュ、マディヤ・プラデ ーシュ、オリッサ、西ベンガルの
4
州に焦点をあてた支援を行うこととし、貧困層が多 く住む他の地域に関しては、国家プログラムを強化することによって対応していくとし ている96。2006
年現在、54
のプログラムを実施中であり、そのコミットメント額の総額 は8,200
万ポンドである97。(3)
米国米国も、英国同様、貸付を行っておらず、全ての
ODA
は贈与である(表3-4
)。支援は 主に米国国際開発庁(USAID
:United States Agency for International Development
)によっ て実施されている。以前はノンプロジェクト無償や物資援助も行われていたが、現在は 全ての援助はプロジェクト支援の形を取っている。2001〜2002 年の米国の対インド援 助額は、1
億280
万ドルである98。セクター別では、社会インフラ関連の支援が多く、特に保健や人口プログラムに多くの援助があてられている(表
3-5
)。2003
年から2007
年までの援助戦略で、重点分野とされているのは、以下の5
分野であ る99。経済成長 保健 災害対策
エネルギーおよび水
弱者に対する平等と社会正義の促進
保健分野の支援では、
HIV
に対する取組みやポリオ撲滅、結核予防、予防接種による妊 婦や子どもの健康促進などへの支援を行っている。(4)
ドイツドイツは、インドを
40
年以上にわたって開発協力重点国として位置づけ、支援してき た。ドイツの対インド支援では、貸付が贈与よりも多いが、その比率は他ドナーほどの 開きはない(表3-4
)。セクター別には、農・林・水産セクターとエネルギー・セクタ ーへの配分が高い。また、教育や保健等の社会インフラ支援にも力を入れている(表3-5
)。2000
年以降の支援傾向としては、社会インフラに対する支援が大幅に伸びている ことが特徴として挙げられる表3-7
)。96
DfID (2004) “Partnership for Development, DfID’S Country Plan in India 2004-2008”, DfID
97
DfID India Web-site, Projects and Programmes
(http://www.dfidindia.org/proj/index.asp
)2006
年3
月現在98
Government of India, Ministry of Finance Web-site
(http://finmin.nic.in/foreign_investment/more/external_assistance/index.html) 2006
年3
月現在99
USAID (2002) “The Last Mile: Completing the Development Agenda: USAID India Country Strategic Plan
FY2003-2007”, USAID
表 3-7 ドイツのセクター別対インド支援傾向
2000
年-2004年2000 2001 2002 2003 2004
社会インフラ 48.296 50.215 56.735 75.608 134.039 経済インフラ 2.863 122.949 7.357 15.553 1.914 生産セクター 5.431 27.604 25.355 16.543 12.949
(出所) OECDホームページ(URL: http://www.oecd.org/) のCreditor Reporting System online より、
CRS ODA/OA Disbursements by sectors を用いて作成
技術協力公社(
GTZ
)、および復興金融公庫(KfW)
それぞれの援助重点分野は以下のとお りである。(
GTZ
の対インド援助重点分野100) 経済改革と市場制度開発 保健環境政策、自然資源保護および持続的使用 エネルギー
GTZ
は、中央政府や州と協力して援助を行っているが、特にヒマーチャル・プラデー シュ、ラージャスターン、 マハーラーシュトラ、西ベンガル、カルナータカといった 地域を重点的に支援している。貧困削減に対する取組みとしては、上記重点分野の「経 済改革」において、貧困層に直接裨益するマイクロ・クレジットおよび農村信用の強化 や、インフォーマルセクター強化のための職業訓練などを実施するとしている。保健分 野では、最も影響を受けているのは農村貧困層と都市スラム住民であるとし、国家レベ ルでの保健改革に加えて、州や地方行政レベルでも支援を行う方針である。さらに、貧 困層の天然資源に対するアクセスを向上することは、農村開発につながるとの考え方に 基づき、「環境政策、天然資源の保護や持続的使用」に対して取組んでいくとしている。(
KfW
の対インド援助重点分野101) エネルギー財政
環境保護および資源管理 保健・家族計画
上記重点分野のうち、「環境保護および資源管理」では、資源管理を通じた貧困削減を 目指しており、
GTZ
とともに、マハーラーシュトラ州を対象として重点的に支援して いる。「保健・家族計画」に関しては、農村の基礎保健施設拡充やポリオ撲滅、NGO
を 通 じ た 避 妊 具 販 売 プ ロ グ ラ ム (Family planning through programmes to market contraceptives via non-governmental organizations
)などを行っている。また、インドでは 多くの人々が安全な飲料水を手に入れることができず、水系感染症の罹患率が高いこと から、水供給関連の支援も行っている。水分野への支援においては、既存の設備が維持 管理不足のために使えなくなっていることや、地下水が過剰に汲み上げられていること などをふまえ、環境と経済性を考慮した希少な水資源管理を推進している。(
GTZ
がインドで行っているプロジェクトおよびプログラムは別添6
を参照。)100
GTZ India Website (http://www.gtz.de/en/weltweit/asien-pazifik/607.htm) 2006
年3
月現在101
KfW Entwicklungsbank India Website (http://www.kfw-entwicklungsbank.de/EN_Home/) 2006
年3
月現在(5)
オランダインドに対しては、貸付よりも贈与を中心とした支援を行っている(表
3-4
)。セクタ ー別では、教育や水・衛生、政府・市民社会などの社会インフラ関連に援助の半分をあ てている(表3-5
)。オランダは、持続的貧困削減を対インド援助の基本目的としている。
1999
年以前は、インド全域を対象とした援助重点分野を定めていたが、インド政府との緊密な協議の結 果、
1999
年以降はアーンドラ・プラデーシュ、グジャラート、ケーララを援助重点地 域として、それぞれに重点分野を決めている。地域ごとの重点分野は以下のとおりであ る102。アーンドラ・プラデーシュ:水、教育に焦点をあてた都市環境および農村開発 グジャラート:農村地域の水供給と衛生、教育、保健
ケーララ:水資源管理、地方自治の強化