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1 記述式問題から明らかになった課題

 算数科においては,言葉や数,式,図,表,グラフなどを用いて,筋道を立てて説明し たり論理的に考えたりして,自ら納得したり,他者を説得したりできることが大切である。

そこで,算数科の主として「活用」に関する問題において,以下の3種類の記述内容にか かわる問題を出題している。

 過去4年間の記述式問題の平均正答率は 35.5%(P48 表 4 参照)であり,課題が大きい ことがうかがえる。例えば,平成 19 年度全国学力・学習状況調査【小学校】報告書では,

次のように,記述式問題についての課題を報告している。

 上記の課題を見ると,記述に関する形式的な面のみならず,P27 から論考してきた課題 として考えられる内容の両面から指導の改善が求められることが分かる。

 ここでは,次の設問を取り上げて説明する。

【理由の説明として不十分な反応が多かった問題の例】

 次ページの図 9 は,平成 20 年度算数 B 1(2)の問題及び解答類型と反応率である。この 問題は,与えられた情報を整理したり選択したりして,筋道を立てて考え,示された判断 が正しい理由を式と言葉を用いて記述できるかどうかを見るものである。本問題の誤答に ついて見ると,戸棚を置くことのできる幅(120cm)のみを書いている解答,幅が最小にな る二つの戸棚を置く場合について調べる説明のみを書いている解答など,理由の説明が不 十分な解答類型 6 の反応が 25.3%と最も高かった。

 このことから,判断の正しさを説明する場合には,理由として必要な事柄をもれなく示 した上で,理由と結論を明確にして述べることが,学習指導に当たって大切なことになる。

■「事実」を記述する問題

 「事実」を記述する問題では,計算の性質,図形の性質や定義,数量の関係の記述を求めること,表や グラフなどから見いだせる傾向や特徴の記述を求めることが考えられる。また,「事実」を記述する際に は,説明する対象を明らかにして記述することが求められる。

■「方法」を記述する問題

 「方法」を記述する問題では,問題を解決するための自分の考え方や解決方法の記述を求めること,他 者の考え方や解決方法を理解して,その記述を求めることが考えられる。また,ある場面の解決方法を 基に別の場面の解決方法を考え,その記述を求めることが考えられる。

■「理由」を記述する問題

 「理由」を記述する問題では,ある事柄が成り立つことの理由や判断の理由の記述を求めることが考え られる。また,「理由」を記述する際には,「A だから B となる」のように,A という理由及び B という 結論を明確にして考え,それを記述することが求められる。さらに,理由として取り上げるべき事柄が 複数ある場合には,それらを全て取り上げて記述することが求められる。

○ 必要な事柄を示して,面積が等しいことの理由を説明することに課題がある。

○ 計算の工夫を理解し,その計算方法を説明することに課題がある。

○ 地図上に複数の図形を見いだし,必要な情報を取り出して,面積を比較し,説明することに課題が ある。

○ 言葉の式を読み取り,式の形に着目して計算結果の大小を判断し,根拠を明確にして説明すること に課題がある。

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2 指導改善のポイント

 記述式問題は,「数量や図形,数量関係を考察して見いだした事実を確認したり説明したり すること」,「問題を解決するために見通しをもち,筋道を立てて考え,その考え方や解決方 法を説明すること」,「論理的に考えを進めてそれを説明したり,判断や考えの正しさを説明 したりすること」といった大切にしたい算数科の学習活動に基づいて設定している。そこで,

記述式問題から明らかになった課題に対する指導改善のポイントとして 2 点述べる。

(1)解答類型に基づいた実態把握

 本調査においては,児童の解答状況を分析するために,正答,予想される誤答・無解答を分 類して,最大で 10 の類型を設定している。指導改善に当たっては,解答類型に基づいて,児 童の解答の状況を詳細に把握し,きめ細かな指導の方策を考える必要がある。その際には,正答・

誤答の解答状況を基に,児童の問題や内容に対する理解の程度を把握したり,正答例の記述 を参考にしたりして,日々の授業に計画的・継続的に言語活動を位置付けることが大切である。

(2)活用の観点に基づいた指導の工夫

 算数科の主として「活用」に関する問題においては,次の観点から調査問題を作成している。

 ・ 物事を数・量・図形などに着目して観察し的確に捉えること

 ・ 与えられた情報を分類整理したり必要なものを適切に選択したりすること  ・ 筋道を立てて考えたり振り返って考えたりすること

 ・ 事象を数学的に解釈したり自分の考えを数学的に表現したりすること など

 記述式問題から明らかになった指導の改善に当たっては,知識・技能等が活用される状況 として,上述の観点を基に,学習活動を構想し,日々の授業に取り入れることが大切である。

 上述の 2 つのポイントは,全国学力・学習状況調査【小学校】報告書の「学習指導に当たっ て」及び全国学力・学習状況調査小学校の結果を踏まえた授業アイディア例に掲載してい るので,参照いただきたい。また,算数科においては,中学校の学習を見据えた指導も大 切になる。過去 4 年間の全国学力・学習状況調査の中学校数学の課題も併せて参照いただき,

指導改善に生かしていただきたい。

たか子さんは,3つの戸だなの中から2つを選び,下の図のように,ドアが 当たらない場所に置きたいと考えています。2つの戸だなは,後ろ側を北側 のかべにつけて,机の横に並ならべて置きます。

たか子

すると,たか子さんのお姉さんが,次のように言いました。

3つの戸だなの中から,どれとどれを選んで置いても,

ドアを開け閉めすると,戸だなに当たってしまうね。

お姉さんが,3つの戸だなの中から,どれとどれを選んで置いても,ドア を開け閉めすると,戸だなに当たってしまう」と言ったことが正しいわけを,

式と言葉を使って書きましょう。

小算B− 3

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図 9 平成 20 年度調査問題算数 B 1(2)の設問及び解答類型と反応率

【参考】

 本項では,小学校算数の過去4年間の調査結果について,(1)問題冊子別,(2)4領域別,

(3)問題形式別に正答率を比較し,考察する。

 はじめに,過去4年間の調査結果において,相当数の児童ができている内容として報告 したものを整理すると,次のようになる。

(1) 問題冊子別の平均正答率の比較

 過去4年間における A と B の問題冊子別の平均正答率を比較すると,表1のようになる。

表 1 過去 4 年間における A と B の問題冊子別の平均正答率の状況

 表1を見ると,過去4年間の A の平均正答率が 76.9%に対して,B の平均正答率が 55.0%と低いことが分かる。このことから,A よりも B に課題があることがうかがえる。また,

A についても平均正答率は 80%を下回っており,良好とは言い難い。

領域 年度 相当数の児童ができていると明らかになった内容

数と計算 H19

H20 H21H22

(A)整数,小数,分数の四則計算 (A)整数,小数の四則計算 (A)整数,小数,分数の四則計算 (A)整数,小数,分数の四則計算

量と測定 H19

H20H21 H22

(該当の内容はなし)

(A)基本的な平面図形の面積の求め方 (A)長さについての感覚を身に付けること (A)示された角の大きさを求めること 図  形

H19H20 H21H22

(A)三角形や平行四辺形の性質を理解し,角の大きさを求めたり作図したりすること

(該当の内容はなし)

(A)平行四辺形の向かい合う辺の長さが等しいという性質の理解 (A)立方体を展開図から構成すること

数量関係 H19

H20 H21H22

(B)棒グラフから数量の大小や変化の様子を読み取ること (A)円グラフを読むこと

(該当の内容はなし)

(B)円グラフから必要な情報を読み取ること

年度 区分

A「主として『知識』に関する問題」 B「主として『活用』に関する問題」

問題数(問) 平均正答率(%) 問題数(問) 平均正答率(%)

平成 19 年度 19 82.1 14 63.6

平成 20 年度 19 72.3 13 51.8

平成 21 年度 18 78.8 14 55.0

平成 22 年度 19 74.4 12 49.6

過去4年間の平均 18.8 76.9 13.3 55.0

※ 1 問題数は,設問数の合計である。

※ 2 平成 22 年度の平均正答率は,95%の確率で全員を対象とした調査(悉皆調査)の場合の平均正答率が含まれる範囲で ある。A の信頼区間は 74.2%− 74.6%,B の信頼区間は 49.4%− 49.8%である。

※ 3 平均正答率は,国・公・私立学校において,ある一定の期間に調査を実施した児童数を対象としたものである。

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 次に,過去4年間の各年度における A と B の問題冊子それぞれの正答率を比較すると,

表2及び表3のようになる。

表 2 過去 4 年間における A の問題冊子の正答率の状況

表 3 過去 4 年間における B の問題冊子の正答率の状況

 表2を見ると,A の平均正答率は,平成 19 年度を除いて,80%を下回っていることが分 かる。正答率が 70%以上の問題は各年度において半数を超えているが,知識・技能として 定着していない内容が少なくないことに注意する必要がある。特に平成 20 年度〜 22 年度 においては,正答率が 70%未満の問題数が全体の問題数の1/3以上になっている。A の 出題内容は,身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす,土台となる 基盤的な事項であり,改善が求められる。

 また,表3を見ると,B においては 70%未満の問題数が半数以上になることが分かる。

70%未満の正答率の問題には,記述式の問題が全て含まれており,思考力・判断力・表現 力等を育成するための言語活動の充実という観点から,改善が求められる。さらに,B の 正答率が A と比べて下回ることは,知識・技能に課題があるがゆえに,それを様々な場面 に活用することに課題があることは必然であり,A と B を一体として改善することが重要 となる。

区分 問題数 70%未満

の問題数

70%以上 80%未満 の問題数

80%以上

の問題数 平均正答率

(%)

平成 19 年度 19 3 4 12 82.1

平成 20 年度 19 6 5 8 72.3

平成 21 年度 18 6 4 8 78.8

平成 22 年度 19 6 3 10 74.4

区分 問題数 70%未満

の問題数

70%以上 80%未満 の問題数

80%以上

の問題数 平均正答率

(%)

平成 19 年度 14 9 2 3 63.6

平成 20 年度 13 10 0 3 51.8

平成 21 年度 14 10 2 2 55.0

平成 22 年度 12 11 0 1 49.6