第3章 分析データ及び研究方法
4.3 日本語における言いさし文の質的分析
4.3.1 言いさし文の機能
同じ言いさし文でも、談話においてそれぞれ違う機能を果たすと考えられる。李恩美 (2008)は言いさし文を中途終了型発話と呼び、その機能を「働きかけるタイプの発話(情 報要求、情報伝達)」と「反応するタイプの発話(情報応答、あいづち)」に分け、次の表 4-4のように示している。各々の例の具体例は例4-10から例4-14である。
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表4-4 李恩美(2008)による言いさし文の機能
情報要求 (Q:Question)
相手から何らかの情報を引き出そうとす る発話「ですか?」などと明らかに疑問形 式で相手に働き掛けているもの以外にも、
相手の言った内容の分からない部分を確 認して聞き出すための発話も、情報要求と みなす。
情報伝達 (S:Statement)
自分から何らかの情報を伝えることで相 手の反応を引き起こす発話。話し手が自分 の持つ情報や意見、感想などを自ら積極的 に伝達するものである。
情報応答・情報提供 (A:Answer)
相手の情報要求発話に対して情報で応答 する発話。対話相手の情報要求に対して情 報を提供するものである。
あいづち (B:Backchannel)
相手の情報伝達発話に対して反応を示す 発話。相手の情報伝達や、情報応答に対し て、「聞いている」「理解している」という ことを表したりすることによって、働き掛 けるタイプの発話(情報要求、情報伝達)に 反応しているものである。
その他 (O:Others)
独り言や、相手の発話に割り込まれること によって途中で終了された発話で、その発 話の機能が分からない発話などがある。
李恩美(2008:132-133)
例4-10 情報要求(Q:Question)
BM03 え、もともとずっと東京で…?。 Q YM01 そうですね、生まれが東京で、大学のときにあのー茨城県のほうに、(あー)行 ってました。
李恩美(2008:141)
56 例4-11情報伝達(S:Statement)
BM03 で、それは今度ちょっとぜひぜひ車をとばして行ってみたいっていう…。 S
SF01 うんうんうんうんうんへー。
李恩美(2008:141)
例4-12 情報応答・情報提供(A:Answer)
OF01 丙午って、結構20、20、あ30ぐらいの方でしたっけ。
BM01 えーといまちょうど、そ、えーと、だいたいその36になる年…。 A 李恩美(2008:141)
例4-13 あいづち(B:Backchannel) BM02 九州は、どこですか?。
SM01 あの、北九州の、隣にある、直方ってところがあるんです。
BM02 北九州、市…。 B SM01 そうですね(ああ)、はい。
李恩美(2008:142)
例4-14 その他(O:Others)
SF03 ええ、特にあの、今留学してますよね、(ん)ポストンほかに。
SF03 <それで…>{<}。 O
BF08 <帰ってくる>{>}と違うって感じですか?
SF03 そうですね、向うだと完全に服装とかたぶん厳しくなく、自由にやってると思う
んですよ。
李恩美(2008:142)
上記の李恩美(2008)の分類では、相槌を言いさし文の機能としているが、本研究は実 質的発話のみを対象とするため、相槌は分析から除外する。また、李恩美(2008)と異な り、割り込まれて中断された発話は言いさし文とは認めず、「情報要求」、「情報伝達」、
「情報応答・情報提供」以外の機能は「その他」に分類する。したがって、上記の李恩 美(2008)を参考にして、言いさし文の機能を主に「情報要求」、「情報伝達」、「情報応答・
情報提供」の三つの項目に分類する。また、分析対象を下線で示し図示すると、次の図
57 4-1のようになる。
図4-1 発話の分類
本研究では、以上の基準に基づき、言いさし文の分析を進める。次節では、言いさし 文における各機能の使用状況について調べる。