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第3章 分析データ及び研究方法

4.3 日本語における言いさし文の質的分析

4.3.4 文末におけるぼかし表現

4.3.4.1 分析対象

本研究では、陳一吟(2013)、王(2015)を参考にし、以下の表現が文末に出現するもの を分析対象とし、品詞ごとに次の表4-13で示す。

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表4-13 文末の品詞の種類及びその内訳

文末の品詞種類 内訳

名詞 感じ、みたいな感じで5、等

副詞 なんか、なんかに6、等

助詞 とか、とかも、たり、等

て形 かなと思って、気がして、等

その他 みたいな、ような、的な、等

また、ぼかし表現の認定については、同じ「て形」で終了していても、引用助詞とし て使われる「って」と動詞が前置した「思って」などの「て形終了」は区別する。さら に、文脈などの要素も考慮して、同じ言語表現であっても、ぼかし表現として捉えられ るものと捉えられないものがある。それらは例4-43、例4-44を参照されたい。

ぼかし表現として捉えられないもの 例4-43

3-184-JFF だからで今局会式してるんですよ、あれが。

3-185-JFG ああ、なるほど。うちの研究室の後輩も…。

3-186-JFF えっ、誰ですか?

3-187-JFG ○○さん。

3-188-JFF はい、知ってます。あの。広報局なんか、はい。

3-189-JFG ああ、本当?

3-190-JFF なるほど、えっ、なにけ、研究室って?① 3-191-JFG あ、中国文学研究室。

例4-43では、JFFとJFGは共通の知り合いについて確認している場面である。JFF は①のところで「って」でその共通の知り合いの所属研究室を JFGに聞く。この「っ て」は不明瞭な点を聞き手に問い返す役割を担っている。守時(1994:93)はこの「って」

について以下のように説明している。

5 文末に「で」で助詞終了しているが、本論文においては名詞終了に分類している。

6 文末に「に」で助詞終了しているが、本論文では副詞終了として取り扱っている。

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談話は、談話に参加している人がお互いの発話を理解し合あいながら進めていくもの であるから、何らかの原因で理解が阻害された場合は、談話を続行することが不可能に なる。このとき、問題になっている表現をマークするのが「ッテ」であり、言葉自体の 意味や発話意図を尋ねるのである。

守時(1994:93)

したがって、ここでの「って」は発話内容をぼかす機能を持っておらず、むしろ肝心 なところを浮かび上がらせる提題の用法だと考えられる。

例4-44

5-97-JMJ いや、実はマクダビットですね。誰か、手袋使うじゃないですか、打つ時。

5-98-JMK うん。

5-99-JMJ それになんか、そういう風に巻きつけて、なんかフィット感アップさせて、

なんか力入れるようにする、(えー)それはマクダビットです。

5-100-JMK あれ、試合つけてもいいと?

5-101-JMJ つけていいです。なんか、ここに、つけるやつですね。なんか、スリルが ちょっとだけあって、力入るらしいですよ。いい感じ。①

例4-44は、JMJとJMKがスポーツ用品について話している場面である。JMJはマ クダビットというスポーツ用品のブランドをかなり推奨しており、①の発話の「感じ」

は使い心地の良さについて言っているので、ぼかしとしての機能は果たしていない。

例4-45

2-75-JFC て言うかね、お姉ちゃんがね、20歳上の人と結婚するかも。①

2-76-JFC 大丈夫なんかいなぁ。

例4-45では、JFCは自分のお姉さんの結婚に対する心配を口にしている。①で使っ ている「かも」は結婚ということの可能性を示すと思われるので、ぼかしとしては捉え ない。

ぼかし表現として捉えられるもの

77 例4-46

3-86-JFG なんか理系だったら、もう、技術(あ、あ)なんか、企業が求めてるから、(な

るほど)やっぱ九大生、(うーん)なんか、結構XX重宝されてるっていうか…

3-87-JFF なんか、九州内は九大の地位はすごい高いらしいですよ。

3-88-JFG うーん。九州内では。

3-89-JFF (笑い)九州内では。

3-90-JFG (笑い)文系だと、やっぱり、なんか、文系だと、何も、技術とか、(おー)

特別な知識、九大生だから、何か持ってるっていう(うーん)ものがないから、なんか面 接次第っていう感じ、(おー)そこまでなんか九大生だからっていう感じない。① 3-91-JFF うーん、なるほど。なんかもう、院行くか行かないかどうしようかなって。

例4-46では、JFFとJFGが就職のコンプレックスに関して話題にしている。JFGは

①で、たとえ九大の学歴を持っていても、文系である以上企業に就職するにはそれほど 有利ではないという自分の意見を述べ、それを聞いた JFF は②で就職するより、進学 など別の進路でも考えようかなと自分の悩みを打ち明けている。この②の文末に使われ ている「って」は、守時(1994:94)が、「自分の発言に無責任そうだとか、語調が弱まっ ているなどという印象を受ける」と見なすものである。したがって、この「って」は、

発話内容をぼかし、JFFの心内の躊躇を表し、ソフト化を狙っている機能を持つと考え る。

例4-47

2-112-JFC やけん、すごい、今日家が騒がしかった。

2-113-JFD マジ?

2-114-JFC うん、どうなるっちゃろうって感じ。①

例4-47 では、JFCは家庭の事情のため今日は家が大騒ぎであったことを JFD に話 している場面である。①に見られる「感じ」を省略しても発話全体の意味は変わらず、

自分自身の気持ちをそのまま直接的に表現するのではなく、まるで傍観者のような観点 から述べており、言語行動をぼかす機能を果たしている。

78 例4-48

5-242-JMJ そうですね。N棟は永遠卒業しなさそうな人いますし。

5-243-JMK 永遠卒業しなさそうな?

5-244-JMJ はい。

5-245-JMK 俺かも?①

5-246-JMJ いやいや、○○さんじゃないです。○○さんとか。

5-247-JMK ○..

5-248-JMJ ○○さんとか、XX20さんとか 5-249-JMK はははは

5-250-JMJ はははは

例4-48では、JMJがJMKにN棟に大学卒業できない人間がいると伝えている場面 である。JMK は①のところで「かも」をつけて自分のことを指しているのかと JMJ に反問している。実際には、この「かも」をとっても相手に伝える話しの内容は変わら ないが、「かも」をつけることによって、発話を和らげ、少し自虐的なユーモアで話し 相手の笑いを誘い、会話の盛りあげを図っていると考えられる。