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第3章 分析データ及び研究方法

4.1 分析方法

元(2005)では、佐藤勢紀子(1993)と陳文敏(2001)の研究をもとに、文末省略の機能を 以下の三点にまとめた。

①冗長性を減らす

②相手に対して配慮する

③会話のやりとりを円滑にする

上の元(2005)があげた三つの機能のうち、①はどの言語においても適用する基本的な 機能だと考えられ、②は日本語の言いさし文を論じる際に最も多く指摘されている特徴 であるが、本研究では、共話における日本語雑談場面で用いられた言いさし文を探求す るため、言いさし文を③の観点から捉え、分析を行う。

4.1.2 分析対象

分析に当たっては、伊集院(2004)を参考にして、発話を実質的発話と相槌的発話の二 種類に分け、主に実質的発話のみを分析対象とする。伊集院(2004)では、応答詞(例「は い」「うん」「そう」)や感動詞(例「えっ」、「あれっ」)だけの発話、笑い声のほか、先行 する発話をそのまま繰り返す、オウム返しや単純な聞き返しの発話など、聞き手に判断・

要求・質問などの積極的な働きかけをしない発話は全部相槌的発話としている。また、

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日本語の言いさし文では、話者は「のに」で文末を言いさし文にし、自分の心情を吐露 し、独話をすることも考えられる。さらに、日常会話では、「学校へ行って」などのて 形終了のような積極的に相手に働きかけないタイプの言いさし文もよく耳にする。また、

伊集院(2004)では、単純な聞き返しは相槌的発話とするが、詳細については述べていな い。一口に聞き返しと言っても、次の例4-1と4-2のように、相槌的発話として聞き返 しの形での感情の表出は可能であるし、実質的発話として相手に確認することなどのよ うな積極的な働きかけも考えられる。

例4-1

6-115-JMLえ、って、長崎ってさ、なんか、普通に発砲事件とかあるしょう?

6-116-JMMないですね。

6-118-JML まじ? 【相槌的発話:感情の表出】

例4-1では、治安についての話である。JMLはJMM に長崎の治安に関して、発砲 事件が頻繁であるかどうかについて聞き、JMM の答えに反応して、「まじ」で自分の 驚きの感情を表す。堀口(1997:60)は、こうした「感情の表出」を表す相槌的発話は、「聞 き手のこのような心理的な反応によって、話し手は聞き手がただ聞いてるだけではなく 心理的にもコミュニケーションに参加しているということがわかる。またこの聞き手の 反応をもとにして、話し手はさらに話を発展させることもできる」と指摘している。

例4-2

3-153-JFGおー、何か作れるようになりたい?

3-154-JFFそれは、しょうが…、おせち料理ですか?

3-155-JFGうん。

3-156-JFF なんか、伊達巻?

3-157-JFG 伊達巻? 【実質的発話:確認】

3-158-JFF えっ?伊達巻なんて、えっ、伊達巻?

3-159-JFGだ..(えっ)卵なんか?

3-160-JFFはい。

例4-2は、JFFは作れるようになりたいおせち料理をJFGに話している場面である。

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JFGは料理の名前はよく覚えておらず、「伊達巻?」とJFFに確認している。それを聞 いたJFFも確信を持っていないため、また確認のためJFGに聞き返した。JFFは話の 中で理解できなかった部分を納得がいくまで聞き返し、確認の作業をしている。

上記のような用例の取り扱いを考慮に入れた上で、本研究では、実質的発話と相槌的 発話をそれぞれ次のように定義し、実質的発話のみについて分析を行う。

①実質的発話

杉戸(1987)を参考にして、「判断、説明、質問、回答、要求など事実の叙述や聞き手 へのはたらきかけをする発話」とする。

②相槌的発話

本研究ではメイナード(1993)、堀口(1997)などを参考にして、相槌を次のように定義 する。

「話し手が発話している間に、または発話終了直後に、ほかの会話参加者から自主的に 送られてきた情報共有の表現、また話し手の発話内容に対する理解や感情などを示す発 話」

4.1.3 言いさし文の分類及びその認定について

文末形式の種類によって、「名詞終了」、「副詞終了」、「助詞終了」、「て形終了」の四 種類に分け、これらの四種類のいずれにも属さないものは「その他」の範疇に入れる。

また、言いさし文の種類を分類する際には、基本的に文末の品詞を基準にして、判断を 行う。しかし、以下のような場合は、文末だけではなく、品詞の全体的な構造も考慮に 入れる必要がある。

①「うちのお母さんは私に甘いんで。」のような「の」の母音削除により、「の」が「ん」

になっているが、文末の分類では助詞として認定する。

②「俺的に」、「確かに」、「まじで」、「意外と」などのようなものは副詞として取り扱う。

③「読んで」のようなて形と「自転車で」のような格助詞の「で」を区別する。

④副助詞の「って」と「行って」のように促音化するて形の「て」を区別する。

⑤副助詞の「って」と終助詞の「だって」を区別する。

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⑥「私が」のような格助詞の「が」と「行きたいですが」のような接続助詞の「が」を 区別する。

⑦「どこから」のような場所・起点・時を表す格助詞の「から」と「行きたいから」の ような順接確定条件を表す接続助詞の「から」を区別する。

⑧「雪が降ると」のような接続助詞の「と」と「友達と」のような格助詞の「と」を区 別する。

各文末形式に関する説明と具体例は次の4.2.2で詳しく述べる。