• 検索結果がありません。

中国語の共話について

第 5 章 言いさし文についての日中対照研究…

5.4 日中両言語の共話について

5.4.1 中国語の共話について

135 例5-25

4-2-TFE 欸,我們真的要,畢業旅行去韓國吧?

4-3-TFB 講畢業旅行會不會太早啊?

4-4-TFE 你說的啊,你講的啊 4-5-TFB 欸,這,要去___

4-6-TFF 我們才大二還有很久不用擔心好不好

4-2-TFE あの、本当に、卒業旅行韓国行こうか。

4-3-TFB 今卒業旅行のことを考えるのはまだ早いんじゃない?

4-4-TFE そっちが先に言いだしたんじゃない?

4-5-TFB えっ、(卒業旅行)行くことを…①

4-6-TFF まだ大学二年だから、そんなに心配しなくていいよ。

(筆者訳)

例5-25は、TFB、TFE、TFFの三人が卒業旅行を話題にしているものである。TFE は卒業旅行の場所を韓国にすると提案しているが、TFB は先のことのため今から計画 するのはまだ早いと異論を出している。それを聞いた TFEはそれを最初に話題として 言いだしたのはTFB自身ではないかと反論し、問い詰められたTFBは「(卒業旅行)行 くことを」までで述語を省略して発話を途中で終了し、TFF はその続きを補足し、こ の会話を完成させている。この会話では、TFB が①で言いさし文にしたのはそれが前 に言った「今卒業旅行のことを考えるのまだ早いんじゃない?」のリピートからである。

これは次の TFFの補足発話の「まだ大学二年だから、そんなに心配しなくていいよ。」

からも分かる。以上の例から、中国語の言いさし文は、日本語の言いさし文のように同 調を示し、親近感を形成し、会話の雰囲気を和ませるような機能はないことが分かる。

したがって、日本語の言いさし文のほうが、人間関係との関わりがより強いと言えるで あろう。次に、日中両言語の言いさし文が会話形態にどのような影響をもたらすのかに ついて分析してみる。

5.4 日中両言語の共話について

136

一人が自分の話を終わりまで述べて、次に他の一人が改めて自分の考えを述べ始める より、二人が互いに補い合い、はげまし合いながら話の流れを作っていく態度が基本に なっている。この意味では、dialogue(対話)という語はふさわしくない。対話ではなく、

共話とでも言いたいような形である。共同して話を作るのであるから、いわゆる完全文 は必要ではない。

水谷信子(1980:32)

上記の水谷信子(1980)の指摘から、言いさし文の使用は共話の形成と緊密な関係を持 っていることが確認できる。したがって、言いさし文の多用は日本語の会話形式が主に 共話であるためだと考えられる。一方、中国語では、5.2.2 の調査結果によると、言い さし文の出現頻度が 8%しかなく、日本語の 37%の約五分の一に過ぎない。換言すれ ば、中国語の会話は、ほとんど完全文で構成されているということである。つまり、中 国語の会話形態は「対話」ということである。とはいえ、中国語における言いさし文は、

共話とは何の関連もないだろうか。管見の限り、この点について言及した先行研究はま だない。そこで、本節では中国語の言いさし文と共話との関わりについて論じる。

本節では、まず最初に中国語の共話の例を示し、5.4.2 ではそれを日本語の共話の例 と比較し、両者の相違点を明らかにする。5.3.2.1では、中国語の言いさし文において、

もっとも顕著に見られるのは「述語欠落」であることが確認された。以下、中国語の共 話における言いさし文の実態を見る。

例5-26

3-56-TFB 你吃不膩嗎?你在家裡面不是也中午吃麵嗎?

3-57-TMD 外面不一樣啊,味道不一樣啊,味道比較…① 3-58-TFB 有味道一點嗎?

3-59-TMD 比較鹹,比較重,比較…

3-60-TFB 你不是喜歡淡口味的?嗯

3-56-TFB 飽きないの?自宅でもいつも昼食でそばを食べてるじゃん?

3-57-TMD 外食は違うよ。味が違うよ。味が比較的…① 3-58-TFB 味が濃い?

3-59-TMD 味がよりしょっばくて、重くて、より…

137 3-60-TFB 薄い味のほうが好きじゃないの?

(筆者訳)

例5-26では、TMDとTFBが昼食のメニューについて話している。TFBはTMDに お昼いつもそばを食べているのに飽きないかと聞き、TMDは①で「外食の味は自宅と は違って、味が比較的」のところで一旦発話を終了し、TFB は理由を確認するため、

TMDの発話の続きを引き取り、「味が濃い」と確認の発話を行っている。この発話例で は、結束性をもつ共話例として、後行話者が先行話者の未完成の発話を補足し、完成さ せている。一方、先行話者が言いさし文をした後に、後行話者が先行話者の発話をほぼ そのまま繰り返し、最後にまた先行話者が文を完成させる共話の例もある。例 5-27を 見られたい。

例5-27

3-1-TMD 跟你說…那老師

3-2-TFB 那個老師,阿可是,老師就是…

3-3-TMD 那老師是我們叫裡面唯一一個男老師 3-4-TFB 真的喔?阿他是你們幼教老師喔?

3-1-TMD その先生については…

3-2-TFB その先生、あ、でも、先生は…

3-3-TMD その先生はうちの幼児教育学科の中のただ一人の男性の先生。

3-4-TFB 本当?じゃ彼はあなたたちの幼児教育の先生なの?

(筆者訳)

上記の例では、先行話者であるTMDが述語を省略し、後行話者のTFBはその続き をほぼ同じ内容で繰り返し、そのあと再び最初の話者TMDが会話全体を完成させてい る。これまで、中国語の会話は、完全文で構成されることがほとんどであり、言いさし 文はその内容が相手にとって明白の時のみ起こると考えていた。しかし、例5-26では、

後行話者のTFBが「味が濃い?」と先行話者に確認の発話を行っている。また、例5-27 のように、最初に言いさし文が提示されるものの、相手がそれを受ける情報を持ち合わ さないため、結局、言いさし文を提示した者が会話を完成させるといった例もある。こ のことは、中国語の共話における言いさし文において明示されることのない後続部分は、

138

必ずしも相手にとっては既知ではないということを示唆する。以上、中国語の会話にお いては、日本語の会話と同じように、言いさし文が対話者の発話を誘発する機能を持っ ていることが確認できた。、その誘発率、また共話形態の異同に関しては次節 5.4.2 で 述べる。