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要約と課題

ドキュメント内 容のメカニズムに関する計量分析 (ページ 127-132)

教育達成に対する親学歴の効果はどういう条件で変化するのか。また、そのとき変化す るのは、効果のどの側面なのか。これらの疑問に答えるために、本章ではトランジショ

6.5 要約と課題 117

コココココ

パ パ パ パ パ 推 推 推

-0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

1930-38

1939-48

1949-58

1959-68

1969-78

1979-88

直直直直(2.6) 移移直直(2.8

6.3 直線効果と移行効果の時代による差異

ン・モデルにより、親学歴の段階的効果の有無と、その変化について検討した。

その結果、高校進学率の上昇が上限に達し、新制教育を受けた親が多数派になるコー ホートで親学歴の非線型の効果——「成功確率」と「便益」にかんする仮説が想定する段 階的なパターン——が顕現することを確認した。こうした教育社会の変化により、親学歴 の影響力が部分的に拡大する動きは、「成熟学歴社会」の議論と一致する。

ただし、それは吉川(2006)が主張するような大卒/非大卒境界の重要性の高まりとして ではなく、教育達成過程のすべての段階でおきていた*15。親と同等以上の学歴を達成す るまでは、学校教育を継続する見込みが大きいという力学は、中等/義務、高等/中等、大 学/短大のどの対比を取りだしても成立する。そして、この力学は一部の対比においてよ り強く作用しているわけではない。

しかしながら、「成熟学歴社会」の展開が機会の不平等構造を変えなかったのではない。

親学歴の直線効果は後の移行になるほど低下する。古いコーホートでは、この直線効果し

*15この解釈は親学歴と出生コーホートとの相互作用効果を調べたモデルに依拠している。移行に対する非線 型の効果は一部のコーホートでしか見られないこと(6.3)、そして吉川(2006)は学歴下降回避の力学が あらゆる時代で作動するわけではないと想定していたことをふまえ、ここでは表6.4にもとづき議論をす すめるのが順当だと考えた。

か働いていないため、大学進学に親学歴が与える影響力は、高校進学に比べて非常に小さ かった。そこに移行効果が加わる新しいコーホートでは、大学進学の段階でも一定の不平 等が生じている。移行効果はそれ以前の学校段階にも加算されるので大学進学の機会だけ が不平等化するわけではないが、上記の過程で機会構造が複層化したため、過去から現在 にかけて大学進学機会の不平等が実質化しているのである。

移行非依存的な親学歴効果の発見は、既存の業績に対して理論的な示唆を提供する。親 学歴の効果の一部は学業成績や物質的な資源 (Teachman 1987)を媒介したものである。

そのような効果は移行がすすむにつれて低下すると、先行研究で指摘されてきた (Mare 1981; M ¨uller & Karle 1993)。これに対して親の教育経験に附帯する「成功確率」と「便 益」の効果は、どの移行段階でも安定的に作用するというのが本章の結論である。

親と同等の学歴をえたいと思う願望や、親が自身の経験から取得した知識・情報は、親 の属性に固定された特性であり、生徒側の特性と直接は関係しない。このため、教育の各 分岐点で (学力や意欲などが)ある水準以上の生徒を選抜しても、親側の特性について同 質性が高まらないのは当然である(差別的選抜仮説)。あるいは、成長した生徒は家族の資 源に対する依存が、ある程度は低下するかもしれない。ただし、その場合も親の経験が、

どこまでも客観的な制約として教育達成の条件を有利にしたり不利にしたりすることはあ るだろう。生徒の自立性が向上しても、家族の影響力が不変のまま残る部分はあるといえ る(ライフコース仮説)。

もちろん、こうした可能性は先行研究において、すでに論及されてきた事柄である。親 学歴効果を直線と移行の成分に分解し、後者が不平等生成の第2次効果をモデル化したも のとして解釈可能だと示した点に、本章の意義がある。このような経験的な仕事により、

従来の理論を再考する手がかりがえられたといえるだろう。

本章の知見に対する第1の留保は、親学歴の非線型の効果として「成功確率」と「便益」

のいずれが主要な役割を果たしているのかが明らかでないことである。さらに後者につい ては本章が想定したような学歴に特有の「便益」が存在するという直接の証拠はない。親 学歴の効果にかんしては、少なくとも親と同じ職業的地位に到達するためには、親と同程 度の学歴達成を目指すのが合理的との行動規範にもとづく仮説を立てることが可能である (van de Werfhorst & Andersen 2005; van de Werfhorst 2009)。これらの複数の力学の うちどれが妥当かを明らかにするためには、今後も統計的な研究を継続していく必要があ る。最終的な学歴が定まる以前の個人の動機や家族の資源状況を新しく調査することも、

6.5 要約と課題 119 ありうる方向性の1つだろう。

第2の留保は、直線効果の変化と移行効果のそれとをじゅうぶんに切りわけられなかっ たことに関係している。本章が報告した後者の変化には、前者の結果が含まれている可能 性がある*16。直線効果の変化にかんする議論は、本章の理論的なスコープをこえている。

線型、非線型にかかわらず、親学歴の効果全体に生じた大局的な変化の理解は、今後の研 究における重要な被説明項である。そうした課題に取り組むうえで、個人の職業的出自と 教育的出自による機会の不平等が、社会のマクロな構造変動とともにどう変容していくの かを問い直すことの大切さを、最後に確認しておく。

*16直線効果と移行効果に同時に出生コーホートとの相互作用効果を仮定すると(6.4のモデル2.7)、両者 が互いの効果を吸収し合い、親学歴の影響力の時間的な差異は検出不可能になる。

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教育行動の時空間比較分析:産業主

義・教育条件・多次元化

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