で、参考までに多項ロジット・モデルで父親の職業を分析してみたところ、出生コーホー トをコントロールすれば、父親の職業の分布に調査の種類によるちがいは存在しなかっ た(G2 = 80.98、df = 75、p =0.298)。回答者の最終学歴についても同じことがいえる (G2 =39.26、df =30、p=0.120)。
さらに父親の職業と回答者の学歴との連関はすべての調査で一定であること (G2 = 62.66、df =50、p=0.108)、回答者の教育年数や移行率に対する調査の種類の効果には 明確な特徴がなく、有意な値も少ないことなどを確認した。これらのことから、調査の種 類が分析結果に与える影響は小さく、個々のデータを統合して分析に使用しても深刻な問 題は発生しないと判断した。
3.2.2 変数の定義
基本的な変数の操作化についても、説明をおこなっておこう。
回答者の学歴は、義務教育、中等教育、短期高等教育、4年制大学の4分類*6を基本に、
各章の目的に応じて複数の指標を使いわけていく。連続変数として扱う場合は、標準的な 教育年数を与える。旧制学歴は、すべて欠損値として処理した。
回答者の社会的出自をあらわす変数には、父親の職業を使う。本章では Erikson &
Goldthorpe (1992)の階級図式とGanzeboom et al. (1992)のISEI (国際社会経済的地位 尺度)にもとづき、職業をコード化*7 する。前者には自営と被雇用の区分、熟練工と半・
非熟練工の区分を1つの変数内で扱えることなど、SSMの職業分類にはない利点がある。
今回はサーヴィス階級(I+II)、ノンマニュアル(III)、自営(IVab)、農業(IVc)、熟練マニュ アル(V+VI)、半・非熟練マニュアル(VIIa)の6分類版を作成し、分析をすすめていく。
社会的出自をあらわすもう1つの変数は、親学歴である。こちらは父親の学歴から義
務教育(1abc)、中等教育(2bc)、高等教育(3ab)を区別する。父親の情報が利用できない
ケースにかんしては、母親の学歴で代替した。括弧内の記号はCASMINの学歴分類に対 応したコードである。分析結果を図表で提示する際には、簡略化のためにこの記号を使用 する。回答者の学歴と同様に、親学歴は教育年数に変換し、連続変数としても扱う。
教育機会の不平等の動向の検討は、回答者の出生コーホートを統制しておこなう。分類
*6高校卒業後に専門学校への通学経験をもつものは、短期高等に分類した。
*7変数のリコードは鹿又ほか(2008)のプログラムを参考にした。
3.2 分析に使用するデータと変数 49
表3.1 主要変数の度数分布
変数 カテゴリ 度数 変数 カテゴリ 度数
最終学歴 義務教育 2362 親学歴 1abc義務教育 7820
中等教育 7032 2bc中等教育 5100
短期高等 3262 3ab高等教育 2750
大学以上 3699 (欠損値) 2300
(欠損値) 1615
出生コーホート 1930-34 850
移行1 1非進学 2367 1935-39 1423
2職業科 4389 1940-44 1790
3普通科II 3544 1945-49 1777
4普通科I 5914 1950-54 1592
(欠損値) 1756 1955-59 1391
1960-64 1219
移行2 1非進学 6934 1965-69 1706
2高等教育 6907 1970-74 2259
(欠損値) 4129 1975-79 1650
1980-84 825
出身階級 I+IIサーヴィス 3272 1985-88 332 IIIノンマニュアル 1324 (欠損値) 1156
IVab自営 3610
IVc農業 3635 性別 男性 8207
V+VI熟練 2023 女性 9758
VIIa半・非熟練 1975 (欠損値) 5
(欠損値) 2131
Note:移行1の結果は高校の学科別(普通科上位=I,普通科下位=II,職業科) に示した.普通科I,普通科IIの正確な意味は次章の本文を参照.
移行2の欠損値には非該当のケース(中等教育への非進学者)を含む.
はほぼ10歳刻みとなるように1930-38年、1939-48年、1949-58年、1959-68年、1969-78
年、1979-88年の6つのコーホートを区別した*8。これにより戦後の教育社会を題材とし
て、約60年間の経験を鳥瞰することができる。
*8学歴変数に合わせて、旧制世代の出生年には欠損値のコードを与えている。
このような区分を設定すると最初の3つのコーホートは高校進学率の急上昇を担った世 代に該当する。大学進学率との関係でいえば2番目と3番目のコーホートが拡大期に、そ の次のコーホート(1959-68年)が停滞期に、そして最後の2つのコーホートが再拡大期に おおむね対応している。なお、時代変化をもう少しこまかく見るときは、各々のコーホー トの前半と後半を分割し、5歳刻みの変数を用意する。
表3.1が本章で使用する主要な変数の度数分布である*9。