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要約と考察

ドキュメント内 容のメカニズムに関する計量分析 (ページ 90-96)

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4.6 隣接ロジット・モデル(ACモデル)による中等教育機会の分析;各コーホート における親学歴の効果

開放化をもたらす「キャリーオーバー効果」をうかがわせる傾向である。教育年数に対す る父職業の効果の低下を、このような平等化の連鎖として解釈することは不可能ではない だろう。

中等教育か高等教育かにかかわらず、移行に対する親学歴の影響力には出身階級のよう な変化が見られなかった。平等化の傾向を支持する分析結果はそれほどえられず、むしろ 親高等と親中等とのあいだで機会の不平等が拡大している可能性が示唆された。

分析に使用する統計モデル(最高教育年数の線型モデルか学校継続のロジスティック応 答モデルか)により、不平等の見え方が異なることは、過去の研究でも指摘されてきた。

それに加えて、社会的出自を職業と学歴のいずれで代表させるかによっても平等化の動き が異なることを、前章と本章においてさまざまな側面から明らかにした。

本章の経験的な分析から、Shavit & Blossfeld eds. (1993)において提示された基本的

4.4 要約と考察 81

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4.7 2項ロジスティック応答モデルによる高等教育機会の分析;各コーホートにお

ける親学歴の効果

な仮説をどのように評価することができるだろうか。

義務教育後の進学先に階級間の差異が認められることは、文化的再生産仮説の主張と一 致する。にもかかわらず、階級と進路オプションとの関係は、長期的に低下している。

実際の進路選択のプロセスとしては、文化的再生産仮説の前提は正しいと思う。優位層 が大学への進学を見据えて、中等教育の段階でより(進学に)有利な「トラック」に移行し ようとするのは常識といってよい。ただし、優位層の行為はこの仮説が仮定するような閉 鎖的な意図を含むものではなく、かれら自身が有利な「トラック」にすすみ、その後、大 学に首尾よく進学することさえできれば、それで目的は果たされたのである。文化的再生 産仮説に依拠して機会の動向を考える際には、支配集団のような集合的行為者の存在を想 定するよりも、あくまで方法論的個人主義の立場から優位層の戦略を解釈していくほうが 適当だということを、あらためて強調しておきたい。

戦後の日本では高度成長期に経済的資源の分配が平等化し、下層の家族の生活水準が上 向いた。加えて、普通科の定員枠の拡充がじゅうぶんだったため、優位層の進学需要を満 たした後でも、さらに入学者を受け入れる余裕があった。要するに、下層階級でも長期の 教育投資が可能になり、またそれを実現するための機会も着実に整えられていったのであ る。こうして下層階級からも進学に有利な「トラック」に移行できるものが徐々に増加し たというのが、本章の暫定的な結論である。

このような議論からも推察できるように、教育達成においては階級間に先行・追走の関 係が存在する。よって、下層の進学率の上昇が相対的な不平等の縮小につながるのは、そ の段階における優位層の進学率が飽和した後になることが多い(Blossfeld & Shavit 1993;

Raftery & Hout 1993)。すると、遅れて進学率を伸ばした集団が(たとえば)中等教育の 学歴を手に入れても、そのときにはすでに肩書の価値が下落していて、学歴の取得が地位 達成に結びつかないケースがでてくる可能性がある。その場合、教育の平等化に社会的不 平等を是正する役割は、あまり期待できそうにない。

その一方で、初期の移行における障壁の低下は、不利な層の出身者に継続的な教育機会 を提供するという点では、一定の効果があると考えることもできる。先行研究が繰り返し 明らかにしてきたように、初期の学校段階では移行率に対する階級の影響力がひときわ強 く、下層出身者の多くがその段階で競争から脱落しているのである。移行のプロセスの積 み重ねが最終的な到達学歴の不平等をつくりだしていることを重視すれば、初期段階での 平等化を過小評価するのは問題かもしれない(Shavit & Westerbeek 1998)。

本章の分析では中等教育の平等化が、教育達成における不平等の緩和にいくらか寄与し ていた。各学校段階における不平等の形成過程の合成から、どのような総合的な不平等が 生みだされるのかについては、引き続き注視していく必要があるだろう。

4.1で提示した予測のうち出身階級の動きをもっともうまく説明するのは、ライフコー ス仮説である。中等教育の平等化と高等教育における移行機会の不変性、そして高等教育 達成の平等化という本章の分析結果は、ライフコース仮説から導きだされる予測と、おお むね一致する。

ただし、そのような結論に到達するには、次の点に留意しなくてはならない。高等教育 への移行については、まだわからないことが多い。階級別の比率やオッズが示すように、

高等教育の不平等は変化していないのではなく、機会の拡大との対応関係が不明瞭で、平 等化や不平等化という単調なプロセスとしては、データの動きを要約できないのである。

4.4 要約と考察 83 60年間という戦後日本の教育のなかで、平等化と不平等化という2つの動きが輻輳し、多 様性の坩堝と化しているのが高等教育への移行段階だということである。

今後、分析においてさらなる踏み込みの余地が大きいのはジェンダーとの関係である。

本章では学歴の分布を考慮して男女別に分析したが、男性と女性はそれぞれ同性だけを相 手取り、教育をめぐる競争を繰り広げているわけではない。男女は多かれ少なかれ、学歴 取得競争において競合関係にあると考えるほうが自然である。そうした現実を統計モデル のなかでも扱うことができれば、機会の不平等についてもっと多くのことがわかるかもし れない。教育機会の男女同時分析は、今後の重要な課題の1つである。

親学歴の影響力がなぜ拡大したのかを説明することも、将来に残された課題である。

4.1.4では「成功確率」と「便益」の概念にもとづき親学歴の影響力の安定性について議論

したが、すでに指摘しているように親学歴による機会の不平等は全体的に拡大気味であっ た。理論的な修正をしながら、この方向性に沿ってさらに検討をすすめていくためには、

「成功確率」と「便益」の意味をもう1度よく考えてみる必要があるだろう。

Erikson & Jonsson (1996a)では親学歴と教育の「成功確率」ないし「便益」との関係 は安定的だとされているが、必ずしもそうではないことが示唆される。それらのあいだの 関係が何らかの理由で変化し、結果として、教育機会における親学歴の影響力が増加した のである。その具体的なメカニズムを特定し、データで検証可能な仮説を構築すること が、これからの研究に求められているといえる。

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教育機会の男女同時分析:平等化過

程における階級とジェンダーの競合

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