環境ハザード判定
2. 補正した開始点に総合アセスメント係数(AF)を適用する
アセスメント係数の目的は、実験室の毒性試験データを生態系への影響に外挿できるようにす ることである。入手可能なデータから PNEC を算出する際には、実験的に求めた無影響濃度
(NOEC、入手可能なデータの強さに応じて選択したもの)をアセスメント係数で除す。
表6:入手可能なデータに応じたアセスメント係数の算出
入手可能なデータ デフォルトアセスメント係数
2 種類以上の種で得られた急性毒性データ(NOEC の代わりに最小 L(E)
C50 に適用) 1,000
必ずしも最も感受性の高い種から得られる慢性毒性データではない(種の
最小 NOEC に適用) 50
最も感受性の高い種から得られたデータに基づく慢性毒性データ(最小
NOEC に適用) 10
通常、アセスメント係数 10 は、3 分類群(魚類、ミジンコ属、藻類など)の 3 つの種から慢性毒 性 NOEC が入手可能であった場合に限り適用される。感受性の高い種で試験を行ったとの証拠が ある場合は、2 つの種の最小値に係数を適用してもよい。慢性データの結果について検討すると きは、可能な限り入手可能な最小 NOEC から PNEC を算出すべきである。生態系影響への外挿は、
さらに高い信頼性で実施可能となるため、アセスメント係数を大幅に下げることができる。
通常、アセスメント係数 50 は、異なる分類群から単に 1 つ又は 2 つの慢性 NOEC が求められた 場合に適用され、一般的に魚類又はミジンコ属と、藻類の毒性 NOEC とを用いる。感受性の高い 種で試験を行った証拠がある場合には、10 に下げてもよい。
詳細については、情報要件及び化学品安全性報告書に関する ECHA ガイダンス文書の R10 章を 参照のこと。
http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/information_requirements_
r10_ en.pdf ? vers = 20_08_0
急性データにおけるアセスメント係数 1,000 は、極めて安全サイドである。事実、このような 状況の場合に ECETOC では係数 200、US EPA では係数 100 が使用されている。GPS が係数 1,000 を提案する理由は、悪影響を引き起こすおそれのあるすべての物質が、評価で特定される ことを保証するためである。上記の表から特定されたそれぞれの不確実性が、総合的不確実性に 寄与すると仮定される。とはいえ、次の正当性が示されれば、これより低い係数を使用してもよ い。
・ 最小 L(E)C50 が、感受性の高い種を代表すると考えられる群から得られたという情報(試験 を行って単に感受性が高いというだけではない)。
・ 構造的に類似した化合物などから得られた情報で、慢性毒性に対する急性毒性の比率が低い可 能性を示唆するもの。
・ 物質が非特異的に又は麻酔のように作用し、毒性の種間変動がほとんどないことを示唆する情 報。
・ 物質の放出が短期間かつ断続的であり、環境中で持続しないことを示唆する情報。
・ 低いアセスメント係数が妥当であると示唆する、その他の情報。
補 足 情 報
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ステップ 5:ハザードを判定する
デルによる推算24、(ii) in vitro 試験及び (iii) in vitro 試験から情報を導いて も差し支えない。ただし、動物試験(in vivo 試験)は最後の手段としてのみ 実施し、他の手段によって必要な情報を得るためにあらゆる合理的な試みを 行うべきである。該当する例については、英国安全衛生庁「REACH での動 物使用の最小化リーフレット(minimization of animal use under REACH leaflet)」を参照のこと。
http://www.hse.gov.uk/reach/resources/18animaltesting.pdf
最適のデータが職業症例の研究から得られる場合もある。ヒトのデータを評価する際には、データ品質の評価について必ず総合的に考 察する。また、使用中のものよりも優れたリスク軽減措置があれば、リスク の低減又は除去が可能となる。
モデルによる推算:いくつかの数理モデルがある。最も一般的なモデルを下記に 示す。どのモデルで、どのハザードエンドポイントが推定できるかを表7に示す。
・ OECD (Q) SAR ツールボックス(継続的に拡張されており、現在は生物蓄 積性、魚類毒性、皮膚感作性、皮膚/眼刺激性、変異原性に関するトレー ニングの資料及び機会が提供されている)。
http://www.oecd.org/document/54/0,3746, en_2649_34379_42923638_1_1_1_1,00.html
・ QSARモデルのEUリスト(評価の優先順位を設定するためのDART、グループ 分け及び読み取り法(Read-across)のためのToxmatch、生態毒性及び毒性の 予測のためのToxtree、代謝及び運命予測のためのCRAFT及びMETIS)。
http://ihcp.jrc.ec.europa.eu/our_labs/computational_toxicology
・ INCHEMICOTOX 皮膚の感作性及び水生生物急性毒性のための統合的な試験戦略決定ツールと 組み合わされた、品質が確認されたデータベース。
http://www.inchemicotox.org/
・ CAESAR http://www.caesar-project.eu
一連の統計に基づくモデルであり、オープンソースソフトウェア内に実装され、Web によりオ ンラインで使用可能である。5 つのエンドポイント(変異原性(Ames)、発がん性、発生毒性、
皮膚感作性、及び生物濃縮係数)の予測が行われる。
・ Lazar http://lazar.in-silico.de/は、毒性エンドポイント(現在は変異原性、ヒト肝毒性、げっ 歯動物及びハムスター発がん性)を予測するオープンソースソフトウェアプログラムである。
・ ORCHESTRA http://www.orchestra-qsar.eu/
これは、(生態)毒性の silico(QSAR、読み取り法(Read-across)などの)モデルに関連する 継続的な EU の研究作業を普及して利用するためのプロジェクトである。
・ T.E.S.T. 毒性推定ソフトウェアツール25(次からソフトウェアとトレーニングツールをダウン ロードする: www.epa.gov/nrmrl/std/cppb/qsar/index.html#TEST)
・ MultiCase26(市販の QSAR 回帰モデル、フラグメント及び統計学的法則を用い、活性フラグメ ントと不活性フラグメントを特定する
www.multicase.com/)。
・ DEREK27(Deductive Estimation of Risk from Existing Knowledge)。LHASA Limited は、毒性及び代謝を予測する、データベースに基づいたエキスパートシステムを開発している
www.lhasalimited.org/。Derek のデータベースには広範な毒物学的エンドポイントが網羅さ
れているが、変異原性、発がん性及び皮膚感作性の分野が特に中心になっている。・ TOPKAT28(Toxicity Prediction by Computer-Assisted Technology)は、物理学的/化 学的物性、環境運命、生態毒性、毒性、刺激性、変異原性、及び亜慢性生殖/発生毒性などの 試験において使用することが可能である。
www.accelrys.com/products/topkat/index.htm
補 足 情 報
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ステップ 5:ハザードを判定する
さらに、このプログラムには、MetabolExpert システム(Pallas ソフト ウェアの別のモジュール)とリンクして使用することで、親化合物及びその 代謝物の毒性を予測するという使い方もある。
・ Tissue Metabolism Simulator(TIMES)は、 代謝シミュレーターと QSAR モデルを統合し、選択した代謝物の毒性を予測するものである30。化学品 の皮膚感作性、変異原性、染色体異常及び ER/AR 結合親和性に関し、代 謝活性化を考慮に入れて予測することが可能である(www.multicase.
com)。
表7:ヒトの健康ハザードのエンドポイント評価に適切なモデル
数理モデル ヒトの健康
ハザードの エンドポイント
TEST TOPKAT HAZARD
EXPERT
MULTI-CASE DEREK TIMES
急性毒性
3 3
刺激性/腐食性
3 3 3
感作性
3 3 3 3
変異原性/遺伝毒性
3 3 3 3 3
反復投与毒性
生殖/発生毒性
3 3
補 足 情 報
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ステップ 5:ハザードを判定する
優先順位 4 以上のすべての化学品は、急性毒性を評価し、偶発的又は意図的 な短期間曝露後に生じるかもしれない健康への悪影響を判定することが必要 である。急性毒性作用の性質及び重篤度は、化学品の毒性機序ならびに生物 学的利用能、曝露の経路と期間、及びヒト又は動物が曝露する化学品の総量 などの因子によって決まる。
急性毒性という用語は、24 時間以内の単回曝露又は反復曝露に起因する悪影 響を表す。動物の急性毒性試験では、伝統的に死亡率が主な観察エンドポイ ントとして用いられており、LD(C)50 値(あるいは、単回投与試験におけ る NOEL 又は NOAEL)のデータが得られる。さらに、急性毒性に関する情報 源として、ヒトのデータ及び経験がある。
毒性作用の性質及び可逆性を必ず考慮に入れるべきである。全身性作用が急 性毒性を引き起こすこともあるが、多くの場合は、死因又は作用機序に関す る情報がほとんど得られず、臨床症状又は特定組織における病理学的変化に 関する情報がわずかに得られるのみである。化学品の物理化学的特性を確認 すべきである(解離定数、脂溶性、揮発性など):ある種のコンピュータプロ グラムは、これらのパラメータに基づいて物質の吸収、代謝、分布及び排泄 を予測し、潜在的な標的臓器に関する情報を提供することができる。
強い急性毒性を示す化学品で、試験プロトコールの限界によって正確な急性 毒性用量を決定できない場合、定性的にリスクを特定することが重要となる。
このような場合、確実な曝露管理を行うため、厳格なリスク管理措置(RMM)
を適用すべきである(閉鎖系など)。
(i) モデルによる推算:定量的構造活性相関(Quantitative Structure Activity Relationships:
QSAR)は、化学品の物理学的特性及び構造特性(分子記述子と呼ばれる)から毒性を予測する ために用いる数理モデルである。
急性毒性(魚類集団の半分を死亡させる濃度など)は、QSAR から予測できる毒性指標の一例 である。急性毒性の予測が可能な(Q)SAR モデルが、ごくわずかに存在する(p.73 の表 7 を参照)。
(ii) in vitro 法:現在のところ、急性毒性の評価法として EU 又は OECD で正式に採用されたin vitro 試験はない。しかし、バリデーション中のものは数多い:
・BALB/c 3T3 NRU 及び正常ヒト角化細胞(NHK)NRU アッセイ31
(http://iccvam.niehs.nih.gov/methods/acutetox/inv_nru_brd.htm)。
・傍細胞透過性の亢進(PCP)と組み合わせた経上皮電気抵抗(TER)。
・TSAR:化学品に対する EU 規則の下での代替試験方法のレビュー、バリデーション及び承認の ための追跡システム
http://tsar.jrc.ec.europa.eu/
(iii) in vivo 法:
ハザード OECD‐試験ガイドラインTG US EPA OPPTS試験ガイドライン
急性毒性 402 急性経皮毒性
403 急性吸入毒性 420 急性経口毒性 - FDP 423 急性経口毒性 - ATC
425 急性経口毒性:Up and Down法 436 急性吸入毒性 - ATC
870.1000 急性毒性試験 - 870.1100 急性経口毒性(AOT)
870.1200 急性経皮毒性 870.1300 急性吸入毒性