環境ハザード判定
5. 反復投与毒性
a 訳注:原文の of body weight は省略した
補 足 情 報
84
ステップ 5:ハザードを判定する
(ECETOC 2003)。
(ii) in vitro 法:現在のところ、反復曝露後の毒性検出について規制目的で認 められている、動物試験に代わるin vitro 試験はない。
(iii) in vivo 法:化学品の物理化学性状に関する知見によって、in vivo 反復 投与毒性試験における適切な投与経路を決定したり、また、試験が技術 的に不可能であり、免除されるかを決定したりする。試験が免除される 場合は次の物質に当てはまると思われる:
・常温、空気中で発火する。
・ 速やかに分解する。このような場合は、本書に概論したようなアプローチで、
分解産物の評価情報が必要となる。
・ 試験の対象となる用量範囲で腐食性がある。動物愛護の観点からも、試験 は避けるべきである。
ハザードの特定及びリスクアセスメントに最も適したデータは、国際的に合 意の得られた試験ガイドラインに準拠した実験動物の試験から得られる。場 合によっては、従来の試験ガイドラインに準拠していない反復投与毒性試験 でも、本エンドポイントに関する情報が得られることもある。
ヒトの健康
ハザード OECD - 試験ガイドライン TG US EPA OPPTS試験ガイドライン
反復投与 407 げっ歯動物を用いる反復投与28日経口毒性
試験
408 げっ歯動物を用いる反復投与90日経口毒性 試験
409 非げっ歯動物を用いる反復投与90日経口毒 性試験
410 反復投与経皮毒性:21/28日 411 反復投与経皮毒性:90日 412 亜急性吸入毒性:14/28日試験 413 亜慢性経皮毒性:90日
422 生殖/発生毒性スクリーニング試験とともに 実施する反復投与毒性試験
452 慢性毒性試験
870.3050 げっ歯動物を用いる反復投与28日経口 毒性試験
870.3100 げっ歯動物を用いる90日経口毒性 870.3150 非げっ歯動物を用いる90日経口毒性 870.3200 21/28日経皮毒性
870.3250 90日経皮毒性 870.3465 90日吸入毒性
870.3650 生殖/発生毒性スクリーニング試験とと もに実施する反復投与毒性試験
870.4100 慢性毒性
870.4300 慢性毒性/発がん性試験
補 足 情 報
86
ステップ 5:ハザードを判定する
生殖毒性の特徴は、男性と女性の生殖機能又は生殖能力(繁殖性)の障害に関 連する多種多様のエンドポイントがあり、子に対する非遺伝性悪影響(発生 毒性)を誘発することである。
種が継続するためには繁殖周期が完全でなくてはならず、また個人にとって も生殖障害又は発生障害は明らかに重大な問題であるため、環境、作業場又 は消費者製品に存在する化学品へのヒトの曝露について、生殖障害又は発生 障害のハザードを確立する必要がある。生殖毒性データの情報要件は、優先 順位 1 の物質にのみに適用される。
この評価では、生殖に対する特異的影響と、一般毒性の非特異的結果であ る生殖への悪影響を区別することが不可欠である。通常、生殖毒性作用は、
基礎にある用量-反応の機序によるものと考えられている。したがって、
NOAEL 又は LOAEL 値は利用可能なデータから得るべきである。しかし、生 殖毒性のある面に関する閾値用量は必ずしも容易に特定できるわけではない。
適切に報告された信頼できるヒトデータから NOAEL が求められているとい う稀なケースでは、それをリスクの評価に用いるべきであるが、一般的には 動物を用いて行った研究で得られた値を用いることになる。
標準試験ガイドライン(例えば OECD 421)の下、要求されている最高用量 レベルまで適切な試験が行われ、生殖に対する悪影響が観察されていない場 合には、生殖毒性の懸念はないと結論付けることが可能であり、MOS を計算 する必要はない。
用量/濃度と、生殖及び他の全身毒性に対する有害影響との関係については、特に注意を払うべ きである。母体における影響が軽微で可逆的であり、懸念のレベルは低いと判定される一方で、
同様の曝露レベルでも子への影響が深刻な長期的影響をもたらす可能性があるため、MOS 評価で は発達中の子に注目すべきである。一般集団又は職業コホートを対象として行われる疫学研究に より、生殖毒性に関する情報が得られることがある。生殖毒性の検討が直接の目的ではないが、
反復投与毒性試験において実験動物の生殖器官に対する影響が判明することもある。
(i) モデルによる推算:QSAR は、同族列又はカテゴリ間で外挿又は内挿することで、生殖毒性を 評価するアプローチを提供することができる。生殖毒性に関連する可能性のある標的/機序は 多数あり、現在の知識をもとにすると、一連のモデルで十分に網羅することはできない。いく つかの毒性学的エンドポイント(変異原性、感作性など)では、ある種の警告部分構造が特定 されているが、生殖毒性の警告部分構造を特定するための正式な基準は、現在のところ得られ ていない。したがって、現行の QSAR モデルから陰性の結果が得られても、他に裏付けとな るエビデンスが得られていない限り、生殖ハザードがないことが示されたと判定してはならな い。適切なモデルとして、TOPKAT 及び Hazard Expert が挙げられる。
(ii) in vitro 法:現時点では、生殖毒性に関連するin vitro 試験について、公式に採用されてい る EU 又は OECD 試験ガイドラインはない。最近、3 つの試験が EU において広域多試験施設 共同バリデーション試験として実施され、欧州代替試験法評価センター(European Centre for the Validation of Alternative Methods;ECVAM)の手順書により、胎児毒性評価に 用いる試験として科学的にバリデーションされた試験であると宣言された。しかし、現在のin vitro アプローチには多くの限界がある。例えば、被験物質の生体内変化に対する適応が不十
分である33。したがって、生殖毒性の試験戦略においてin vitro 法のみの使用を、推奨するこ とはできない。段階的アプローチ又は一連のアプローチでアッセイを組み合わせることで予測 可能性は改善されるが、それでもなお、一連のin vitro アッセイによりモデル化される領域の 総和より、in vivo の条件が上回ることにかわりはない。
・胚性幹細胞試験34
・胚肢芽マイクロマス培養35
・全胚培養36
補 足 情 報
88
ステップ 5:ハザードを判定する
生殖毒性 414 出生前発生毒性試験
415 1世代生殖毒性試験 416 2世代生殖毒性試験
421 生殖/発生毒性スクリーニン グ試験
422 生殖/発生毒性スクリーニン グ試験とともに実施する反復 投与毒性試験
440 げっ歯動物を用いる子宮肥大 バイオアッセイ
441 ラットを用いる
Hershbergerバイオアッセイ
870.3550 生殖/発生毒性スクリー ニング試験
870.3650 生殖/発生毒性スクリー ニング試験とともに実施 する反復投与毒性試験 870.3700 出生前発生毒性試験 870.3800 生殖及び繁殖性に対する
影響
環境ハザードのエンドポイント 1. 水生毒性
水生毒性は、短期又は長期曝露において水生生物に悪影響を及ぼすという化学品の固有の性質を 表す。水を介する化学品の曝露が主要な経路と考えられるが、水生生物が食物を介して(脂溶性 化学品などに)曝露されることもある。短期的(いわゆる急性)影響と長期的(慢性)影響は区別さ れる。
急性毒性は、試験化学品の水生生物への短期的曝露に基づく。曝露の期間は数時間から数日にわ たる(その生物の寿命に対して比較的短い)。影響は通常、半数致死濃度又は半数影響濃度(L/
EC50)、すなわち、50%の生物が影響を受ける試験濃度、又は所定のエンドポイント(例えば、
藻類の成長速度など)に 50%の影響が認められる試験濃度として表される。
慢性毒性は、化学品に曝露された水生生物の長期間の毒性を表す。曝露(試験)期間は用いる種に よって大幅に異なり得るが、一般的にはその生物の寿命に対して比較的長い。通常、このような 慢性影響には、生存、成長、生殖などの各種エンドポイントが使われる。
最もよく使用されるパラメータは、影響が観察されない最高試験濃度である。ハザード評価では、
利用可能なすべての水生毒性データについて評価する必要があり、適切であれば、これらのデー タを用いて水コンパートメントについて全体的な予測無影響濃度(PNEC)を求める。PNEC とは、
これを下回れば許容できない影響は生じないと考えられる濃度である。原則として PNEC は、最 小短期間 L(E)C50 値又は長期 NOEC 値を該当するアセスメント係数で除すことにより求める。
アセスメント係数には、限定された生物種について研究室で実施した毒性試験のデータを、「実際 の」環境に外挿したときの不確実性の程度を表す。長期試験に適用されるアセスメント係数は、研 究室でのデータを自然環境に外挿したときの不確実性が減少するため、相対的に小さくなる。こ のため、長期データの方が短期データよりも望ましい。