ハザード基準に基づく最初の GPS 優先順位付けが終わったら、ハザード判定で、最初のリスクア セスメントの開始から、十分な結論が得られるまで、不確実性が低いレベルに向けて/専門性の 高い方向に一連の評価ループを進める。全ての化学品について、健全なリスク管理の決定に至る ために必要な確実性の程度まで評価する必要がある。
毒性又は悪影響を引き起こす化学品の性質は、固有のハザード(intrinsic hazard)として知られ ている。
ハザード判定は、(ステップ5aで計算したように)化学品への曝露が悪影響(がん、発生異常、感 作性など)を引き起こす場合に定量化するプロセスである。有害作用の中には被験動物種に限定さ れるものもあるため、ハザード判定では、その悪影響がヒトに生じる可能性があるかどうかも判 定する。
一部の化学品はヒトへの影響を引き起こすことがあり、本ガイダンス文書ではこれを毒性又は悪 影響と呼んでいる。悪影響は、潜在的な毒性化学品への曝露によって生じる、異常で、望ましく ない、又は有害な変化と定義される。
第 1 節では、化学品及びその潜在的なハザードに関する入手可能なすべての情報を収集した。し かし、化学品の固有のハザードが悪影響として発現するのは、あくまでも一連の条件に合致した 場合である(特定の曝露レベル、影響の閾値、不適正な取扱いと使用)。そこでステップ 5 では、
これまでに収集した情報を評価及び統合し、次のヒトの健康及び環境のエンドポイントに対する ハザードの閾値レベルを導出する(ハザードエンドポイントの詳細については、補足 p.70 を参 照)。
ボックス8:ヒトの健康及び環境に対するGPSハザードエンドポイントの概要
証拠の重み付け(WOE):証拠の重み付けによる評価では、様々な分類群での反応の有無、試験の関 連性及び信頼性に関する陽性反応の性質及び大きさ、用量反応(又はその欠如)、相対的可能性、及 び仮定された作用機序に関する試験間の反応の一貫性を挙げるべきである。
さらに、(バリデーションされた試験の結果を考慮することで導出される)証拠の重み付けで、高く見 積もったとしても小さなハザードの可能性しか示さず、環境への放出又は曝露の可能性がほとんど又 は全くない場合、そのような物質には、正確な試験でのさらなる調査について非常に低い優先順位を 設定するべきである。標準の毒性試験からの既存の情報及びデータは、証拠の重み付けの評価の一環 として調査するべきである。これらの試験の結果は、用量反応、及び潜在的な懸念があるエンドポイ ントに対する悪影響に関する重要な情報を提供する可能性がある。
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証拠の重み付けのアプローチでは、次のことを考慮する:
・ どのエンドポイントが測定対象となっているか、及び潜在的な内分泌かく乱作用機序の影響に対 するエンドポイントの関連性(データの関連性)
・ 特定の試験及びそのプロトコールの繰り返し再現性、信頼性、及び品質と、ピアレビューの範囲
(試験の再現性)
・評価に基づくデータセットの重要性(又は「重み付け」)(データの重要性)
・ 結論を得るためのデータの十分な一貫性(「証拠の重み付け」のバランス)、アクションを講ずる ために必要なさらなる証拠、及びそのアクション(さらなるアクションのための一貫性やギャッ プ、及びフレームワーク)。
・ 各段階で専門家の判断が必要である。また、透明性を促進するために意思決定の基準を記録する ことが重要である。
・ より詳細なガイダンスについては、以下を参照のこと:
http://www.biac.org/statements/chem/FIN08-12_ BIAC_Perspective_on_a_
Globally_Harmonized_Endocrine_Activity_Assessment_Approach.pdf
ヒトの健康のエンドポイント 環境エンドポイント
1. 急性毒性
2. 刺激性及び腐食性 3. 感作性
4. 変異原性及び遺伝毒性 5. 反復投与毒性
6. 生殖/発生毒性
1. 水生毒性
2. 分解、生物蓄積性
ステップ 5 の着手に先立ち、下記の事項を考慮することが重要である。
p. 70 以降の補足には、必要時に備えて詳細が記載されている。
ハザードデータの解析における一般事項
1. ハザード評価におけるエンドポイントには以下の相互関係がある:あるエンドポイントについ て収集した情報は別のエンドポイントのハザード/リスクアセスメントに影響を与え、場合に よっては、2 つ以上のエンドポイントにおいて使用することとなる。
2. 分解生成物及び代謝物について検討する必要がある:リスクアセスメントに関連する場合は、
物質の分解生成物及び代謝物に関する調査が必要となる場合がある。PBT(難分解性、生物蓄 積性、及び毒性)の評価又は分類と表示。
3. 毒性試験には適切な曝露経路を選択すべきである:曝露は、生物(ヒトなど)が化学品と接触し た時点で生じる。曝露経路とは、体内に化学品が侵入する経路である:皮膚を介した侵入(経 皮吸収)、肺を介した吸収(吸入)、摂取後の消化管を介した吸収(経口)。大半の化学品は、3 種類の曝露経路の毒性が等しくない。実験では通常、ヒトが最も曝露しやすいと考えられる経 路が用いられるものの、多くの試験では、その他のより利便性の高い経路を選択することがあ りうる。最適な曝露経路を特定するため、ヒトの曝露に関する入手可能なすべての情報を考慮 に入れるべきである。
個々の場合で、経路間での外挿が可能なこともある。
4. 試験系の感受性:毒性試験で観測される閾値の用量や影響レベルは、試験系の感受性によって 影響を受ける。
5. 用量‐反応評価:「用量」とは投与される化学品の濃度であり、「反応」とはその影響を指す。 用 量‐反応関係の評価は複雑なものであり、1 つの用量‐反応関係をすべての悪影響及びすべて の集団におけるモデルにすることはできない。毒性は、体内に吸収された化学品の量、及び化 学品が循環系に侵入した後にたどる経路に応じて異なる。健康への悪影響は、化学品又はその 活性代謝物が当該臓器中で閾値濃度に到達するまで発現しない。ただしこれは、がん以外のエ ンドポイントにのみ有効である。これは、曝露レベルならびに曝露経路、及び標的臓器からの 消失レベルと標的臓器での分解量に依存し、トキシコキネティクスや作用機序の違いから、閾 値曝露濃度は曝露経路及び種差によって大きく異なると考えられる。化学品の影響について定 量的に評価する際には、曝露量と健康影響量との関係(用量依存性の評価)を理解することが不
可欠である(p.96 を参照)。
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ハザード判定プロセス
ハザード判定及びその後のリスクアセスメントには、2 つの主要アプローチがある。
いずれも、用量記述子及びアセスメント(不確実性)係数を用いるという点で基本的には同じ方法 に従うもので、さらに最終的には同じ結論が導かれる。ただし、結果の提示方法は以下のように 異なる。
1. MOS/MOE:従来のアプローチは安全マージン(MOS:Margin of Safety)又は曝露マージ ン(MOE:Margin of Exposure)の導出であった。アセスメント係数については、結果を導 出した後に考察する。新たな曝露情報が入手可能になった場合は、MOS/MOE の結論の再計算 が必要になることがある。
2. DNEL:欧州では、REACH 法により導出無影響量(DNEL)が確立されている。本アプローチ の利点として、曝露量の推定値と測定値を直接比較することが可能なため、新たな曝露量が入 手可能となったときに既存の DNEL と容易に比較できる点である。また、DNEL の導出プロセ スではアセスメント係数を考慮するため、これが結果に含まれる。DNEL の算出の全般につい ては p.101 を参照のこと。
6. 決定的データ(キースタディ)の特定:特定のエンドポイントでは、2 件以上の試験から得られ たデータが利用可能なことがある(異なる種の試験、異なる期間で実施された試験など)。し たがって、ハザード毎にキースタディ(決定的データ)を特定することが重要である。決定的 データとは、評価対象とするハザードデータの中でも最も高品質で信頼性のあるデータを示す
(p.138 を参照)。
7. 用量記述子:毒性試験における評価の一環として、対象とするエンドポイントに関する用量記 述子(NOAEL、NOEL、NOAEC、BMD、LD50、LC50、T25 など)を特定すべきである。
1 つのエンドポイントに対して 2 つ以上の用量記述子を特定してもよい。これらは、許容可能 な曝露量を表す基準値(reference value)を算出及び補正するための開始点(POD)として用 いられる(詳細は、p.95 を参照)。
図 3:ハザード判定プロセス: DNEL 及び MOE/MOS
1. 入手可能な情報及び毒性試験に基づきエンドポイント毎に開始点として用量記述子を特定するa。
2. 必要ならば開始点(POD)を補正するb。
3. 作用機序(閾値/非閾値)を決定する。
4. 補正した開始点に総合アセスメント係数
(AF)を適用する。
5.開始点(POD)を総合AFで除して、エンドポイント別の DNEL又はDMELを導出する。
6. 健康/環境への主な影響を選択し、相当する DNEL/DMELを特定する。
ステップ7に進む リスク判定比(RCR)を算出する。
ステップ7に進む MOS / MOEを算出する。
注記: DNEL/DMELは、関連するアセスメント係数を考慮に入れ て導出されるため、この結果にはすでにアセスメント係数が 考慮されている。一方MOE/MOSの算出では、該当するア セスメント係数を結果で考慮に入れておらず、リスクの結論 を導く前に、アセスメント係数を考慮に入れることが必要と される。
選択肢1 REACH に準拠
(閾値/非閾値)
選択肢2 MOS / MOE
(閾値/非閾値)
a訳注: 原文では、「入手可能な情報及び毒性試験に基づきエンドポイント毎に用量記述子を特定する」となっている。
b訳注:原文では、「必要に応じて用量記述子を適正な開始点(POD)に修正する。」となっている。