環境ハザード判定
4. 変異原性及び遺伝毒性
変異原性とは、細胞又は生物の遺伝物質の量あるいは構造に永続的な遺伝的変化が誘発されるこ とである。このような変化には、単一遺伝子又は遺伝子断片、遺伝子群、あるいは染色体が関連 する。
補 足 情 報
80
ステップ 5:ハザードを判定する
遺伝毒性試験には DNA 損傷誘発の指標(ただし、突然変異の直接的エビデン スではない)が得られる試験を含める32。
変異原性の標準試験は、細菌を用いたin vitro 遺伝子突然変異試験である Ames 試験である。多くの化学品は、化学物質の構造の特徴から Ames 試験 の結果を予測することができる。Ames 試験を実施するか、又は陽性予測可 能性に関する構造の特徴を受け入れ追加試験を省略するか否かの判断は、企 業に委ねられる。
より高い優先順位(優先順位 1 及び 2)では、in vitro での遺伝子変異や染色 体異常の誘発に関する情報、並びに染色体異常のin vivo 試験(げっ歯動物の 骨髄又は末梢血の小核試験)が必要な場合がある。試験データを評価する際に は、試験化学品の代謝活性化と物理化学性状を考慮する必要がある。試験化 合物が実際に標的臓器に到達するかどうかを分析する場合は、トキシコキネ ティクスデータが重要である。通常、in vivo 実験及び哺乳動物細胞株を用い て得られたデータの重要性が高いと考えられる。DNA 結合アッセイや姉妹染 色分体交換(SCE)アッセイといった種類の試験で得られる指標は、重要性が 低いと見なされる。試験の方式及び試験階層に関するさらに詳細なガイダン スについては、REACH Rip. R7a、p.395 のエンドポイント固有のガイダ ンスを参照のこと。
遺伝的損傷を防ぐため、変異原性(遺伝毒性)のある化学品への曝露は厳格に 管理しなければならない。特に、遺伝毒性(細胞の遺伝物質である DNA を損 傷する)と発がん性(がんに至らしめる)の両方を有する物質は、少量でも悪 影響をもたらすおそれがあると一般に考えられるため、この管理は重要であ る。一般的に、欧州のリスクアセスメント担当者がこれまでに示してきた助 言は、このような化合物への曝露を最小限に抑えるというものであり、これ は ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則と呼ばれる。
(i) モデルによる推算:物質の変異原性に関する試験以外からの情報は、化学構造の単純な評価か ら、種々の読み取り(read-across)法、エキスパートシステムの利用、代謝シミュレーター、
グローバル又はローカル(Q)SAR に至るまで、様々な方法により得ることができる。QSAR データの正確性において、十分役に立つものも多くあるが、誤差の深刻な影響によって許容で きないような不確実性がある場合もある。変異原性及び遺伝毒性の評価には、次のモデルを使 用することができる。DEREK、TOPKAT、HazardExpert、TIMES。
あるいは代替として、OECD QSAR ツールボックス
http://www.oecd.org/document/23/
0,3343,en_2649_34379_33957015_1_1_1_1,00.html
を使用できる。(ii) in vitro 法:通常のin vitro 試験は、培養した細菌、ヒト細胞又は哺乳動物細胞を用いて実 施する。試験の感度及び特異性は物質クラスに応じて異なり、試験対象物質の種類に適切な データが得られた場合は、これに基づいて最も妥当な試験系を選択することができる。代謝活 性化を介して変異原性を獲得すると考えられる物質の変異原性を検出するため、通常では外因 性代謝活性化系をin vitro 試験に追加する。
ハザード OECD - 試験ガイドラインTG US EPA OPPTS試験ガイドライン 変異原性/遺伝
毒性
471 細菌を用いる復帰突然変異試験 472 遺伝毒性:
Escherichia coliを用いる復帰試験 473 哺乳動物を用いるin vitro染色体異常試験 476 哺乳動物を用いるin vitro細胞遺伝子突然
変異試験
479 遺伝毒性:哺乳動物細胞を用いるin vitro 姉妹染色分体交換試験
480 遺伝毒性試験:
Saccharomyces cerevisiaeを用いる遺伝 子突然変異試験
481 遺伝毒性:
Saccharomyces cerevisiaeを用いる有糸 分裂組み換え試験
482 遺伝毒性:
哺乳動物細胞を用いるin vitro DNA損傷 及び修復、不定期DNA合成
487 哺乳動物を用いるin vitro細胞小核試験
870.5100 細菌を用いる復帰突然変異試験
870.5140 Aspergillus nidulansを用いる遺伝子突然 変異
870.5300 哺乳動物を用いるin vitro細胞遺伝子突然 変異
870.5375 哺乳動物を用いるin vitro染色体異常試験 870.5500 細菌を用いるDNAの損傷及び修復試験 870.5550 培養中哺乳動物細胞を用いる不定期DNA
合成試験
870.5575 Saccharomyces cerevisiaeを用いる有糸 分裂遺伝子変換試験
870.5900 in vitro姉妹染色分体交換試験 870.5915 in vitro姉妹染色分体交換試験
補 足 情 報
82
ステップ 5:ハザードを判定する
ハザード OECD - 試験ガイドライン TG US EPA OPPTS試験ガイドライン 変異原性/遺
伝毒性
474 哺乳動物の赤血球小核試験 475 哺乳動物の骨髄染色体異常試験 477 遺伝毒性:
Drosophilia melanogasterを用 いる伴性劣性致死試験 478 遺伝毒性:
げっ歯動物を用いる優性致死試 験
483 哺乳動物の精原細胞染色体異
常試験 484 遺伝毒性:
マウススポット試験 485 遺伝毒性:
マウスを用いる相互転座試験 486 哺 乳 動 物 肝 細 胞 を 用 い るin
vivo不 定 期DNA合 成(UDS)
試験
870.5195 マウスを用いる生化学的特 定座位試験
870.5200 マウスを用いる可視的特定 座位試験
870.5380 哺乳動物の精原細胞染色体 異常試験
870.5385 哺乳動物の骨髄染色体異常 試験
870.5395 哺乳動物の赤血球小核試験 870.5450 げっ歯動物の優性致死試験 870.5460 げっ歯動物の相互転座試験
a 訳注:原文の of body weight は省略した