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第 3 章 事例分析 1: 開発初期段階の設計構想と DFx の充実事例

3.5 考察

A社の事例においては,これまでの商品企画/方式,システム設計部門中心の開発ス タート準備,仕様検討から,コンカレントをレベルアップし,

・大部屋集中検討によるありたいプロセス検討

・システム仕様の充実

・DFXの実施

を展開した。従来,仕向地別方式,システム設計部門まかせの仕様検討からプロジェ クト・メンバー全員が自分のこととして検討に参画し,従来は詳細設計段階からしか プロジェクトに参画しなかった生産技術部門や品質保証部門が,自分たちの手戻りを 最小化し,かつプロジェクトの QCD を向上させるべく,早くからプロジェクトに参 画したことは,プロジェクト・メンバーのナレッジ向上・展開,モチベーション向上 につながったということである。

最近,改めて DFX に対する取り組みを強化する日本の製造業が増えてきている。

これは 1990 年代からコンカレント・エンジニアリングを実施してきたもののまだま だ取り組むべき事,改良すべき事がたくさんあるということではないかと推察される。

A社では現在,この大部屋制度,DFXの取り組みを事業部の全プロジェクトに展開 すべく,革新活動を続けているとのことである。全プロジェクトに展開するとなると,

・リソース配分の見直し

・ミッションの見直し

・プロジェクト特性をふまえたシステム化

・教育・訓練

といったことが求められる。

3.6 おわりに

ここでは,本章のまとめとして,(1) 過去プロジェクト振り返り展開,(2) ありたい 姿から牽引,(3) 振り返り結果のプロジェクト間交流という 3 つの概念を用いて整理 し,プロジェクト・ナレッジ・マネジメントの視点を加味して解釈を加える。

(1) 過去プロジェクト振り返り展開

A 社では今回の取り組みを始めるにあたり,前機種の開発プロセス振り返り 分析を行っている。これがプロジェクト・ナレッジ・マネジメントの振り返り 展開といえる。この振り返り結果を生産技術担当,品質保証担当といったDFX

の主たるメンバーとなるプロジェクト・メンバーで共有し,問題点を認識し,

改善施策を検討したことが成功につながっているといえる。

(2) ありたい姿からの牽引 本事例ではありたい姿を,

・DFXを含むプロセス革新計画

・ベストプラクティスの学習による高い目標の設定

・今後の商品展開計画の効率的リリース検討 と置き,そこから施策展開している。

通常,ありたい姿の検討の際は自社のみの知見によることが多く,高い目標 を設定しないことが多い。そのような観点からも本事例は学ぶべき所がある。

(3) 振り返り結果のプロジェクト間交流

本事例ではプロジェクト間交流として,

・振り返り結果で学んだ施策の品質マネジメントシステム展開

・他仕向地担当の技術クロス・レビュー

がメインであるが,仕向地を越えた共通部門である生産技術部門と品質保証部 門が参画したことが大きい。この共通部門が革新活動に参画すると,他プロジ ェクトへの展開が自然に図れるからである。

しかし,業務システム,定着という観点から考えると,製品・技術特性をふ まえた品質マネジメントシステム化,教育・訓練は必須である。そうでないと 属人的なナレッジ展開に終わってしまう危険がある。