C社の事例においては,これまでの複数の中期計画関連のドキュメントの氾濫と組 織全体での目標の未共有における開発遅れ,コストアップ,結果的に品質問題多発,
先行開発遅れという事象に対し,歯止めをかけるという意味で,技術ロードマップを 中心とした組織目標の共有と定期的な進捗確認マネジメント,選択と集中活動を実施 した結果,大幅な成果・効果を上げることができた。これはある意味,開発プロジェ クト全体のフロントローディング活動といえる。
このような取り組みは,第8回開発設計マネジメントに関する実態調査JMAC(2008) 結果を見てもわかるように,まだまだ各企業では取り組み半ばである。量産型の半導 体のようなスペック重視型の開発では技術ロードマップにより,比較的目標を設定し やすいが,個別受注要素が入ると顧客ニーズの実現と技術開発の選択と集中,製造フ ォロー業務といった要素により,開発の遅延がおきやすい。本事例ではそのような課 題をうまくマネジメントし,成功させた効果的事例といえる。本取り組みでは,
・開発テーマ遅れ件数
・開発テーマ中止数
・先行提案による受注件数
といった開発設計活動だけでなく,営業活動にも大幅な成果・効果が出ている。この 成功要因として,
・集中検討会と商品ロードマップを活用した中長期的な組織目標共有
・過去プロジェクトの振り返りによる弱点の補強構想とありたい姿の検討
・商品ロードマップと定期進捗会議による選択と集中
を知恵のフロントローディングにて,実施したことが挙げられる。
また,組織全体での革新の必要性の合意,マネジメントの革新活動への支援といっ たことも重要なファクターとして挙げられる。
C社はデバイス・メーカーであるため,この不況において,大変な状況に陥ってい るとのことだが技術ロードマップ活動のブラッシュアップを軸に,先行開発,顧客へ の先行提案を実現すべく革新活動を継続しているそうである。
5.6 おわりに
ここでは,本章のまとめとして,(1) 過去プロジェクト振り返り展開,(2) ありた い姿から牽引,(3) 振り返り結果のプロジェクト間交流という 3 つの概念を用いて整 理し,プロジェクト・ナレッジ・マネジメントの視点を加味して解釈を加える。
(1)過去プロジェクト振り返り展開
C 社においてはこれまで中期計画,商品ロードマップ,技術ロードマップ,先 行開発計画といった様々な将来に向けた計画書,ドキュメント類が乱立していた。
これらの現状をふまえ,各部署の管理職で集まり,現状の問題点を議論し,そこ から技術ロードマップの統合とその視点についての革新点を抽出したという点で,
過去の振り返り展開の活用ができたといえる。本活動推進にあたっては事業部長か らの検討指示があったという点も大きい。
(2)ありたい姿から牽引
本活動を推進するにあたり,振り返りとともに,
・どういうステークホルダーを巻き込むか
・顧客満足度向上と競合に勝つための検討すべき必須縦軸項目は
・どういう情報をとるべきか
・取りたいが,取れていない情報は
という観点からのありたい姿を議論し,それを技術ロードマップの縦軸に展開し た。また,
・中期計画: ロードマップと合わせ,年4回メンテナンス実施
・商品ロードマップ: 社内用と顧客提示用を分け,社内用は技術ロードマッ プと徹底整合
・技術ロードマップ: 生産技術の歩留まり,工法改善計画も含め,目標スペ ックと量産バラツキ先行開発計画を網羅
・商品企画会議の場はもちろん,開発キックオフの際,DRの際,目標管理面 談の際,あらゆる場合にも技術ロードマップを傍らに置き,検討を進める といった運用をイメージした姿も検討したことは,成功のポイントといえる。
現状の振り返りだけでは,問題点の裏返しの改善施策しか出ないことも多いた め,ありたい姿を検討したことも成功要因といえる。
(3)振り返り結果のプロジェクト間交流
本事例は,ある事業部門の中期計画であるので,プロジェクト間交流には直接 結びつかないが,
・商品企画会議にて技術ロードマップを議論することにより,どうやっても 競合に勝てそうにない,儲からないテーマについては,開発を中止するとい う意思決定につながっている
という点を見ると,技術ロードマップを元に運営されている商品開発・技術開発 プロジェクト上での情報交換がなされているといえる。