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第 8 章 結論

8.2 発見事項のまとめ

8.2.1 サブシディアリ・リサーチ・クエスチョンの答え

SRQ1: 知の視点から見たフロントローディングの本質は何か

(共通要因)コミュニケーション→インタラクション→知創出のサイクルを生む

4 事例とも顧客ニーズの多様化と開発期間短縮という共通背景を元に実践され た事例であるが,それぞれ事例1,2,4は電機系メーカー,事例3はデバイス・

メーカーと異なる業種の事例である。このような背景はあるが,プロジェクト・

スタート時のプロジェクト推進課題検討時に,様々な部門のメンバーが集まり,

コミュニケーション→インタラクション→知創出というステップで,質の高いプ ロジェクト推進計画を立案できている。これが共通の成功要因である。

SRQ2: 従来型のプロジェクト・マネジメントとどこが異なるのか

(共通要因)プロジェクト目標に未来の視点を入れる

先行研究でも述べたように,商品開発・商品開発のプロジェクトはルーチン 的なものと,タスクフォース的(シャープの緊急プロジェクト等)なものに大別さ れる。本 4 事例はルーチン的なものであり,日常運営されている業務システム の中で実施されたものである。

通常,プロジェクト目標は,過去のプロジェクトの振り返り情報を活用しな がら,当該プロジェクトの対象とする商品・技術スペックの実現とそれに伴う QCD,リソースといったものの目標が対象とされるが(詳細は1章のPMBOK参 照),本事例では,

・当該プロジェクトの商品バラエティ展開や機能リリース

・中期的な商品・技術戦略(技術ロードマップ)

・開発プロセスの将来的な発展形/ありたい姿

も目標の一部としてイメージしながら検討,立案,その上でコンカレント計画 を立案・実施されている。つまり,未来をイメージし,過去の振り返り結果も 含め,プロジェクト計画を検討,立案しているという点で,従来のプロジェク ト・マネジメントと異なり,新規性があるといえる。

また,コミュニケーション→インタラクション→知の創出を生むための対象 メンバーに仕向地が異なるプロジェクトのメンバーや顧客,サプライヤーとい った従来はなかなか巻き込めなかったメンバーの知恵も入れて実践されている。

SRQ3: なぜフロントローディングは必ずしもうまくいかないのか

(共通要因) フロントローディング活動と同時に,業務ミッション見直し,施策

実施タイミングの前倒し,重複業務の見直しの合意と実施が必要

顧客ニーズの多様化,開発期間短縮要請に伴い,各社ではコンカレント・エ ンジニアリング,フロントローディング活動は実践されている。しかし,なか なかうまくいっていないという話をよく聞く。

本事例では,SRQ2 で述べた未来を見据えた知(ありたい姿,技術ロードマッ プ等)をプロジェクト計画立案時のインプットとして盛り込み,その上でコンカ レント計画を設計したことが重要であった。これを実現するためには従来業務 のミッションを見直し,施策実施タイミングの前倒し,重複業務の見直しと効 率化を図っていることが共通の成功要因である。

また,業種,対象部門が異なるにも関わらず,共に過去プロジェクトの知,

中長期的なありたい姿(未来駆動)の知,別プロジェクトとの知のやりとりを同時 に実施しているという点でも共通性が見られる。

8.2.2 メジャー・リサーチ・クエスチョンの答え

以上の3つのSRQの答えをふまえて,

MRQ: 「フロントローディングを使う開発設計部門において,プロジェクト・ナレ

ッジ・マネジメントはいかに行われているのか?未来駆動型プロジェクト・ナレッ ジ・マネジメント実践はどのように実践されたか」をまとめることとする。

製品開発における社会的要因として,顧客ニーズの多様化と開発期間短縮要請があ り,モジュール化,デジタル化の加速という電機業界や自動車業界で特に見られる業 界動向にもつながる。一方で,社会全体の不景気をふまえ,製品・原材料コストダウ

ンも同時に図っていかないといけないという状況がある。

こうした状況の中で,事例においては,

① コンカレント・エンジニアリング,フロントローディングの実践

② プロジェクト推進を通じて,プロジェクト・マネジメントの知と固有技術の 知が蓄積,水平展開されていく

ことで,顧客ニーズの多様化と開発期間短縮を実現することというプロジェクト・ナ レッジ・マネジメントによるプロジェクトの連続的成功が期待された。

また,プロジェクト・ナレッジ・マネジメントにおいては,Milton(2009)がプロジ ェクトの事前・事中・事後の知を提唱されているが,本研究では市場動向や開発スピ ードの早い今日,未来の姿・知も活用することを提唱すべく,4 事例の検証に取り組 んだわけである。

発見事項のまとめを表8-1にまとめる。

表8-1: 発見事項のまとめ

事例1 事例2 事例3 事例4

開発初期段階の 設計構想とDFxの 充実事例

設計と生産技術の 連携革新事例

技術ロードマップを 活用した事例

仮想取扱説明書を 活用した事例 知の視点から見

たフロントローディ ングの本質

コミュニケーション→インタラクション→知創出のサイクルを生む

従来型プロジェク トマネジメントとの 違い

・未来をイメージし,過去の振り返り結果も含め,プロジェクト計画を検討,立案

・顧客,サプライヤーを含む開発関連部門のフロントローディング活動への参画拡

フロントローディン グがうまくいかな い理由

(フロントローディングを効果的に成功させるためには)

・過去プロジェクトの知だけでなく,中長期的なありたい姿(未来駆動)の知が必要

・従来業務のミッション見直し,施策実施タイミングの前倒し,重複業務の見直しと 効率化推進が同時に必要

知視点から見たフロントローディングに着目すると,別プロジェクトの知を含む過 去プロジェクトの知,中長期的なありたい姿(未来駆動)の知の統合がコミュニケーシ ョンのインプットとして見出される。その上で,その知からプロジェクト・参画メン

バーが未来/ありたい姿を見据えてインタラクションされ,顧客ニーズの多様化と開発 期間短縮要請を実現するための知創出に変換されるといえる。その知を実現するため には,これまでの常識を覆すための革新が必要であり,そのためにも従来業務のミッ ションを見直し,施策実施タイミングの前倒し,重複業務の見直しと効率化が必要な のである。