• 検索結果がありません。

B社の事例では,これまでの設計部門中心の3D-CAD活用から生産技術部門とのデ ータ連携による開発期間短縮,効率化を狙い,そのための作戦を基本設計のスタート 段階にて設計,生産技術でプロセス革新構想を練り上げ(フロントローディング),革 新を行った結果,大幅な成果・効果を上げることができた。

このような取り組みはデジタル・エンジニアリング革新と一般的にいわれるが,第 8回開発設計マネジメントに関する実態調査(JMAC, 2007)結果を見てもわかるように,

まだまだ各企業では取り組み半ばである。BOEING 777開発のように大規模な単一プ ロジェクトではトップダウンでやりやすいが,複数の商品開発プロジェクトを抱える 大多数の企業では,このような取り組みを全面展開することは難しい。本事例のよう な取り組みをナレッジとして,かつ成果・効果を組織全体にアピールしていくことで,

全プロジェクトへの展開の素地が図られていくことはいうまでもない。

本取り組みは個別受注型の開発のため,結果的にお客様の要求にミートする納期で 開発・納入できれば良いため,開発期間短縮効果は挙げていないが,

・作業手順書作成工数

・実装図作成工数

・機構組立図作成工数

・ケーブル長作成工数

・製造手戻り削減

といった開発設計以降で大幅な成果・効果が出ている。この成功要因として,

・商品ロードマップを活用したプラットフォーム構想を描くことによるありたい 姿の共有

・過去プロジェクトの振り返りによる弱点の補強構想とありたい姿の検討

・開発設計源流段階での目標共有とコンカレント構想

といった知恵のフロントローディングを行い,実施したことが上げられる。

また,組織全体での革新の必要性の合意,マネジメントの革新活動への支援といっ たことも重要なファクターとして挙げられる。

現在,B社では全商品プロジェクトに本取り組みを水平展開すべく,革新活動を継 続されている。

設計ツールを初めとする IT 環境も日進月歩である。デジタル・エンジニアリング を推進するためには効果的な IT ツールの導入も必須である。システム・ベンダーと の情報交換,ベストプラクティスの研究もさらなる革新の必須要素である。

4.6 おわりに

ここでは,本章のまとめとして,(1) 過去プロジェクト振り返り展開,(2) ありたい 姿から牽引,(3) 振り返り結果のプロジェクト間交流という 3 つの視点を用いて整理 し,プロジェクト・ナレッジ・マネジメントの視点を加味して解釈を加える。

(1)過去プロジェクト振り返り展開

B 社では今回の取り組みを始めるにあたり,現状プロセスの分析と手戻り状 況について,設計担当と生産技術担当で行った。これが過去プロジェクト振り 返り展開といえる。

実装・構造設計部門は一般的に回路設計部門の後工程とされることが多く,

かつ製造部門からの出図要求との板挟みになり,開発期間のしわ寄せの不満が たまっていることが多い。そのためにも振り返りを自分たちだけでなく,生産

技術部門と合同で行い,共同で課題共有と改善につなげたことが良かったとい える。

(2) ありたい姿から牽引

本事例におけるありたい姿設定においては,生産技術部門と連動したプロセス 革新プランだけでなく,プラットフォーム型開発とそれを牽引する商品・技術 ロードマップの領域にまで踏み込んだことが,大きな改善テーマ抽出につなが っているといえる。ありたい姿の検討の際には,顧客も含む開発プロセス全体 まで見据えることが重要ということが教訓である。

(3)振り返り結果のプロジェクト間交流

事例1でも述べたが,仕向地別対応でない共通部門のナレッジは,組織間に 展開しやすいのはいうまでもない。B社の実装・構造設計部門も同様に共通設 計部門である。共通部門である生産技術部門もまた同様である。しかし,前述 したように,業務システム,定着という観点から考えると,製品・技術特性を ふまえた品質マネジメントシステム化,教育・訓練は必須である。また,設計 の後工程といわれる部門が,上流の顧客対応別の製品企画,上流の設計部門に プラットフォーム化を働きかけることは,QCD の面からもナレッジ・マネジ メントの観点からも大きな意義がある。