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5.4 考察
塗布法によるシリコンインクの製膜性
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Fig. 5-6 (a)石英、光学ガラスA、C上の高分子膜のAALS(1)(ξn) vs. ξnスペクトル. (b) 石英、
光学ガラスA、C、ポリジヒドロシランのLD (London Dispersion)スペクトル。ε(iξn) vs. ξn。 第二X軸にħξnの軸も示す。ただしT = 293Kとした。
上述したように AALS(1)(ξn)スペクトルに基づいた誘電関数の差分(LD スペクトル)、つま り(εS εL)から、膜の安定性を判断できる。実験によって観察された描像と、Ninham–
Parsegianモデルによって記述された(iξn)のスペクトルを用いて計算されたAALSの値との間
には良い一致が見られた。これは εLと εSの記述が適切である事を示す。(A.4)式から明ら かなように、ε の記述に重要となる紫外領域の振動モードは、本章では実測値を用いてい る。ポリジヒドロシランと SiO2組成の固体基板から成る今回の系において、AALS の値を 正しく決定するためにはUVとCUVが重要である事が示された。
ドットアレイの形成過程
今まで報告されてきた不安定な高分子液膜で観察された破裂膜の形成機構81,82,83に基づ いて今回観察された周期的なドットの形成過程を考えると、非常に興味深い挙動が推測さ れる。一般的に膜の破裂による穴の形成は、核が形成されて dewetting(濡れが後退するこ
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と)によって広がってゆく事が知られている。Kerle 達は不安定な非極性物質の液膜表面に 発生する初期のゆらぎが空間的に規則性を持つスピノーダル分解によるものである事を実 験的に示している84。初期に発生するゆらぎの特徴的長さ(波長)λspは次のように与えられ る。
1/2
4 2
| LA|
sp
ALS
L A
. (5-2)
ポリジヒドロシラン液膜においてもスピノーダル分解由来の揺らぎが発生し、その不安定 性由来の穴が成長してドットパターンが形成されると仮定すると、Fig. 5-5 で観察された 周期λのドットパターンと破裂によって形成されるゆらぎの特徴的長さとに相関がでるは ずである。つまりλ ≈ λspとなるはずである。(5-2)式から λspを見積もる前に、スピノーダ ル分解による穴の出現によってドットパターンが形成される機構85についてまず考察する。
一般的に提案されているスピノーダル分解の発生機構は、Fig. 5-7(a)の点線に示したよう に、最初に膜の表面に表面波(キャピラリーフロー)の揺らぎが発生する。これは蒸発や 外部環境の影響によって発生した熱揺らぎや溶質の濃度揺らぎに起因する。レイリー不安 定性によってこの揺らぎが増幅し、膜厚と等しくなった時に膜の破裂を引き起こす。この 時に穴が形成され(Fig. 5-7(a)の実線)、穴の淵が盛り上がるように高分子膜が集まる(Fig. 5-7(a)の矢印)。淵に集まり始めた高分子はレイリー不安定性によって更に凝集が加速され、
表面エネルギーを最小に保つためにドーム状の形状を形成する(Fig. 5-7(b))。
Fig. 5-7 不安定なキャピラリー波によってホールとドットが形成される過程の模式図。(a)
スピノーダル分解時に発生する波長λsp (点線)の不安定モードと、高分子の集積(実線)によ る穴の形成過程。(b)ドットアレイ。実際のx軸とy軸のスケールは ~ 5
103 程度の差があるので注意する。
塗布法によるシリコンインクの製膜性
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上述した機構によって破裂した膜が全て穴の淵に寄せ集められたとするならば、高さ L、 底面の直径λの円柱型で仮定される穴の体積と、実験によって観察された高分子の1ドッ トの体積が等しくなるはずである。円柱のL = 40 nm、λ = 69 μmとおくと体積は1.50 × 1010 cm3と求まる。一方で高分子のドットは Fig. 5-2 から、高さ 1.31 μm、底部の直径
18.45 μmの理想的なドーム型をしているとして体積は1.77 × 1010 cm3と求まる。両者の
体積の良い一致は、観察されたドットの周期性が不安定な膜で発生するスピノーダル分解 に起因したものである事を示差している。(5-2)式と AALSを用いて求めた λspの値は、石英 とガラス基板上の高分子膜でそれぞれ 84 (26)と 167 (31) μm だった。カッコの中の値は TWAによる計算結果である。液膜の厚みをL = 40 nmとし、表面エネルギーはAALSから
求めたLA = 31.0 mN/mの値を用いた。AALSから計算したλspの値(石英とガラス基板上で
それぞれ84 (26)と167 (31) μm)と、Fig. 5に示すFFT解析から得たλの値(石英とガラス 基板上でそれぞれ53と69 μm)は同じオーダーで良い一致を示した。
この節を終わる前に、溶液法で成膜を行う際に、不安定な状態のポリジヒドロシラン膜 から均一で平坦なシリコン膜を得るための手法を述べる。ポリジヒドロシラン膜の不安定 性の原因がスピノーダル分解とすると、ゆらぎの成長速度よりも早く膜を固化する事で膜 の破裂を防ぐ事ができる。そのためには成膜後に素早く焼成する事が重要となる。なぜな ら、ポリジヒドロシランからアモルファスシリコン膜への転移は熱によって起こるからで ある。素早い加熱以外にも、ゆらぎの成長時間を延ばすことも有効である。例えば膜厚 L の増加、粘度(もしくは分子量 M)の増加、例え負であっても小さな AALS の値を持つ基 板の選択等が効果的である。ゆらぎの成長率が最大になるモードでの成長時間はmax = 482LAL5/|AALS|2で与えられるため86、上述した物理量が重要となる。