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水素化アモルファスシリコン太陽電池

一般的なa-Si:Hは結合水素を10 at.%程度含むものの、ほぼ4配位化学結合ネットワー クからなり、近距離秩序性は結晶シリコンとほとんど等しい。一方で中距離になるとその 秩序性は大分ぼやけてくる。バンド構造の大枠は近距離の化学結合状態で決定されるので、

電気伝導で重要となる伝導帯および価電子帯近傍はそれぞれs軌道性反結合状態、あるい はp軌道性結合状態から構成されている。Fig. G-3にa-Si:Hの電子状態の一例を示す。ネ ットワーク構造の乱れは、バンド端を禁制帯側へ移動させると共に電子状態の密度分布を なだらかにする。結合水素は堅い4配位化学結合ネットワークを緩和させて、特に結合角 の乱れを低減すると共に、膜中の欠陥密度を終端する事で禁制帯中に現れる欠陥準位を低 減する。しかし膜中にはそれでも1015 cm-3程度の欠陥が存在し、準位を形成している。 a-Si:H はエネルギー保存則が満たされれば遷移が可能であり、間接遷移型の結晶シリコン と比較して吸収係数が2桁程大きい。しかし同時に、低エネルギー側では欠陥準位などが 関与した遷移もみられる。a-Si:H 膜では膜中の結合水素が重要な役割を担っている。従っ て水素量と膜構造の関係は、a-Si:H膜の膜質を議論する際に重要な要素である。

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Fig. G-3 a-Si:Hの電子状態の概略

結晶シリコン太陽電池とa-Si:H太陽電池の違い

a-Si:H 太陽電池も pn 構造が基本となっているため、その動作は結晶シリコン太陽電池

と大きく変わらない。しかしいくつかの重要な相違点がある。結晶シリコンは間接遷移型 半導体であるため吸収係数が小さく、太陽光を十分吸収するために必要な膜厚は 200 μm 程度となる。これに対し a-Si は直接遷移型半導体であり高い吸収係数を示す。そのため 太陽電池として必要な膜厚も300 nm 程度であり、薄膜化が可能となる。また、a-Si:H 太 陽電池はpn構造ではなくpin構造である。通常a-Si:Hのpn接合は整流性を示さずオーミ ック接触に近い特性を示す。これはp層およびn層中の欠陥準位密度が多く、この欠陥を 介した再結合電流あるいはトンネル電流が支配的となるためである。そこで pn 層の間に 欠陥準位密度の小さなi層を挟むことで生成キャリアを効率的に生成させてp 層およびn 層へ収集させる。p層およびn層は上述したように膜質が悪いため、厚い場合には大きな 直列抵抗となる。従ってa-Si:H太陽電池はp層およびn層の厚さは数十nm程度とし、そ

の中間に300 nm程度のi層を挟んだ構造となる。

アモルファスシリコン太陽電池の構造

a-Si:H太陽電池の基本構造は、Fig. G-4に示すように2種類に大別される。透明導電膜

(TCO: Transparent Conductive Oxide)が形成されたガラス基板上にpin層を形成するスーパ ーストレート型と、金属反射基板の上に nip 層と TCO 層を形成するサブストレート型で

Appendix

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ある。いずれの楮においても半導体層はpin層より構成されており、i層は光電流生成・輸 送層、p層および n層はi 層中のキャリアドリフトを促進する内蔵電位を生成し光生成キ ャリアを収集する電極層である。

a-Si:H 太陽電池の発電層である i 層は太陽電池の特性に最も大きな影響を与える。光学

バンドギャップが一定の場合、i 層が厚いほど太陽光は有効に吸収されるが、i 層内に電 界の弱い部分が現れキャリア輸送特性の低下につながる。逆に薄くなれば低光吸収による 短絡電流の低下を招く。この両者のバランスによりi 層の最適膜厚が決定する。またその 膜質は、酸素や炭素等の不純物濃度や欠陥密度の影響を強くうける。例えば酸素濃度は 5

×1019 cm-3と微量でも影響があり、1020 cm-3を超えるとセル特性は著しく低下する132。ま た同様に欠陥密度が1016 cm-3を超えるとセル特性は低下する。従ってi層として重要な点 の1つは、酸素濃度と欠陥密度を低く抑える事である。

a-Si:H太陽電池では一般的に光入射側にp層が配置される。この理由はまず高い内部電

界領域は p/i 界面側に形成される事と、次に正孔の輸送特性は電子のそれに比較して劣っ ているためである。一方で n 層は光入射面とは逆側に配置される事になる。p層および n 層は、薄すぎると低キャリア濃度により十分な拡散電位が得られず、厚すぎると光吸収損 失の増加による短絡電流の低下と、抵抗成分の増加による曲線因子の低下を招く。従って p層およびn層としてまず重要な点は、ドープ量が制御できる事と、薄膜で高い伝導度を 得る事である。

Fig. G-4 a-Si:H太陽電池で代表的な2つの構造。左がスーパーストレート型、右がサブス

トレート型

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従来の製造方法

a-Si:H の堆積にはプラズマ化学気相成長(PECVD: Plasma Enhanced Chemical Vapor

Deposition)法が広く使用されている。PECVD 法ではエネルギーの高いプラズマ状態で原

料ガスを励起あるいは化学結合を分解し、原子あるいは分子のイオンを生成し、活性な粒 子間の反応により薄膜を堆積する方法である。PECVD 装置には平行平板型、誘導コイル 型、マイクロ波放電型などが開発されているが、代表的な平行平板型を例に簡単に述べる。

この装置では堆積チャンバー内を高真空に引いた後、平行平板間に高周波を印加してプラ ズマを発生させる。基板は電極上にセットされる。対向電極との間で発生したプラズマ中 でシランガスが分解され、基板表面に a-Si:H が堆積する。この手法では 150–300°C と比 較的低温で成膜が可能である。

PECVD の課題点としては次のようなものが挙げられる。成膜では基板上だけでなく対

向電極やチャンバー壁面にも膜が堆積されるため、これがパーティクルの発生原因となる。

それゆえ定期的なクリーニングが必要となる。また分解されたガス種のエネルギーが数 eV 程度まで達し、試料に損傷を与える事がある。これはプラズマ損傷と呼ばれ、PECVD 法の本質的な課題である。また原料ガスを3次元空間での電子との衝突により分解するた めガスの利用効率が低く、導入ガスの9割以上は廃棄している。既に量産工程で使われて

いるPECVD法ではあるが、真空法が故の課題のほかにもプラズマ特有の課題もこのよう

に多く残されている。