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Fig. 3-1(a)は、照射時間を0、30、60、240分とした 4 つの試料の屈折率(RI)強度の測定結果

を示す。15, 45, 90, 120, 180分の結果はここに載せていない。照射時間0分の試料はCPSに対

応する。溶出量で13mLにある負のピークは試料の終了を示す。CPSのRIクロマトグラムは溶出 量が12mLの位置で鋭いピークを示した。照射時間が30分の試料ではCPSのピークが減少し、

低溶出量側に裾が広がった幅広いスペクトルとなった。照射時間が 60 分の試料では低溶出量 側の裾が更に幅広く成長し、一方で CPSのピークがなくなった。これは照射時間が 60分でほぼ 全てのCPSが消費された事を示す。

Fig. 3-1(b)は、照射時間が0、30、60、240分の4試料のポリジヒドロシランの分子量分布を示す。

分子量は102から106 g/mol の広い範囲い広がっている。照射時間が 60 分以下の試料は、

光照射によって分子量分布の変化が大きいのに対し、照射時間が 60 分以上の試料は、光照射 による分子量分布の変化が少ない。照射時間が 0 分の試料は CPS に対応するが、これは 150

g/molの位置に鋭いピークを示し、CPSの分子量に一致する。従って分子量150 g/molのピーク

強度の減少は、光照射の最初の60分でCPS がどの程度の速度で消費されてポリジヒドロシラン

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を生成するかを示す。照射時間が60分以上の試料では、105–106 g/molの領域が僅かに成長を しているが、その成長速度は遅い。照射時間が60分以下で主となるCPSの光開環重合と、照射 時間が60分以上で主となる高分子の成長とで、異なる分子量の増加要因がある事を示す。

Fig. 3-1 CPSとポリジヒドロシランのSEC-MALLS測定結果。光照射時間が30、60、240

分のポリジヒドロシランを 25°C のシクロヘキセンに溶解して測定に用いた。(a) RI 強度 (b) 分子量

分子量M、回転半径Rg、固有粘度[η]の溶出プロファイル

この節ではSEC-MALLS-Viscosity測定について述べる。MALLS検出器では、低角側の 3 つの検出器は迷光の影響でノイズが大きくなるために解析から外した。従って角度

=28–141°の 15 個の検出器からのデータを用いた。Fig. 3-2(a)は照射時間が 240分のポリ

ジヒドロシランの濃度c、角度90でのレイリー比R(90)、比粘度ηspの溶出プロファイルを 示す。Fig. 3-2(b)は分子量Mと回転半径Rg、Fig. 3-2(c)は粘度半径Rと固有粘度[]を示し ており、それぞれ3-2節の手法に従って求めた。

SEC 測定では、実験で用いた溶媒、濃度、カラムが適切かを確認するために、溶出遅

れの有無を確認する必要がある。注入した試料の濃度cinjectionとFig. 3-2(a)にある時間毎の

シリコン前駆体高分子の解析

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溶出プロファイルから得た試料濃度の積算値 Σci との比較から求めた溶質の回収比

Σci/cinjectionは 0.994 であった。SEC カラム内での吸着がほとんどなく、分子サイズ毎に分

画が正しく行われていると判断できる48,49

Fig. 3-2(a) 照射時間が240分のポリジヒドロシランを25°Cのシクロヘキセンに溶解させ

た試料の濃度c、光散乱角度 90 度のレイリー比 R(90)、比粘度 ηspの溶出プロファイル。

(b) MとRg vs. 溶出量。(c) Rと[] vs. 溶出量。Fig中に示されている範囲“A” は、Rgの測

定限界(>10 nm)であり、Rg–Mプロットの解析ではこの範囲のデータを用いる。

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SEC-MALLSでのRgの測定限界は最小で10 nm程度である。Fig. 3-2(b)で、高溶出量側

Rgは10 nm以下まで直進性良く得られているが、測定限界を考慮してRg >10 nmとな

る範囲A のみを Rgの解析に採用した。範囲 A の上限と下限の Guinier-Zimmプロットを Fig. 3-3(a)(b)にそれぞれ示す。

Fig. 3-3 範囲 A の上限と下限である 2 つの溶出量における Guinier-Zimm プロット

“ln(Kopc/R(θ)) vs. sin2(θ/2)” (a)溶出量 = 8.2 mL、(b) 溶出量 = 7.5 mL。ポリジヒドロシラン のMRgは溶出時間毎のGuinier-Zimmプロットから求められる。

Fig. 3-3(b)で、角度 θ を 0 度に外挿した切片の真数と傾きからそれぞれ M = (4.457 ±

0.245) × 106 g/mol、Rg = (18.6 ± 0.0) nmを、またFig. 3-3(a)からも同様にM = (1.099 ± 0.003)

× 106 g/mol、Rg = (10.0 ± 0.1) nmを得た。溶出量7.5から8.2 mLの範囲において、RgM の誤差はそれぞれ 0–1.0%、5.5–0.3%となった。このように誤差が小さく線形性のよいデ ータを得られた理由は試料の光学特性にある。測定で用いた試料の589 nmにおける屈折 率は、高分子と溶媒でそれぞれ1.7678、1.4466であり、dn/dc = 0.2727と高い値になって いた。従って散乱光強度が強く、高いSN比のデータが得られた。その結果としてFig. 3-3に示すように良好なGuiner-Zimmプロットが得られた。ただし Rgの測定限界から、RgMプロットの解析では領域Aのみを用いた。

シリコン前駆体高分子の解析

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高分子の構造

ここでは固有粘度[]と回転半径 Rgのスケーリング則を用いてポリジヒドロシランの構 造を評価する。照射時間が240分のポリジヒドロシランの[η]とMRgMの対数プロッ

トを Fig. 3-4(a),(b)に示す。これらプロットには(3-2a),(3-2b)式で表されるフィッティング

線を重ねて表示した。

[η] = 0.414M0.206 . (3-2a) Rg = 0.033M0.410. (3-2b)

[η]=KMはMark–Houwink–Sakuradaの式と呼ばれるスケーリング則を表す経験式である。

(3-2a)式でフィッティング線と測定データはよく一致している。Fig. 3-4(a),(b)は M の範囲

が異なるので注意する。前者は 103 から 3

106 g/mol であるのに対し、後者は領域 A 内に限定しており、1.099 × 106から4.457 × 106 g/mol である。

Fig. 3-4照射時間が240分のポリジヒドロシランのシクロヘキセン溶液の(a) [η] vs. M, (b)

Rg vs. M。 図中の直線は、[η]とRg,のスケーリング則を表すフィッティング線。

ポリジヒドロシランのセグメント(モノマーユニット)は分子量 Mmが 30.102 g/mol の [SiH2]であり、高分子の重合度Nは、N = M/Mmで与えられる。従ってRgは次のように記 述される。

Rg = aN (3-3)

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ここでaは[SiH2]の実効長である。(3-3)式を(3-1)式に代入してρ = R/Rgとおくと、Mark–

Houwink–Sakuradaの式[η] = KMが得られる。球モデルでは= 3− 1となるので定数K は次のように与えられる。

10 3

3 m A

K a N

M

 

  

  . (3-4)

このモデルに従うと、粘度指数の実測値= 0.206 における回転半径指数の計算値は=

0.402となる。回転半径指数の実測値は(3-2b)式より= 0.410なので、粘度指数から見積

もられる値との良い一致を示す。これは、[SiH2]をセグメントに持つポリジヒドロシラン 溶液の粘性に対して、球モデルの適用が妥当である事を示す。

シクロヘキセンはポリジヒドロシランの良溶媒であり、正の第二ビリアル係数 A2を示

す(Appendix D)。そのため、仮にポリジヒドロシランが直鎖高分子ならば、の値は θ

媒の0.5から良溶媒の0.8の間になる50。しかしの実験値は0.206 であり、直鎖高分子が 示すの下限値よりもずっと小さい。つまりの値はポリジヒドロシランが分岐鎖を多く 持つ高分子である事を示している。

ρ = R/Rgは流体力学的な分子の広がりに対する形状の情報を与える(ある重量に対する 広がりの大きさ≒密度)。直鎖状もしくは剛体球のポリスチレンの ρ はそれぞれ 0.76 と 1.29 である事が報告されている51。今回測定をしたポリジヒドロシランは、(3-2a,b)式と R= (3[]M/10πNA)1/3 から ρ = 1.222(M)−0.008と求まり、領域 A の上限と下限の M の値 1.099 × 106 と4.457 × 106 g/molに対してそれぞれρは 1.09、1.08となる。ポリジヒドロシランの 流体力学的な特徴はどちらかというと、高分子よりも微粒子に近い。ρ = 1.09 を(2-4)式に代入し、

(2-2a)式のK = 0.414 mL/gを使うと、セグメントの実効長aは0.145 nmと見積もられる。

この値はSiとH間の結合長とよく一致する52,53

ポリジヒドロシランの分岐度を評価するために 1H NMR と FT-IR 測定を行った。分岐 は3官能性分岐点(tri-functional branching points)のSiHで発生していると仮定した。分析で はSiH2 とSiHの数比に注目をした。Fig. 3-5 は照射時間が 240分のポリジヒドロシラン

1H NMRスペクトルである。3.25 ppmのピークは溶解性向上のために添加したCPSの

ピークである。帯状のブロードな信号が 3–4 ppm に現れている。これは高分子の分子内、

分子間相互作用によるものである。Sudarshan54、Goller55の結果によると、4.0–3.2 ppm の 鋭いピークとなだらかな帯はSiH2とSiH3の水素、一方で 3.2–2.9 ppmはSiHの水素由来 に帰属されている。Fig. 3-5で 3.2–2.9 ppm の範囲のスペクトル面積を 1 とおくと、4.0–

3.2 ppmの範囲のスペクトル面積は11.91となった。1つの分岐点(SiH)は1つの末端(SiH3) を与えるので、ポリジヒドロシラン中の SiH と SiH3の数は大体等しいと置く。従ってス

シリコン前駆体高分子の解析

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ペクトル面積で8.91がSiH2の水素量を表す。つまりSiH2と SiHの数比は大体4.5程度と 見積もられる。

Fig. 3-5 照射時間が240分のポリジヒドロシランの1H NMRスペクトル。溶媒は

toluene-d8を用いており、溶解性向上のために若干のCPSを添加してある。

更に水素化アモルファスシリコン膜中のSiHとSiH2を見積もる手法を参考にし、FT-IR スペクトルから SiH2と SiH の数比を見積もった。Fig. 3-6 に照射時間が 240分のポリジ ヒドロシランの1850–2150 cm−1のFT-IRスペクトルを示す。Gauss関数を使って2つに分 離したスペクトルを点線で示す。スペクトル形状は水素化アモルファスシリコン膜中の SiH2とSiHの伸縮振動に対応する2100 and 2000 cm−1の吸収スペクトルと非常に似た形状 を示した。一般に膜中の水素量NHiは振動モード i を使って(3-5)式によって見積もられる

56

( )

Hi i

N A   d

   , (3-5)

ここでは吸収係数、Ai は定数である。SiH2 と SiH の数比、すなわち NH2100/2NH2000は、

A2100 = 2.2×1020A2000 = 9.0×1019 cm−2としてスペクトルから求められる57。スペクトル面積 から見積もったSiH2 とSiHの数比は4.1となった。

Fig. 3-6照射時間が240分のポリジヒドロシランのFT-IR スペクトル

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スケーリング則、1H NMRデータ、FT-IR データから、ポリジヒドロシランの構造に関 する描像を描くことができる。ポリジヒドロシランは微粒子に近い球形状の高密度分岐鎖 高分子であり、4.1–4.5個の直鎖基SiH2に対して1つの分岐点SiH を持っている。Rgと分 岐鎖構造の関係を blob(高分子鎖中の繰り返しの最小ユニットをblob と呼ぶ)モデル58で考 察する。サイズξ,の blobは、3官能性分岐点[SiH]間のモノマーユニット[SiH2]の平均数 g 値で表される。Blob モデルと上述したスケーリング則の比較から、Rgξ,を用いて次の ように表される。

Rg=(N/g). (3-6)

(3-3)、(3-6)式との比較から、ξ = agとなるので= 0.410、g = 4.5a = 0.145 nmを代入す

るとξ = 0.269 nmとなる。CPSの実効サイズは約0.3 nm59なので、ポリジヒドロシランの

分岐は主にCPS、つまり4 つの[SiH2]と 1 つの[SiH]からなる blob を基本単位とした重合 によるものと推測できる。しかしながら、分岐の生成、成長過程、またその構造(櫛型、

ランダム分岐、クロスリンク、星形等違い)の詳細を議論するには、本節の手法のみでは 不十分であり、更なる解析を必要とする。

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