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SiCインクおよびSiC膜の作製

SiC 膜の出発原料としてSiC 前駆体高分子(以後 SiC 高分子)を合成によって得た。この 高分子は CPS とシクロヘキセンが化学的に結合した化学構造を持つ。CPS とシクロヘキ センを混合した後、80°C2時間加熱することでCPSの熱開環重合を行い、SiC高分子を得 た。なおシクロヘキセンの代わりにシクロヘキサンを用いるとSiC高分子を得る事はでき ない。CPSとシクロヘキセンの体積比をX = [シクロヘキセン] / [シクロヘキセン + CPS]

と定義し、Xの値を0 (CPS = 100%)–0.7(CPS = 30%, シクロヘキセン = 70%)と変える事で SiC高分子中の炭素量を調整した。SiC高分子の解析のため、X = 0.6の条件で得た高分子 の分子量分布、分子振動、化学結合をそれぞれ SEC、FT-IR、1H-NMR によって評価した。

SECおよび1H-NMR測定の試料作製は3章と同じ条件とした。

SiC 高分子は、その濃度が 10 wt.%となるようにシクロオクタンに溶解させ、SiC イン クとした。SiC インクをスピンコート法によって基板上に成膜後、ホットプレートで

390°C 30分焼成を行い、アモルファスSiC膜を得た。

n-Siインクおよびn-Si膜の作製

n-Si膜の出発原料としてn型ポリジヒドロシランを合成によって得た。ドーパントとし て使用する白燐は次の手順に従い赤燐の熱分解によって得た。乳鉢で細かく粉砕した赤燐

(アルドリッチ)の粉末数グラムを200 mLの丸型フラスコ内にセットし、冷却管をセッ トした状態でマントルヒーターで430°C, 6時間加熱をした(Fig. 7-1)。昇華した赤燐は白燐 として冷却管内に堆積した。室温まで冷却後、冷却管内壁に付着した白燐を二硫化炭素で 溶解させて回収をした。この白燐溶液を 0.2 m フィルターで濾過後、窒素のバブリング によって二硫化炭素を気化させて無色透明の白燐を得た。次にこの白燐を CPS に添加し 60°C で加熱溶解させた後、光開環重合することで白燐がドープされた n 型ポリジヒドロ シランを得た。重合条件は照射波長405 nm、強度300 mW/cm2とした。高分子の重合速度 は白燐の添加量によって大きく変化するため、光の照射時間は5–120分の範囲で調整をし た。白燐の濃度は0.01–3 wt.%とした。n型ポリジヒドロシランの濃度が2–10 wt.%となる ようにシクロオクタンに溶解させ、n 型シリコンインクとした。スピンコート法によって 基板上に成膜後、ホットプレートで390°C, 30分焼成を行い、n-Si膜を得た。

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Fig. 7-1 赤燐の熱分解の器具構成

p-Siインクおよびp-Si膜の作製

p-Si膜の出発原料としてp型ポリジヒドロシランを合成によって得た。デカボラン(第 一化成産業)をCPSに添加し80°Cで加熱溶解させた後、光開環重合することでデカボラ ンがドープされた p 型ポリジヒドロシランを得た。重合条件は、照射波長 365 nm、強度

15 mW/cm2、照射時間10-60分とした。デカボランの濃度は0.01–1.5 wt.%とした。p型ポ

リジヒドロシランの濃度が2–10 wt.%となるようにCPSに溶解させ、p型シリコンインク とした。スピンコート法によって基板上に成膜後、その基板を小型の密閉容器に入れ、容 器ごとホットプレートで390°C, 30分焼成を行った。

水素ラジカル処理

6 章から明らかなように、塗布法によって得た i-Si膜の光伝導度は真空法によって得た i-Si膜102のそれよりも約 2 桁低い。従って光伝導度向上を目的に、水素ラジカル処理を試 みた。この処理によって膜中の欠陥を低減させ、光伝導度の向上を図る。水素ラジカル処 理にはホットワイヤー-CVD 装置を用いた。装置は文献103を参考に作成した。触媒金属に

は直径0.5 mm、長さ100 cmのタングステン線を用いた。タングステン線は10 × 10 cmの

塗布法によるドープシリコン膜およびシリコンカーバイド膜の作製と 薄膜シリコン太陽電池への応用

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エリアにジグザグに張られ、基板ステージから10 cm離れた位置に設置した。チャンバー 中にシリコンが堆積した基板をセット後 5×10-4 Pa まで真空引きをした。基板を 200°C、 タングステン線を抵抗加熱で 1850°C に加熱し、純度 99.9999%の水素ガスを流速 15 ccm で15分間、チャンバーに導入した。水素ガス導入中のチャンバー圧力は0.2 Paとなるよ うに調整をした。タングステン表面で分解された水素ラジカルがシリコン膜中に進入し、

欠陥を終端する。

薄膜の特性評価

SiC 膜は、光学ギャップ、膜構造、膜中の炭素濃度をそれぞれ UV-vis TR (Scientific Computing International, FilmTek-3000)、FT-IR、XPS によって測定した。p-Si および n-Si 膜 は 、 ネ ッ ト ワ ー ク 構 造 の 構 築 を 低 周 波 の 光 学 バ ン ド を ラ マ ン 分 光 器(Renishaw,

Ramascope)によって測定した。膜中の水素濃度、ドーパント濃度を SIMS(PHI,

model-6300)によって測定した。光学ギャップ、スピン密度を UV-vis TR と ESR(JEOL, JES-FA

100)で測定した。伝導度は、250 mギャップのAlの対向電極をシリコン膜上に蒸着で成 膜し、電流-電圧特性から求めた。光伝導度測定では光源に疑似太陽光 AM-1.5G(強度 100 mW/cm2)を用いた。

太陽電池セルの作製

理想的な薄膜シリコン太陽電池では、光入射側の窓層として光透過率の大きなp型SiC 膜を採用したヘテロ接合構造が用いられる。しかし本研究では原理実証を目的とするため、

より伝統的な構造であるpin-Siのホモ接合構造においてセルの作製を行う。

セルは以下の手順に従って作製をした。ガラス基板上に厚さ 200 nm、シート抵抗 50

Ω/sqのZnO(Alドープ)透明導電膜をスパッタ法で成膜をした。次にスピンコート法にてp

型シリコンインクを塗布後、390°Cで30分焼成をして厚さ30 nmのp-Si膜を得た。その 膜の上に同様にi-Si膜(厚さ120 nmもしくは400 nm)、n-Si膜(厚さ20 nm)を順次成膜した。

p,i,n-Siを積層した膜に対して水素ラジカル処理を行った。最後に、上電極として厚み200

nm、サイズ5 × 5 mmのAlを蒸着によって成膜した。下電極の取り出しはFig. 7-2にある

ようにSi膜の一部をダイヤペンで削り取って銀ペーストを埋め込んだ。

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Fig. 7-2 溶液法で作製した太陽電池セルの構造

i-Si膜の厚み、もしくはp-Si膜のドーパント濃度を変え3種類のセル(cell-1, -2, -3)を作 製した。条件をTable 7-1に示す。ドーパント濃度はSIMSによって測定をした。

Table 7-1 作製した3つのセルの膜厚とドーパント濃度の一覧

cell 1 cell 2 cell 3

n-Si: thickness [nm]

(dopant concentration [cm-3])

30 (2 × 1021)

30 (2 × 1021)

30 (2 × 1021)

i-Si: thickness 120 120 400

p-Si: thickness [nm]

(dopant concentration [cm-3])

30 (7 × 1021)

30 (1 × 1021)

30 (7 × 1020)

塗布法によるドープシリコン膜およびシリコンカーバイド膜の作製と 薄膜シリコン太陽電池への応用

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