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締付け方法と締付けボルト軸力

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第 4 章 高力ボルト接合

4.5 ボルトの締付け

4.5.1 締付け方法と締付けボルト軸力

  高力ボルトの締付けにあたっては,所定の設計ボルト軸力が得られるように適切な方法を用いて締付ける.

【解  説】 

(1)

ボルトの締付け方法

  高力ボルトの締付け方法には,一般に次に示す方法が用いられる.

① トルク法

② ナット回転法

③ 耐力点法

①トルク法

1)

高力六角ボルト

  トルク法による高力六角ボルトの締付けは,ボルト軸力と締付けトルクの比例関係を利用して締付け機の締付 けトルクを制御することにより,所定の締付けボルト軸力を保証する工法である.締付けトルクは式(

4.5.1

)で 表される.

  T=k・d・N  (4.5.1)

  T:ナットの締付けトルク         k:トルク係数値

        d:ボルトの呼び径         N:締付けボルト軸力

  この式から明らかなように,トルク係数値は高力ボルトの締付け軸力を正確に導入するために極めて重要な要 素である.したがって,ボルトセットは工場出荷時および現場搬入後のトルク係数値のばらつきが少なく,締付 け調整時と施工時の温度変化によるトルク係数値の変動が少ないことが必要である(表-解

4.5.1)

 

1製造ロットの出荷時のトルク係数値の平均値 0.1100.160 1製造ロットの出荷時のトルク係数値の変動係数 5%以下 1製造ロットのトルク係数値の平均値の温度による変化

20℃の温度変化に対して,出荷時のトルク係数 値の平均値の5%以内

なお,セットのトルク係数値はナットをまわして締付けた場合について定められているので,ボルトの締付 けはナットをまわして行うのが原則である.施工上やむを得ずボルト頭をまわす場合は,改めてその値を確認す る必要がある.なお,トルク係数値を減じるために表面処理を行った座金を用いる場合は,それを回転させる側 に用いるように注意しなければならない.

2)

トルシア形高力ボルト

トルシア形高力ボルトを使用する場合は,専用の締付け機を用いるものとする.トルシア形高力ボルトの締 付け機のソケット部は,ナットとピンテールを保持する

2

個のソケットからなる.外側のソケットは,ナットを 保持して締付けトルクを与え,内側のソケットは,ピンテールを保持して締付けトルクの反力を伝達する構造で ある.両方のソケットは,互いに逆方向に回転し,締付けトルクが,破断溝の破断トルクに達して切断するまで

表-解4.5.1  高力六角ボルトセットのトルク係数値[日本道路協会,2002]

図-解4.5.1  ボルトの軸力とナットの回転角 

スナッグタイト

ソケットが回転する.

② ナット回転法[日本橋梁建設協会,1998]

  高力ボルトを締付ける場合の回転量とボルト軸力の関係は,図

-

4.5.1

に示すように母板と連結板が密着した 後,ナットの回転量が

90°ないしは 120°

まで直線的に上昇し,その後,遊びねじ部での塑性が始まる.

ボルトの締付けをナット回転法によって行う場合は,接触面の肌すきがなくなる程度にトルクレンチで締めた 状態あるいは組立用スパナで力いっぱい締めた状態(スナッグタイト)から,ナットを次に示す規定の角度まで 回転させて所定のボルト軸力を導入する.ただし,ナット回転法は

F8T

のみに用いるものとする.

・ボルト長が径の

5

倍以下の場合:

1/3

回転(

120

度)

±30

・ボルト長が径の

5

倍を越える場合:施工条件に一致した予備試験によって目標回転角を決定する.

  ナット回転量

120°でボルトを締付けた場合,通常,設計ボルト軸力の標準値に対して 1.4

倍程度の締付けボル ト軸力が得られ,ボルトねじ部は若干塑性領域に入っている.橋梁における高力ボルト摩擦接合で,ナット回転 法が認められているのは

F8T

のみである.

F10T

F8T

と同様な変形特性を示すが,遅れ破壊に対する実験デー タの不足によりナット回転法の適用は

F8T

に限定されている.

  なお,薄板における単せん断継手など締付け板厚が小さくなる場合,締付け板厚が大きい場合に比べて小さい 回転角度でボルトの塑性が始まる.したがって,このような場合のナット回転角度は,マイナス側の締付け角度 で管理することが好ましい.

③ 耐力点法

  締付け時のボルト軸力は,図-解

4.5.1

に示すように弾性域ではナット回転量と比例関係にあり,これを越える とその関係は変化する.耐力点法は,ボルト軸力がボルト耐力(0.2%耐力)に達したことを専用レンチで電気 的に検知し,導入軸力の制御を行う方法である.導入軸力が耐力点に達するので,遅れ破壊防止の観点からボル ト材料の化学成分,硬さ,焼き戻し温度が規格値を満足している必要がある[日本橋梁建設協会,1999]. 

                                   

  トルク法,耐力点法およびナット回転角法の特徴を表-解

4.5.2

にまとめる.

表-解4.5.2  ボルトの締付け方法の比較 

締付け方法  特徴  締付け機  主な適用対象 

トルク法  締付け時のボルト軸力と締付けトルクが線形関係にあること を利用し,締付けトルクを制御する方法. 

締付けは弾性域で終了する(耐力点法よりも導入軸力は小さ い). 

毎日現場予備試験を行い,出力調整した締付け機を用いる必要 がある. 

締付けトルクを制御 できる締付け機 

実績が多い. 

太径ボルトには向 かない. 

耐力点法  締付け時のボルト軸力とナット回転角の関係に注目している.

弾性域ではボルト軸力とナット回転角は線形関係にあり,これ を超えると非線形関係を示す.この非線形関係となる開始点の 近傍(ボルト耐力の近傍)を電気的に関知して締付けを完了す る方法. 

締付けは弾塑性域で終了する(トルク法に比べて 10 から 20%

高めの軸力が導入される). 

ボルト個々の耐力を電気的に検知していることから導入軸力 のばらつきが少なく,セットのトルク係数値などに影響されに くい. 

耐力点を電気的に検 知できる専用の締付 け機 

太径ボルト  厚膜型ジンクリッ チペイントを用い た部材接合に有利.

ナット  回転角法 

接触面の肌すきがなくなる程度にトルクレンチで締めた状態 あるいは組立用スパナで力いっぱい締めた状態(スナッグタイ ト)から,ナットを規定の角度まで回転させて締付ける方法.

締付け軸力は,トルク法,耐力点法に比べて最も高く,ボルト 耐力を超える(塑性域). 

ナットの回転角を管理することから施工管理が容易であり,専 用の締付け機を必要としない 

  F8T,B8T を対象 

  高力ボルト引張接合では,接合部に作用する引張力によってボルト軸力が初期に導入した軸力よりも増加する ことが避けられないことから,初期ボルト軸力が弾性範囲内にあるトルク法で締付けることを原則としている.

長締め形式については,高力ボルトを使用しない場合もあることから,トルク法以外に引張ジャッキによる方法 を採用してもよい.引張ジャッキによる方法は,PC鋼棒の緊張などで使用される方法と原理は同じであり,ナ ットを回した際に生じるボルト軸部のねじりがないことから長締め形式においては最も信頼性の高い方法とい える.長締め形式において,トルク法によりボルト軸力を導入する場合は,ボルトの軸部が長くなるため,ねじ りによるトルク係数の変化を確認しておく必要がある[日本鋼構造協会,2004].

(2)

締付けボルト軸力

締付けボルト軸力は,設計ボルト軸力を十分確保するために施工時に目標とすべき導入ボルト軸力であり,締 付け方法が異なれば,締付けボルト軸力も異なり,それに対応して管理方法も異なる.したがって,高力ボルト の締付けにあたっては,選択した締付け方法に対応した締付けボルト軸力が導入されるように適切な方法で管理 しなければならない.締付けボルト軸力は,標準ボルト軸力と呼ばれることも多い.

① トルク法における締付けボルト軸力 

トルク法における締付けボルト軸力は,設計ボルト軸力の

10%増しを標準とする.これは,トルク係数値の

ばらつき,クリープやリラクセーション等の影響を考慮したものである.表

-

4.5.3

に高力六角ボルトのトルク 法における締付けボルト軸力の標準値を示す.

セット ねじの呼び 設計ボルト軸力(kN 締付けボルト軸力(kN

M20 133 146

M22 165 182

M24 192 211

M27 245 270

M30 305 336

F8T

M36 444 488

M20 165 182

M22 205 226

M24 238 262

M27 310 341

M30 379 417

F10T

M36 551 606

② トルシア形高力ボルトの締付けボルト軸力

トルシア形高力ボルトの締付けは,専用締付け機がトルクを制御する機能をもたないので,ボルトの性能に より締付け軸力が左右される.したがって,工場出荷時において締付けボルト軸力の平均値が一定の範囲に入っ ていることを確認するとともに,工場出荷時から現場施工時までにその性能が保持されていることを確認しなけ ればならない.トルシア形高力ボルトの常温時(10〜30℃)の締付けボルト軸力は,一つの製造ロットから

5

組の供試セットを無作為に抽出して試験を行い,その平均値が所定のボルト軸力の範囲に入らなければならない.

-

4.5.4

は,常温時におけるトルシア形高力ボルトの締付けボルト軸力範囲の一例について示したものである.

セット ねじの呼び 設計ボルト軸力の 標準値(kN)

1製造ロットのセットの締付け 

ボルト軸力の平均値(kN) 備考

M20 165 172〜202 (103〜122%)

M22 205 212249 (103121%) M24 238 247290 (104122%)

日本道路協会 道路橋示方書 M27 310 322388 (104125%)

S10T

M30 379 394474 (104125%) 国土交通省  大臣認定

  注.表中()内数値は,設計ボルト軸力に対する締付けボルト軸力の比率を示す.

なお,現場での締付けボルト軸力試験では,試験に用いる検査機器の機能上の制約から,あらゆる首下長さ のボルトに対して試験を行うことが困難な場合がある.このような場合には,使用ボルトと同じ製造メーカーか ら同一時期に現場搬入され,かつ,同一の保管環境に置いた呼び径の等しいボルトのうちから試験可能な首下長 さのボルトを抽出して締付け試験を実施し,工場出荷時の性能が現場搬入後においても保持されていることを確 認することで使用ボルトの性能を保証してもよい.

表-解4.5.4  トルシア形高力ボルトの常温時(10〜30℃)の締付けボルト軸力の平均値  表-解4.5.3  高力六角ボルトのトルク法による締付けボルト軸力の標準値 

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