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施工上注意すべき点

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第 4 章 高力ボルト接合

4.5 ボルトの締付け

4.5.4 施工上注意すべき点

  高力ボルトの締付け施工では,以下の点について十分留意する.

(1)

高力ボルトの品質管理および保管

(2)

接合面の処理

(3)

締付ける材片の組立精度

(4)

接合部材の組立

(5)

締付け方法と締付け軸力の管理

(6)

ボルトの締付け機,測定器具等の検定

(7)

ボルト締付け時の天候

【解  説】 

(1)

高力ボルトの品質管理および保管

ボルト,ナット,座金およびそのセットについては,工場出荷時にその特性や品質を保証する試験,検査を 行い,機械的性質や形状寸法,トルク係数値,締付け軸力値等が所定の規格に合格していることを確認しなけれ ばならない.また,現場搬入時には,検査成績書と照合し,特性や品質が保証されたボルトセットであることを 確認しなければならない.

ボルトのセットは,工場出荷時の品質が現場施工時まで保たれるように,その梱包と現場保管に注意しなけ ればならない.ボルトセットの保管にあたっては,できるだけ工場包装のまま保管庫に収納し,雨や夜露等の湿 気があたらないように注意し,工場出荷時の品質が現場施工時まで保たれるようにしなければならない.開包後 は雨や夜露等による濡れ,さびの発生,ほこり・砂等のねじ部への付着,乱暴な扱いによるねじ部のいたみなど による品質の変化が生じやすいので,包装はできるだけ施工直前に解くようにしなければならない.このために は,ボルト締付け施工箇所へのボルトの搬入を計画的に行い,余分な開包を行わないよう注意する.また,工場 出荷時の品質を施工時まで確保しておくためには,上記の注意をはらうとともに,工場出荷時から現場施工時ま での期間をできるだけ短くするよう配慮することが望ましい.

(2)

接合面の処理

接合面については,設計で用いたすべり係数が得られるように適切な処理を行う.接合面の処理については

「4.4 接合面」の処理を参照されたい.

(3)

締付ける材片の組立精度

締付け後の継手性能や締付け施工に問題が生じないように,継手部における部材同士の食い違いや孔ずれ等 に関して,部材製作時の精度確保に注意をはらうものとする.特に部材同士の食い違いについては現場で食い違 いを矯正することは困難であり,著しい食い違いが生じないように工場製作時に留意することが重要である.な お,部材の食い違い等が接合面の密着や継手性能に少なからず影響する可能性が懸念される場合の改善対策とし て,接合面に板厚調整用のフィラーを挿入する,あるいは,母板にテーパー加工を施して段差の影響を緩和する などの処理方法が有効と考えられる.肌すき等の影響に関しては,高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工・維持 管理指針(案)[土木学会,2006]に述べられており,これらを参考にすることができる.

現場継手部のすき間から水の浸入が問題となる場合には,止水材を充填する等の防水処理を行う.

(4)

接合部材の組立

部材の組立に使用する仮締めボルトとドリフトピンとの合計は,その箇所の連結ボルト数の

1/3

程度を標準と し,そのうちの

1/3

以上をドリフトピンとするのがよい.ただし,大きな架設応力が作用する場合は,その架設 応力に十分耐えるだけの仮締めボルトとドリフトピンを用いる.

仮締めボルトとドリフトピンの合計が,連結ボルト本数の

1/3

を標準とするというのは,一応の目安であり施 工方法によって増減する.例えば,現場の事情でどうしてもベントの設置が不可能な場合はその数を多くし,ケ ーブルエレクション工法の場合にはむしろその数を減らし部材間の自由度を増やすように考慮して施工する方 が有利となることもある.

また,仮締めボルトとドリフトピンの合計の

1/3

以上をドリフトピンとするのは,ドリフトピンは位置決めに 使用し,ボルトは肌合わせに使用することをそれぞれの目的とするためである.

(5)

締付け方法と締付け軸力の管理

高力ボルトの締付け方法については,すでに,「

4.5.1

ボルトの締め付けと締付け軸力」で述べたように,締 付け軸力の管理方法により,トルク法,ナット回転法,耐力点法等がある.それぞれの方法に応じて特定のボル トや締付け機器を使用する場合がある.したがって,使用するボルトの種類や締付け機器の特性を十分に把握し た上で,締付け施工およびその品質管理を行わなければならない.

(6)

ボルトの締付け機,測定器具等の検定

ボルトの締付け機,測定器具等の検定は,適切な時期に行いその精度を確認する.ここでいう器具の検定と は,定期検定のことであり現場における日常の検定ではない.

1)

ボルト軸力計

軸力計には,油圧の変化で軸力を測定するものとひずみゲージを利用したロードセルタイプのものとがある が,これらは常に規定された精度内で使用できるようにしておかなければならない.このため,現場施工に先立 ち,現場搬入直前に

1

回,その後も定期的に検定を行ってその精度を確認する必要がある.軸力計の精度は,ト ルクレンチ等に比べて取扱いによる影響を受けることが少ないので,定期検定は

3

カ月に

1

回を標準として行え ばよい.

なお,ボルトによって締付けられる軸力計の被締付け部分の剛性は,必ずしも実部材の剛性と同じでない.

このため,同一の出力トルクで軸力計と実部材とを締付けた場合では,導入されるボルト軸力に若干差が生じる ことがある.したがって,なるべく実部材に近い剛性をもった軸力計を使用するのが望ましい.

2)

トルクレンチ

トルクレンチにはトルクをダイヤルゲージの目盛で読むもの,トルクレンチのたわみを利用して目盛を読む もの,ラチェット式のもの等があるが,いずれも粗雑に取り扱うと狂いが生じやすい.したがって,トルクレン チの検定は現場搬入時に

1

回,搬入後は

1

カ月に

1

回を標準とし,使用頻度によっては定期検定の期問を別に定 めるのがよい.

3)

ボルト締付け機

締付け機には電動式と油圧式とがあるが,いずれも締付け精度の持続性がよいので現場搬入前に1回点検し,

搬入後の定期検定は

3

カ月に

1

回を標準としてよい.電動式,油圧式いずれの締付け機もガンと制御装置あるい は油圧調整装置が組合わされて使用されるので,定期検定はその組合せに対して行う.また,トルク法による場 合,出力トルクの精度は使用するトルク値の範囲内で数段階に分けて検定する.

上記締付け機以外にも電気式によるトルク制御式インパクトレンチがあるが,微調整が困難であり,締付け 精度の持続性にも問題があるので,本締めには使用しないのがよい.

ただし,予備締めではそれほど締付け精度を要しないので,作業能率のよいトルク制御式インパクトレンチ を用いてもよい.

4)

トルシア形高力ボルト締付け機

トルシア形高力ボルトの締付け機のソケット部は,ナットとピンテールを保持する

2

個のソケットからなる.

外側のソケットは,ナットを保持して締付けトルクを与え,内側のソケットは,ピンテールを保持して締付けト ルクの反力を伝達する構造である.両方のソケットは,互いに逆方向に回転し,締付けトルクが,破断溝の破断 トルクに達して切断するまでソケットが回転する.

このように締付けトルクはピンテールを切断することにより制御されるので,専用締付け機は,トルクを制御 する機能をもたず単にトルクを与えるためのものであることから,検定の必要はなく,整備点検を行えばよい.

(7)

ボルト締付け時の天候[日本橋梁建設協会,2001]

降雨の際のボルト締付け作業は行わないことを原則とする.水に濡れた状態で高力ボルトを締付けた場合,

そのトルク係数値が変化し,ばらつきも増大する.そのため,トルク法を用いる場合の締付けやトルシア形高力 ボルトの締付けでは,締付け軸力に直接影響を及ぼす.耐力点法の場合,トルク係数値が直ちに締付け軸力へ関 与することはないが,トルク係数値の増大に伴いボルトの捩り負荷が増大するので,最終軸力に若干の変動が生 じることが確認されている.

また,接合部材や高力ボルトが湿った状態で施工すると,その後の防錆処理に影響を及ぼす可能性がある.

特に締付け軸力の大きい耐力点法の場合には,ボルトの微少な腐食によるピットなどが遅れ破壊に影響を及ぼす 要因となるので細心の注意が必要である.

第4章の参考文献 

日本道路協会(1971):支圧接合用打込み式高力ボルト・六角ナット・平座金暫定規格 田島二郎(1972):高力ボルト摩擦接合概説,技報堂

日本道路協会(1980):道路橋示方書・同解説 鋼橋編

日本鋼構造協会(1981):JSSⅡ01-1981 打込式高力ボルト・六角ナット・平座金のセット・解説 日本道路協会(1983):摩擦接合用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット・解説

日本鋼構造協会(1987):鋼構造物における孔加工法の現状と各種関連規定類の見直しについて,JSSCレポートNo.2 本州四国連絡橋公団(1989):上部構造設計基準.

三木千壽,森  猛,稲沢秀行,中村賢造(1989):押し抜きせん断加工孔を用いた高力ボルト摩擦接合継手の疲労強度,土木学会論 文集,No.410/I-12,pp.345-350

秋山寿行,播本章一,西村宣男(1991):高力ボルト摩擦接合継手に関する設計基準の国際比較,土木学会第46回年次学術講演 会概要集,pp.578〜579.

奥川淳志,高城信彦,大江慎一(1991):本州四国連絡橋での摩擦接合用高力ボルトの使用実績,本四技報Vol.15 No.59 黒田充紀,増田陳紀,利守尚久(1992):スプリット・ティー接合の力学的挙動に及ぼす溶接角変形の影響,土木学会論文集,

No.441/I-18,pp.127-136.

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