6.1
高力ボルト摩擦接合と溶接の併用継手6.1.1 高力ボルト摩擦接合と溶接の併用継手の施工上の要求性能
高力ボルト摩擦接合と溶接の併用継手は,完成後の継手が設計で定めた要求性能を満足するように施工 しなければならない.
6.1.2 施工手順
高力ボルト摩擦接合と溶接の併用継手は,溶接に対する拘束を小さくし,かつ溶接変形に伴うボルト継 手部のすべり耐力の低下が生じないような手順で施工しなければならない.
には,溶接の完了後に高力ボルトを締め付けるのがよい.道路橋示方書・同解説[日本道路協会,2002]では,
I
形 断面および箱形断面の一般的な鋼桁において,上フランジ(鋼床版を含む)を溶接とし,ウェブおよび下フラン ジを高力ボルト摩擦接合とする場合(図-解 6.1.1(a))には,上フランジの溶接前に,下フランジおよびその近傍(部材の中立軸より下方でウェブ高さの
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程度)のウェブのボルトを締付けてもよいこととしている.ただし 溶接継手部から十分に離れた位置において,高力ボルトを先締めしてもそれによる拘束の影響が小さく,溶接継 手部に有害な欠陥が生じないこと,高力ボルト継手部のすべり耐力が設計での要求値を満足することが確認され た場合には,その範囲内において高力ボルトを先締めしてもよい.溶接に伴う変形を少なくする観点からは,ボルトの締付けを先にすべきであるとの議論もあり,鋼構造接合部 設計指針[日本建築学会,2006]においてはそれを原則としているが,本示方書では過去の実績などを考慮し,溶 接に対する拘束を少なくし,また,溶接に伴う変形によるすべり耐力の低下を防止するために,溶接後にボルト の締付けを行うこととした.
上下フランジを溶接,ウェブを高力ボルト摩擦接合とする場合(図-解 6.1.1(b))で,上下フランジから離れた ウェブ中央部のボルトを溶接前に締付けて施工された例がある.この場合,ボルトを先締めできる範囲について は,それによる拘束の影響が小さいことを十分に確認した上で決定しなければならない.
フランジを高力ボルト摩擦接合としてウェブを溶接とするような併用継手など,それ以外の組み合わせの併用 継手については,その使用実績も少なく,施工手順について不明な点も多い.したがって,そのような併用継手 の施工については,施工手順が継手性能に及ぼす影響について十分に検討しなければならない.
【解 説】
溶接後に後締めを行うボルト継手部には,溶接収縮に伴う変形により連結板と母材とのボルト孔位置のずれや 桁のキャンバー変化等の生じる場合があるので,設計時に溶接変形による影響について予め検討し,必要に応じ て拡大孔の使用等の対策を講じておかなければならない.
【解 説】
併用継手における溶接継手の施工方法や検査方法は,「
5
章 溶接接合」に従うものとする.【解 説】
高力ボルトの締付けに先だって溶接を施工する場合で,開先精度や部材形状を確保するために溶接前にボルト を一時的に仮締付けするような場合においては,溶接による変形を拘束しないように仮締付けの範囲を決定しな
6.1.3 高力ボルト継手の施工
高力ボルト継手部は,溶接による変形の影響について検討した上で,「第
4
章 高力ボルト接合」に従 って施工しなければならない.6.1.4 溶接継手の施工
溶接継手部は「第
5
章 溶接接合」に従って施工しなければならない.6.1.5 ボルトの仮締め
開先精度や部材形状を確保するために溶接前にボルトを一時的に仮締付けする場合,それによって溶接 による変形を拘束しないようにしなければならない.
ければならない.また,仮締付けするボルトの締付け軸力は予備締付け程度とし,本締付けを行ってはならない.
仮締付けを行った高力ボルトは溶接完了後に新しいものに取替えて本締付けを行わなければならない.
【解 説】
ピン継手は,完成後の継手が設計で定めた軸力を確実に伝達でき,かつヒンジとしての回転が確保できるよう に施工しなければならない.
【解 説】
(1)
部材をピンで連結する場合,部材の移動は振動の原因となり二次応力を生じるので,部材が定められた位置 から移動しないようにカラーを用いる等の方法によって,部材片の位置を固定しなければならない.(2)
ピンとピン孔の直径の差として,道路橋示方書・同解説[日本道路協会, 2002]や鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物)[鉄道総合技術研究所,2000]では,直径
130mm
以下のピンでは0.5mm,それ以上で 1mm
として よいと規定しているので,これらを参考にしてよい.【解 説】
普通ボルト継手に用いるボルトは「2.9 その他の材料」に示す品質のものを使用する.普通ボルト継手の接合 方法としては支圧接合と軸力を導入しない引張接合があり,それぞれ応力の伝達機構が異なるので,施工に際し てはその特徴を十分に理解し,継手に要求される性能を確保するよう施工しなければならない.
【解 説】
6.2
ピン継手6.2.1 ピン継手の施工上の要求性能
ピン継手は,完成後の継手が設計で定めた要求性能を満足するように施工しなければならない.
6.2.2 施工上の留意点
(1)
ピンで部材を連結する場合は,その連結部で部材が移動しないようにし,適当な方法でナットがゆる まないようにするものとする.また,ピンおよびピン孔は回転による摩擦の影響が少なくなるように 配慮するものとする.(2)
ピンとピン孔の直径の差は,ヒンジとして回転する限り,組み立てに無理のない範囲でなるべく小さ くするものとする.6.3
普通ボルト継手6.3.1 普通ボルト継手の施工上の要求性能
普通ボルト継手は,完成後の継手が設計で定めた要求性能を満足するように施工しなければならない.
6.3.2 施工上の留意点
普通ボルト継手の施工にあたっては,ボルトが適切に締め付けられるよう留意する.
普通ボルト継手は軸力導入による接触力を利用した高力ボルト継手とは異なるため,高力ボルト継手に要求さ れるような軸力管理は一般には不要であるが,ボルトにゆるみのないよう,適切に締め付けなければならない.
締め付け機を使用する場合にはあらかじめ検定を行った上で使用しなければならない.振動などによりゆるむ恐 れのある箇所に使用する場合には,ゆるみ止めナットを使用するなど,ゆるみ止め対策を行うのがよい.
第6章の参考文献
日本道路協会(2002):道路橋示方書・同解説II鋼橋編 日本建築学会(2006):鋼構造接合部設計指針
鉄道総合技術研究所(2000):鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物)
【解 説】
部材計測方法としては,スティールテープや差し金を用いて直接部材寸法を計測する方法や,光波測距儀によ り部材の座標を計測する方法がある.確保すべき部材精度は,構造物の形式や架設方法によっても異なるが,完 成後の構造物が設計で想定している性能を満たすよう,また架設が確実に行えるように設定しなければならない.
例えば,道路橋示方書では表-解
7.1.1
ように規定されている.道路橋示方書[日本道路協会,2002a]の測定箇所又 は個数を表-
解7.1.2
に示す.また,他国の基準として,BS
[BS5400 Pt6,1980]では,板の平面度,フランジの直線 度,腹板の鉛直度等の局部的な変形の許容値が規定されているだけで,部材全体寸法を規定するものがない.ま た,AWS
[AWS D1.5−95,1995]では,部材の直線度,腹板の平面度,フランジの直角度等の局部変形以外に,腹 板の高さ寸法の許容値が記載されている.それらの許容値を表-
解7.1.3
に示す.部材計測を行った結果,予め定められた精度を満たさない場合には,原則として精度(許容値)を満たすよう に調整あるいは補修を行う.そのような場合の補修や調整方法については,廃棄を含めて予め定めておくとよい.
部材を一部切断して再溶接する場合には,
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章に示す溶接の方法に従う.ただし,部材補修では溶接姿勢が限定 されることが考えられるため,注意が必要である.また,補修箇所は非破壊検査等で有害なきずがないことを確 認する必要がある.予め定めた精度を満たさない部材を補修なしで使用せざるを得ない場合には,設計での要求 性能を満足し,また架設上問題のないことを確認する必要がある.