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第 1 章 低コスト打上げシステムの事例調査・分析

1.4 諸外国の空中発射システム検討動向

1.4.7 総括

空中打上げシステム開発国は、アメリカ、ロシア、ウクライナ、イスラエル、スペイン、

フランスであり、カザフスタン及びオーストラリアは開発国の技術移転に基づいて開発さ れている。その空中打上システム開発一覧を以下に示す。

アメリカでは、Pegasus ロケット実用化以降、空中打上げシステムの開発は進まなかった。

しかし近年、短期的には小型衛星打上げ手段の確立として固体・液体ロケットをベースに 様々な打上げ手段が検討されている。注目すべきことは、アメリカの大手宇宙メーカーの Boeing、Lockheed Martin、Northrop Grumman 全てが空中打上げシステム開発に参加してい

Launch Vehicle(固体or液体) Aircraft Boeing/Orbital Science 既存ロケットモータ F-15GSE Orbital Science

Peacekeeper(固体&液体) An-124AL Northrop Grumman/PAN AERO 名称不明(液体) F-14 Northrop Grumman

Airlaunch LLC Quickreach(液体) C-17

Space Launch 名称不明(固体) F-4G

XCORE Aerospace 名称不明(?) Original

RocketPlane Japan hokkaido hybrid(hybrid) Modify Reajet25(XP)

Delta ?(液体) Modify C-5(twin C-5) Russia/Kazakhstan/Germany(?)ISHIM(固体) Mig-31

Russia/Australia/UK(?) M-55 launcher(固体) M-55 Air Launch System incorporates Polyot(液体) An-124AL

Yuzhnoyes SDO Svitiaz(液体) Modify An-225

イスラエル

RAFAEL HAL、LAL(固体) F-15、B-747、G550

フランス

ONERA、CNES 名称不明(固体) Multipurpose HA UAV

スペイン

INTA AQUARIUS(固体) F-18、E-2000

日産(現IHI Aerospace) M-V (固体) B-747

日産(現IHI Aerospace) SS-520(固体) C-130, F-15

ABSL(Aircraft Based Satellite Launch) System Developer

HLV (Hybrid launch Vehicle)

アメリカ

ロシア ウクライナ

HLV (Hybrid launch Vehicle) HLV (Hybrid launch Vehicle) Lockheed Martin

SPACEWORKS Engineering HLV (Hybrid launch Vehicle)

日本(?)

Coutry/Company

ることである。そして中・長期的には HLV(Hybrid launch Vehicle)という、空中発射母 機が無人化し、さらに高高度からロケットを打ち出すシステムの検討研究を国防系予算か ら受けている。この HLV は実質的に TSTO(2 段式宇宙輸送機)であり、空中打上げシステ ムを開発している企業へ提案研究をさせている事実から、空中打上げシステム技術と TSTO 技術は関係しているものと思われる。また、アメリカが使い捨てロケットから一部再使用 化を進めようと、模索をしていると見られる。Spaceworks 社の ARES のように、米国が有す る技術を組み合わせて実現性が見込まれる方法論が発表されるようになったため、空中打 上げシステム技術が将来アメリカの将来輸送技術へ派生していく可能性は高いと思われる。

この動向から、アメリカでの空中打上げシステムは、「ロケットとしての利用」と「将来 技術の追求」という 2 種類の目的があると思われる。

ロシアやウクライナでは、小型は固体、大型は液体の空中打上げシステムを検討・開発 中である。特に小型の ISHIM と M-55 ランチャーは、ロシアがカザフスタンとオーストラリ アを巻き込んで製造・開発中であり、近い将来実現が見込まれる。大型の Polyot と Svitiaz は、実現すればアメリカの QuickReach を上回るため、空中打上げシステム能力として世界 一となる可能性がある。また、空中打上げシステムではないが、ロケットのブースタが飛 行回収されるフライバックブースタの開発がクルニチェフやエネルギアで行われ、空中打 上システム技術に類する開発も行われている。今後、アメリカを含むに各国の開発進捗や ロシアやウクライナ自身の技術動向次第で大型液体空中打上システムが実現する可能性は あると思われる。

イスラエルは、周辺国の事情からロケット打上げにおける制約が問題となり、ロケット 打上げにとって不利な西向き打上げが行われている。この地理的制約からイスラエルは空 中打上げシステムへ対して強い関心をもっている。2006 年段階では大型(HAL:Heavy Air Launch)と小型(LAL:Light Air Launch)、2 種類の空中打上げシステムを発表、開発に 着手していると発表している。母機は F-15 と B-747 を想定、空中管制機として G550 ガル フストリームを配備する計画を立てている。また、射場はインド洋を想定しており、低軌 道打上げ手段の確保を目的としていることが窺える。アメリカやロシアのように将来戦略 として長期的構想を描いているのではなく、純粋に「打上げ手段の確保」という目標で開 発が進められている。

フランスは、ONERA と CNES が共同で空中打上システムの発表をした。ロケットは固体ベ ースであり、150kg の衛星を軌道投入できる研究を発表している。しかしアメリカやロシア らが発射母機を既存航空機・有人機としているのに対し、フランスは UAV(無人機)利用を 発表している。この無人機はロケット打上げ以外にも偵察機や輸送機として使用するマル チ利用を示しており、ロケット打上げはミッションの 1 つとして定義している。この背景 が他国とは異なるフランス空中打上げシステムに繋がっていると見られる。また、

フランスではアメリカのように将来輸送手段の研究を Future Launcher Preparatory Program (FLPP) として開始しており、ロケットエンジンの再使用化を含む TSTO(2 段式宇 宙輸送機)の概念研究を 2006 年に発表している。これはアメリカの HLV と似た概念である。

スペインは宇宙機関 INTA が自国戦闘機 F-18 及び E-2000 を利用した空中打上げシステム を 2006 年に発表している。スペイン領のカナリアから打上げることを目標としている。こ れは ISHIM やイスラエルの F-15 空中打上げシステム LAL よりも小型の打上システム(15kg 程度の軌道投入能力)であり、コスト計算の結果打上げ単価が 2-2.5 million ユーロ(3 億

円~3.75 億円)であるとして、低費用化が必要であると発表している。費用とミッション 要求次第では実現する可能性があると思われる。

中国はアメリカ Pegasus と同程度の空中打上げシステムを博覧会で発表している。仕様・

目的・経緯・打上母機などは公表されておらず、考察するには情報が少ない。しかし、空 中打上げシステムにおける将来性を分析しての開発であるならば、注目すべき開発動向で ある。