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統計分析の適応度

ドキュメント内 -戦後歌舞伎・落語興行の計量分析から- (ページ 177-181)

第5章 現代における「伝統芸能」

2 統計分析の適応度

今回は、統計的にさほど高度な推定を行っているわけではない。だが、本論で行 った集計によって、これまで「そうであろう」と想像され続けてきた、忠臣蔵の公 演回数の多さや、初席出演と寄席定席登場との関連などを実際のデータ値を用いて 証明し、さらに、「歌舞伎の全上演演目に占める『忠臣蔵』の比率」や「カケブレ に占める、小さん一門の落語家の獲得枠数の変遷」など、興行研究の現場で従来、

概念としてさえ認識されたことのないような数値を、初めて実際に算出し、明示す ることができた。

繰り返しになるが、本論は決して興行データ分析の最終報告書ではない。現時点 では、こうしてまず一度「興行データ集計」を行った、という先例を残したことで、

今後の研究に「データの改良」「異なる視角からの分析」「分析手法の変更による より精緻な分析」などの幾多の進展の可能性を提起することができたということに 意義を見出している。

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本論に掲載を計画していたすべての分析を終えて、改めて「統計分析の興行デー タ研究への適応度」を振り返ってみると、必ずしもすべての分析で期待したような 集計結果が出せたわけではないが、例えば本論で取り上げたような伝統芸能分野に 造詣の深い研究者等に、「こういうやり方があるなら、自分の研究テーマに関して も統計分析で分かることがあるかも知れない」と、相応に関心を抱かせるだけの成 果は上げられたと思っている。

そして、カケブレデータに関しては、今回初めてデータ作成からプログラム開発 まで行って、実際のデータを集計した結果を確認して得られた知見が、もう1つあ る。それは「データ集計値に頼らなくても、現場の人間の直感は意外に正しい」と いうことである。実は、「落語家が何百人もいても、寄席に定期的に出ているのは 数十人」ということは、実際にリストを作って数えた人がいるとは考えられない(手 作業の集計では相当な手間がかかる)にもかかわらず、多くの落語家が既に認識し ているのである。筆者個人としては、全分析を通じて、この驚きが最も大きかった。

3 「興行データの統計分析」の今後

序章の末尾に書いたとおり、現場の最前線にいる落語家からの批判を浴びながら も、筆者が敢えて「興行データに対する数値評価」に踏み切った理由は、興行研究 に際し「数値分析で明確にできる部分」を見極めたかったからである。確かに「人 間のやること」すべては数値では測れないであろうが、その一部には確実に測れる 部分がある。数値評価が可能な部分の限界まで、考え得るすべての数値解析を行い、

それをやり尽くした後にまだ測れない部分が出てきたときに初めて、「数値では測 れない」と断言できるのではないか。その未解明の部分に構造解明のカギとなる要 素が隠されている可能性もあるが、それは本論の対象の範疇を超えている。

現時点では、筆者の統計分析能力の未熟さもあり、まだ「やり尽くした」という 段階には程遠い。それ故に、この研究はまだ今後も深めていかなければならない。

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発表論文初出一覧

・坂部裕美子「『落語』という芸能の抱える問題について-寄席の実情-」文化経 済学会<日本>年次大会予稿集:2005(文化経済学会)pp.122-125 2005年

・坂部裕美子「SASを用いた寄席定席興行の現状分析」SAS Forum ユーザー会 学 術総会 2005 論文集(SAS Institute Japan株式会社)pp.273-281 2005年

・坂部裕美子「寄席定席興行の統計的分析」『ESTRELA』((財)統計情報研究開 発センター)2006年3月号 pp.10-17 2006年

・坂部裕美子「歌舞伎公演演目の多変量解析-『安宅の関』は『またかの関』?-」

SAS Forum ユーザー会 学術総会 2006 論文集(SAS Institute Japan株式会社)

pp.229-236 2006年

・坂部裕美子・村田磨理子「歌舞伎公演の上演傾向分析」2006年度統計関連学会連 合大会講演報告集(統計関連学会連合大会事務局)p.84 2006年

・坂部裕美子「歌舞伎公演の上演傾向分析-『またかの関』についての一考察-」

『ESTRELA』((財)統計情報研究開発センター)2007年2月号 pp.19-27 2007 年

・坂部裕美子「歌舞伎の上演傾向-『4代目歌舞伎座』の時代における歌舞伎三大 狂言の上演について-」『統計』((財)日本統計協会)2007年4月号 pp.29-37 2007年

・坂部裕美子「統計的手法を用いた歌舞伎狂言における役の格付け」SASユーザー 会学術総会2007論文 ※電子媒体による配布のみ、全7ページ

・坂部裕美子「歌舞伎狂言での役付きに見る歌舞伎界の構造変遷」2007年度統計関 連学会連合大会講演報告集(統計関連学会連合大会事務局)p.247 2007年

・坂部裕美子「計量的にみた寄席興行の時代変遷」2008 SASユーザー総会 アカ デミア/テクノロジー&ソリューション セッション 論文集 pp.87-92 2008 年

・坂部裕美子「計量的にみた寄席興行の時代変遷」2008年度統計関連学会連合大会 講演報告集(統計関連学会連合大会事務局)p.29 2008年

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・坂部裕美子「落語家の勢力分布の変遷-師匠から弟子へ・親から子へ-」SASユ ーザー総会 アカデミア/テクノロジー&ソリューション セッション2009 論文集(SAS Institute Japan株式会社)pp.255-264 2009年

・坂部裕美子「寄席興行から見る落語家の勢力分布-寡占と世代交代-」2009年度 統計関連学会連合大会講演報告集(統計関連学会連合大会事務局)p.316 2009 年

・坂部裕美子「寄席興行データから見る落語家の世代交替」文化経済学会<日本>

年次大会予稿集:2010(文化経済学会)pp.146-147 2010年

・坂部裕美子「師匠は選べる-落語家になりたいあなたへ-」2010年度統計関連学 会連合大会講演報告集(統計関連学会連合大会事務局)p.324 2010年

・坂部裕美子「寄席定席の『顔付け』集計-40年の遷り変わり-」『ESTRELA』

((財)統計情報研究開発センター)2011年3月号pp.14-20 2011年

・坂部裕美子「東京における寄席定席興行の顔付け傾向分析-芸術活動評価への統 計的解析手法導入の序として-」アート・リサーチ11号(立命館大学アート・

リサーチセンター)pp.54-64 2011年

・坂部裕美子「歌舞伎公演出演傾向の世代間比較」文化経済学会<日本>年次大会 予稿集:2011(文化経済学会)pp.80-81 2011年

・坂部裕美子「相撲番付にみる角界の構造変遷」2011年度統計関連学会連合大会講 演報告集(統計関連学会連合大会事務局)p.130 2011年

・坂部裕美子「古典芸能興行における「保守」と「変革」の相克-興行データベー ス集計を通して「マンネリ」を考える-」2012年度統計関連学会連合大会講演 報告集 p.359 2012年

・坂部裕美子「興行データベースから「古典芸能」の定義を考える」『商経学叢』

近畿大学商経学会 第59巻第2号 2012年

・坂部裕美子「『伝統芸能』の定義の再確認」文化経済学会<日本>年次大会予稿 集:2013(文化経済学会)pp.72-73 2013年

ドキュメント内 -戦後歌舞伎・落語興行の計量分析から- (ページ 177-181)