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登場回数格差の測定

ドキュメント内 -戦後歌舞伎・落語興行の計量分析から- (ページ 119-122)

第2章 落語の興行分析

2. 登場回数格差の測定

落語協会データの 85 年→90 年、芸協データの 80 年→85 年の平均回数の減少は、

値の変動幅がデータ期間中で最も大きくなっているが、先述のとおり、この「平均 値減少」には、どちらの協会の場合も「総興行数の減少」という要因が大きく作用 している。しかし、この興行数減少という「外部効果」が、枠数配分に影響をもた らした可能性もある(回数上位者の登場回数の減少が大きければ、格差が縮小し機 会均等化が進んだことになるが、「寄席の顔」の出番は確保の上で登用リスクの大 きい回数下位者の回数をさらに削っていれば、格差は拡大したことになる)。

平均値の比較のみでは分布構造の変化は把握できないため、厚生経済学の分野で 用いられている、所得格差を示す各種指標を使用して、回数絶対値の変化の影響を 除いた格差の状況を比較してみる。

総務省統計局の実施する「全国消費実態調査」の報告書では、格差を示す指標と して「ジニ係数」「平方変動係数」「平均対数偏差」「アトキンソン係数」の4つ の指標を用いている。これらの指標は、いずれも数値が大きいほど「格差が大きい」

「不平等度が高い」と判断されるが、分布のどの部分(回数上位の分布、回数下位 の分布など)の変化に敏感に反応するかがそれぞれ異なり、4つの変化を総合的に

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確認すれば、分布全体の変化の傾向を読み取ることができる。なお、統計局HPの

「平成 21 年全国消費実態調査 用語の解説」36の「15.各種係数」の記載には、こ れらの指標の特徴について、以下のように記されている。

ジニ係数…中所得層における所得分布の変化に比較的敏感である。

平方変動係数…高所得層における所得分布の変化に比較的敏感である。

平均対数偏差…低所得層における所得分布の変化に比較的敏感である。

アトキンソン係数…分布の両極端の動きに比較的敏感に左右される。

両協会の登場回数分布について、Excel シートにそれぞれの指標の算出式を貼り 付けて、この4つを算出してみた。ちなみにジニ係数は、全国消費実態調査での計 算方法に倣い、十分位階級を用いて集計した。結果を図 2-18-1・2-18-2 に示す。

全体の動きを俯瞰すると、落語協会興行では、80~90 年代に拡大した格差が近年 縮小傾向にあり、両者の比較では、総興行数が少なく最大値が低めの芸協興行の方 が、格差が小さいことが分かる。そして、大幅に総興行数が減少した、「芸協の 80-85 年」「落語協会の 85-90 年」の格差変化を見ると、芸協ではこの「危機」を機に下 位層の救済が進むようになったが、落語協会では同様の「危機」に際して逆に一旦 まず上位層への集中が進み、その後で平等化の方向に反転したようである。グラフ を見ると、落語協会興行は、80-85 年の総興行回数増加期にも不平等度が大きく上 がっており、枠獲得競争が苛烈である様子が窺える。

この推移は、特に芸協において、実状とよく一致している。80 年前後の芸協は、

鈴本と軋轢を起こした事実からも明白なほど大きく揺れていたが、このときの反省 から、その後芸協は、一致団結して、会員全員がなるべく平等な立場になることを 目指し続けている。その一端を示す実例として、より多くの会員に出演機会を与え、

より多くのトリ担当を作れるようにと、2002 年から一部の興行で 5 日間制を採用し たことが挙げられる。また、「落語家の主催するお祭り」としては後発ながら「芸 協らくごまつり」が活況を呈しているのも、この「皆で一致団結」という芸協の気 風が大いにプラスに働いたためと言われている。

36 http://www.stat.go.jp/data/zensho/2009/kaisetsu.htm

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図 2-18-1 落語協会興行における出演回数の格差

図 2-18-2 落語芸術協会興行における出演回数の格差 0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

-1980 -1985 -1990 -1995 -2000

ジニ係数 平方変動係数 平均対数偏差

アトキンソン係数(ε=0.5) アトキンソン係数(ε=1)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

-1980 -1985 -1990 -1995 -2000

ジニ係数 平方変動係数 平均対数偏差

アトキンソン係数(ε=0.5) アトキンソン係数(ε=1)

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