第 7 章 結び目部分の研究 73
7.4 結論
84 第7章 結び目部分の研究 影響しないからと考えられる. 新しい経路による解析での誤判定の発生率の結果から, 本研究で扱った孤立系や希薄系では,この解析方法は低い誤判定率をもつことがわかっ た. しかし,濃厚系や貧溶媒中などの凝集した高分子系では,誤判定の発生率は上昇する 可能性がある.一方,本研究で提案した解析法では,いかなる系でも誤判定が生じること はない.
以上のように,新しい経路による解析と従来の経路による解析の信頼性が確認できた ので,本研究では次に結び目をもつ部分鎖の鎖長の平衡状態での平均値h`Kiを調べた. その結果,それぞれの長さにかかわる物理量は,セグメント数Nのベキ乗則にしたがう 振る舞いが見え,指数tは従来の経路による解析ではt' 0.81,新しい経路による解析で はt'0.86となった. しかし本研究で調べた領域では,h`KiのN依存性は緩やかに変化 しており,ここで得た指数は見かけの量であると考えられる. そのため, 2つの指数は同 じ値であると見なしてもよい. 指数tについての見解は明確になっていない. 表7.4に 示すように,格子模型によるシミュレーションにおいても,切断・接合の方法とエント ロピー競合の方法による結び目部分の定義法から得られた指数tは異なっている. また, 重心を用いた経路による切断・接合の方法(A)でも,先行研究の格子模型と本研究の連 続体模型のシミュレーションでは異なった指数tが得られている. これらのtの値の違 いの原因は未だ分かっていないが,全ての値はt <1であることから,結び目部分の局在 化は示唆できる.
また,結び目をもつ部分鎖と残りの部分鎖のセグメント数と鎖長を比べると,特徴的 なセグメント数N`(])以下では結び目をもつ部分鎖のほうが, N`(])以上では残りの部分 鎖のほうが長いことがわかった. この特徴的な長さN`(])は, 従来の解析法での結果では N`(A) '120,本研究で提案した解析法での結果ではN`(B) '320であった.この量は,緩和現 象の研究で得たNc '96∼144や,平均構造の研究で得たNxav0= 110∼120, Ncav1 '120 とは関係ない量であると考えられる. なぜならば,Nc, Nxav0, Ncav1は結び目部分の空間的 な広がりに関係する量であり,本研究でのN` は結び目をもつ部分鎖の長さに関する量 であるからだ. しかし,全ての研究において,特徴的な長さがあらわれたことは,結び目 をもつ環状高分子の結び目部分が局在するという結果を示唆する.
今後は,より大きなNをもつ部分鎖の結び目部分の解析を行い,h`KiのNについての 依存性を明確にする必要がある. また,本研究では誤判定の生じない結び目部分の定義
【表7.4】: 結び目部分の定義法とシミュレーションの模型の違いによる指数tの値. 左 列から,高分子模型,解析(A)と解析(B)による切断・接合の方法による結果,エントロ ピー競合による結果である. 連続体模型の結果は本研究で得た値, 格子模型の結果は先 行研究による値である.
高分子 切断・接合の方法 エントロピー競合 模型 解析(A) 解析(B) の方法 連続体模型 t(A)'0.81 t(B) '0.86 ×
格子模型 t' 0.67 × t '0.75
7.4. 結論 85 法を提案することができた. この方法は,判定の条件が厳しいため,h`Kiを従来の方法よ り長く評価する結果が得られる. それにもかかわらず,t(B) < 1という結果が得られたこ とは,結び目部分が局在することを強く示唆する. 今後,この定義法を用いて, 結び目部 分の動的な特性などを調べていくことは興味深い.
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