第 7 章 結び目部分の研究 73
7.3 結果
78 第7章 結び目部分の研究
7.3. 結果 79 発生率は0.2%であり, この値は本研究での結果に比べ小さい. この誤判定の大差は格 子模型と連続体模型の違いが原因であると推測される. また解析(B)では, 誤判定は生 じなかった. よって,本研究で提案した経路の選び方は,誤判定が生じない選び方である ことが確認できた.
(A) N = 20 (B) N = 20
(A) N = 20
(A) N = 120 (B) N = 20(B) N = 120
(A) N = 20 (A) N = 120
(A) N = 240 (B) N = 20(B) N = 120(B) N = 240
【図7.5】: 三葉結び目をもつ環状高分子のタイプ1の平均構造と, 左列は経路(A)と, 右列は経路(B)用いて評価した結び目部分. 上段からN = 20, 120, 240である. それぞ れの図中にある円柱と球は,左列は図7.3と,右列は図7.4と同様に定義した.
80 第7章 結び目部分の研究
【表7.1】: 自明な結び目を用いた誤判定の発生率. 左列から,セグメント数N,サンプ ル数M,自明な結び目による誤判定の発生率の解析(A)と解析(B)での結果である. 一 番右列は,解析(A)で誤判定された結び目をもつ部分鎖の平均セグメント数である.
セグメント数 サンプル数 誤判定の発生率(%) hNK(A)i
N M 解析(A) 解析(B) 解析(A)
20 5,000 0.0 0.00 ×
40 4,000 0.5 0.00 38.0
80 4,200 10.6 0.00 76.3
160 1,800 43.3 0.00 144.5
(a) (b)(a) (b)(a)(c)
【図7.6】: 誤り判定を受けた自明な結び目. それぞれの図中の円柱と球は,図7.3と同 様に定義した.
7.3.3 誤判定の発生率 ( 三葉結び目 )
環状高分子の結び目部分を定義する方法として2つの経路を用いた解析を平均構造 に実行し,長さの異なる結び目をもつ部分鎖を定義することができた. しかし本来なら ば,解析方法に依存することなく結び目をもつ部分鎖は一意に決まってほしい. 解析(B) では内部干渉と外部干渉の両方の問題を解消することができる経路の選び方を用いて いるので,そこから評価された結び目をもつ部分鎖は妥当であると考えてよい. そこで, 解析(A)と(B)によって評価された結び目をもつ部分鎖を比較することで,解析(A)で の三葉結び目を用いた誤判定の発生率を評価した. ここで,誤判定とは,解析(A)で得た 結び目をもつ部分鎖が,経路(B)で得た結び目をもつ部分鎖に含まれないときの判定と する. 表7.2は三葉結び目をもつ環状高分子の解析の解析(A)での誤判定の発生率であ る. 表からわかるように,調べたNの領域では,誤判定の発生率は低く,解析(A)の部分 鎖は解析(B)の部分鎖に含まれていることがわかる. よって,三葉結び目での解析(A)の 結果は低い誤判定率をもつ解析結果であると判断してよい. 自明な結び目による解析で の誤判定の発生率に比べ, 三葉結び目による解析での誤判定の発生率が低い原因は,自
7.3. 結果 81 明な結び目による解析での誤判定された構造と関係がある. これは,自明な結び目の解 析で誤判定された多くの部分鎖は高分子の全鎖長に近い鎖長をもつものであったため, 三葉結び目の解析では誤判定された部分鎖があるにもかかわらず,真の結び目をもつ部 分鎖のほうが短く,その影響は現れなかったからと考えられる.
7.3.4 結び目をもつ部分鎖と残りの部分鎖のセグメント数依存性
図7.7は,横軸がN,縦軸がD
`K(])E ,D
`R(])E
である両対数グラフである. 上図は解析(A)に よる結果, 下図は解析(B)による結果である. 図(a)と(b)の結果を比べると, 全ての N の領域で,
D`(A)K E
<D
`(B)K E
(7.1) の大小関係がある. この関係は,平均構造の結び目部分の解析の結果と同じ傾向である. 解析(A)では,内部干渉と外部干渉を考慮せずに経路が選ばれる. そのため,解析(A)で 切り出した部分鎖は解析(B)で切り出した部分鎖よりも条件が緩い分,短くなることが できると考えられる.
先行研究と比較を行うために,結び目をも部分鎖の鎖長は以下にしたがうと仮定する. D`(])KE
= C(∗])Nt(]), (7.2)
ベキ乗則の振幅と指数はN = 80∼320のデータについて重みつき最小二乗法を用いて 評価した結果,C(A) '1.21, t(A)' 0.81, C(B) '1.15, t(B) '0.86となった. よって,指数が 1よりも小さいことから,三葉結び目をもつ環状高分子には鎖長に依存した結び目部分 の局在化が起こることが確認できた. また,隣り合った2点から,指数を評価した結果を
【表7.2】: 三葉結び目を用いた誤判定の発生率. 左列から,セグメント数N,サンプル
数M,解析(A)での 三葉結び目による誤判定の発生率である.
セグメント数 サンプル数 誤判定の発生率(%)
N M 解析(A)
20 5,000 0.0
30 5,500 0.0
40 4,000 0.0
60 4,800 0.0
80 4,200 0.0
120 4,000 0.0
160 3,600 0.0
240 4,200 0.9
320 720 0.0
82 第7章 結び目部分の研究 表7.3に示す. すると,調べたN の領域ではh`(K])iのN 依存性は緩やかに変化しており, ここで得た指数t(]) は見かけの量であると考えられる.
また,どちらの図においても,h`(K])iとh`R(])iの大小関係は小さいNの領域と大きいN の領域では逆転している. 図から,この変化の起きる特徴的なセグメント数N`は,解析 (A)ではN`(A)' 120,解析(B)ではN`(B)' 320であることがわかる.
(a)
(A) (A)
< l@R >
< l@K >
< l >
N 10
100
10 100
(b)
(B) (B)
< l@R >
< l@K >
< l >
N 10
100
10 100
【図7.7】: 横軸がセグメント数 N,縦軸が結び目をもつ部分鎖と残りの部分鎖の鎖長 h`Ki,h`Riである両対数グラフ. 図(a)は解析(A)による結果,図(b)は解析(B)による結 果である. それぞれの図について,菱形は結び目をもつ部分鎖の鎖長に,正方形は残りの 部分鎖の鎖長に対応する. それぞれの量について,統計誤差を誤差線で示した.