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第 4 章 シミュレーションの方法 39

5.3 結果

5.3. 結果 49

50 第5章 緩和現象の研究

i

i

1 N

1 N

( q = 1 )

( q = 2 )

R e N/2

R e N/4 i

i

1 N

1 N

R e N/2

φ

q, j

φ

(R) q, j (R)

R e N/4

( a-1 )

( a-2 )

( b-1 )

( b-2 )

( c-1 )

( c-2 )

【図5.1】:緩和率と部分鎖のセグメント間ベクトルとの関係. 図(a-1), (a-2)はモードへ

の寄与φ(R)p,j の形, 図(b-1), (b-2)は自明な結び目をもつ高分子の構造,図(c-1), (c-2)は三 葉結び目をもつ高分子の構造のイメージ図を表す. 図の表記は図3.2と同様である. 図 (b-1), (c-1)の実線矢印はN/2セグメントからなる部分鎖の端点間ベクトルRNe,図(b-2),

(c-2)の破線矢印はN/4セグメントからなる部分鎖の端点間ベクトルReN/2を表す. 図か

ら明らかなように,自明な結び目の場合,|ReN/2|> |RN/4e |であることから,λ1 < λ2が推測 される. 一方,三葉結び目の場合,|RNe/2|< |RNe/4|であることから,λ1 > λ2が推測される.

て重みつき最小二乗法を用いて求めた. ここでは, 条件0.25 < Cˆq(t)/Cˆq(0) < 0.95 と δCˆq(t)/Cˆq(t)<0.1を満たすデータCˆq(t)を用いた. 得られたパラメータでは,λ(1)q λ(2)q

であったことから,以下では,最も遅い緩和率λ(1)q を動的に得た緩和率と呼び,議論する. 線形化近似法に基づいた緩和率の評価方法では, シミュレーションで得た時刻t = 0 でのhRi(t)·Rj(0)iを用いて,式(5.16)と式(5.20)から緩和率λ(LA)p を評価した. 以下で は,λ(LA)q を静的に得た緩和率を呼び,議論する.

5.3.1 自明な結び目をもつ環状高分子の結果

図5.2 (a)と(b)は自明な結び目をもつ環状高分子について,動的に得た緩和率λ(1)q

静的に得た緩和率λ(LA)qq/N の両対数グラフである. 図 5.2 (b)の静的に得た緩和率

λ(LA)q の分布は, 図5.2 (a) の動的に得た緩和率λ(1)q に得た分布と定性的に似ていること

がわかる. 先行研究の線状高分子鎖に対する結果と違い, 2つの方法で得た緩和率の値 は定量的に一致していない.38), 39) よって, 孤立環状高分子系では, 線形化近似法による 緩和率の評価法の近似の精度は定量的にはよくないといえる. 図5.2 (a)と(b)のどちら においても,波数q= 1の緩和率と波数q>1の緩和率は,q/N の小さい領域では異なっ

5.3. 結果 51 たベキ関数にのっているので,緩和率は以下のベキ乗則に従うと仮定する.

λ(q) '







A(1) 1 N

!x(1)

for q=1,

A(>1) q

N x(>1)

for q>1.

(5.22)

ここで, (∗)は(1)または(LA)を表す記号である. ベキ乗則の振幅と指数は,u= log λq , v= log q/Nに対して, 線形関数u= x(q)v+B(q), B(q) = log A(q)を用いた最小二乗法か ら評価した. 波数q= 1の時はセグメント数 N =48 ∼192の領域で,波数q>1の時は セグメント数q/N < 0.5を満たす領域を用いた. 最小二乗法の結果から, 波数q = 1の 緩和率λ(1)q では,A(1)1 ' 24.0, x(1)1 ' 2.10, A(1)>1 ' 50.2, x(1)>1 ' 2.17であった. それぞれの指 数は,線状高分子鎖の指数2ν+1'2.18に近い値であることがわかる. 孤立線状高分子

鎖や,38), 39) 排除体積効果のない環状高分子では,15) 緩和率分布は p/N もしくは q/N

ベキ乗則に従うことが知られている. したがって,本結果で見られたq = 1とq> 1に 依存したベキ乗則の分離は,結び目型が自明な結び目から変化しないという幾何学的拘 束に起因していると考えられる. このような,緩和率のベキ乗則の分離は,障害物中の2 次元高分子鎖の研究でも報告されている.41)

同様の最小二乗法を, 静的に求めた緩和率分布について行うと, ベキ乗則の振幅と 指数はA(LA)1 ' 60.9, x(LA)1 ' 2.19, A(LA)>1 ' 214, x>(LA)1 ' 2.39 であった. どちらの緩 和率分布 λ(1)q , λ(LA)q においても, x(1) < x(>1)A(1) < A(>1) の関係は成り立っている. 2 つのベキ乗則の振幅と指数は, 最終的にはq/N の十分小さい領域では単一のベキ乗則 λ(q)∝ (q/N)X,X =2ν+1に融合すると推測するのが自然であり,今回得られた値は見か けの値と考えられる. よって,この大小関係からq= 1とq>1のベキ乗則は,q/Nの小 さい領域で融合すると考えられる.

5.3.2 三葉結び目をもつ環状高分子の結果

図5.3 (a)と(b)は三葉結び目をもつ環状高分子について,動的に得た緩和率λ(1)q と静

的に得た緩和率λ(LA)qq/N の両対数グラフである. 自明な結び目で得た緩和率分布の 結果と同様で,静的に得た緩和率と動的に得た緩和率とは,定性的に一致しているが,定 量的に一致していない. 図5.3 (a)では,波数q= 1と 波数q = 2と3の緩和率は,それ ぞれ異なったベキ関数にのる傾向がある. 一方で,図5.3 (b)では,波数q=1とq=2と q=3の緩和率は別々のベキ関数にのる傾向がある. したがって,ベキ乗則

λ(q)' A(∗)q q

N x(∗)q

for q=1, 2, 3 (5.23)

を仮定し, 自明な結び目での解析と同様の方法で, ベキ乗則の振幅と指数を評価した. ここではセグメント数 N = 48 ∼ 192の緩和率のデータを用いた. 最小二乗法の結果

52 第5章 緩和現象の研究 から, 動的に得られた緩和率 λ(1)q のベキ乗則のパラメータは, A(1)1 ' 591, x(1)1 ' 2.61, A(1)2 ' 7.54, x(1)2 ' 2.02, A(1)3 ' 7.73, x(1)3 '2.04となった. また, x2(1) ' x(1)3 かつA(1)3 ' A(1)3 から,波数q= 2と3は同じベキ乗則

λ(1)q ' A(1)2,3 q

N x(1)2,3

(5.24) に従うと仮定できる. このとき, セグメント数 N = 48 ∼ 192 の波数 q = 2 と 3 の データから, 最小二乗法より得たパラメータはA(1)2,3 ' 7.38とx(1)2,3 ' 2.02 となった. 同 様の最小二乗法を, 静的に得た緩和率分布について行うと, ベキ乗則の振幅と指数は A(LA)1 ' 2.97×103, x1(LA) ' 2.77, A(LA)2 ' 16.8, x(LA)2 ' 1.95, A(LA)3 ' 58.8, x(LA)3 ' 2.18で あった. 評価されたパラメータA(LA)2 ,x(LA)2 ,A(LA)3 ,x(LA)3 から,波数q=2とq=3の2つの ベキ関数は,q/N '4.3×103付近で交差する. そして,q/Nが小さい領域では,λ(1)2 とλ(1)3 のように単一のベキ乗則に融合すると推測できるので,調べた領域では異なった見かけ のベキ乗則であると考えられる. 図5.3 (a)では,セグメント数N =96, 144, 192の波数 q= 4の緩和率は,波数q= 2と3のベキ関数上にのる傾向がある. よって,式(5.24)の ようなベキ乗則は,q= 2とq=3だけでなく,q> 1においてもq/N が十分小さい領域 では成り立つと推測できる. 加えて,パラメータの大小関係x(1)2,3 < x(1)1 かつA(1)2,3 < A(1)1 か ら,波数q= 1のベキ関数と波数q=2と3のベキ関数は,q/N '5.7×104付近で交差 することがわかる. このことから, 自明な結び目の緩和率の振る舞いと同様に, 十分小 さいq/Nの領域では, 2つの見かけのベキ乗則は単一のベキ乗則に融合すると推測でき る. 自明な結び目をもつ環状高分子の緩和率の結果と同様に,三葉結び目をもつ環状高 分子の緩和率分布で,波数q = 1とq= 2と3の見かけのベキ乗則は分離している. こ の分離は三葉結び目による幾何学的拘束が起因していると考えられる. しかし,三葉結 び目での緩和率分布の分離は,自明な結び目での緩和率の分離とは異なっている. パラ メータの大小関係に注目すると,三葉結び目ではx(1)1 > x(1)2,3かつA(1)1 > A(1)2,3, 自明な結び 目ではx(1)1 < x(1)>1かつA(1)1 < A(1)>1である. 図5.3 (a)では,波数q= 1の緩和率のベキ関数 は, 波数q= 2と3の緩和率のベキ関数の上側にある. 一方,図 5.2 (a)では,波数q= 1 のベキ関数は波数q > 1のベキ関数の下側にある. 以上から, 結び目による幾何学的拘 束は,緩和率のベキ乗則の分離に特徴的な影響を与えることがわかる. そしてこの影響 は, 各セグメント数N の最も遅い緩和率λ(1)q を与える波数q = qminの変化にあらわれ る. すなわち,特徴的なセグメント数をNc = 96∼144とすると,セグメント数が小さい 領域(N ≤ Nc)ではqmin=2,大きい領域(N ≥Nc)ではqmin= 1となる.

静的に得た緩和率 λ(LA)q においても最も遅い緩和率に関係する波数qmin の変化は見 られる. したがって,図5.1で示したように,緩和率λ(1)qmin の変化は,hRˆq·Rˆqiの大小関 係と対応付けられる. すなわち,各セグメント数 N について,最大のhRˆq·Rˆqiを与え る波数qは, Nが小さいときにはq= 2,N が大きいときにはq =1になる. 先述したよ うに,hRˆq·Rˆ−qiは, N/(2q)の長さをもつ部分鎖の端点間距離の二乗平均に対応してい る. したがって,最も遅い緩和率の変化は,N が小さいとき, N/2セグメントの部分鎖長 はN/4セグメントの部分鎖長よりも短く, Nが大きいとき,長くなることと等価と考え

5.4. 結論 53