第 II 章
第 3 節 結果:性別 2 群
表II.1 調査項目とその分布
項目 カテゴリー 合計N=4,920 男性N=3,064 女性N=1,856 Kendall P値
度数 % 度数 % 度数 % のタウb
教育歴 1)小学校 82 1.7 51 1.7 31 1.7
2)中学校 705 14.3 374 12.2 331 17.8 −0.28 P<0.001
3)高等学校 2,121 43.1 986 32.2 1,135 61.2
4)大学・大学院 2,012 40.9 1,653 53.9 359 19.3
等価収入 1) 100万円未満 519 10.5 220 7.2 299 16.1
2) 100-200万円未満 937 19.0 587 19.2 350 18.9
3) 200-300万円未満 1,787 36.3 1,141 37.2 646 34.8
4) 300-400万円未満 752 15.3 478 15.6 274 14.8
5) 400-500万円未満 467 9.5 334 10.9 133 7.2
6) 500-600万円未満 156 3.2 97 3.2 59 3.2 −0.10 P<0.001
7) 600-700万円未満 61 1.2 38 1.2 23 1.2
8) 700-800万円未満 104 2.1 71 2.3 33 1.8
9) 800-900万円未満 35 0.7 27 0.9 8 0.4
10) 900-1,000万円未満 19 0.4 9 0.3 10 0.5
11) 1,000-1,200万円未満 27 0.5 19 0.6 8 0.4
12) 1,200-1,400万円未満 11 0.2 10 0.3 1 0.1
13) 1,400-1,600万円未満 22 0.4 16 0.5 6 0.3
14) 1,600-1,850万円未満 6 0.1 3 0.1 3 0.2
15) 1,850-2,300万円未満 12 0.2 9 0.3 3 0.2
16) 2,300万円以上 5 0.1 5 0.2 0 0.0
主観的健康感 1)健康でない 304 6.2 177 5.8 127 6.8
2)あまり健康ではない 654 13.3 403 13.2 251 13.5 −0.03 P=0.022
3)まあまあ健康である 3,289 66.8 2,038 66.5 1,251 67.4
4)とても健康である 673 13.7 446 14.6 227 12.2
生活満足感 1)いいえ 628 12.8 412 13.4 216 11.6
2)どちらともいえない 1,197 24.3 726 23.7 471 25.4 0.01 P=0.590
3)はい 3,095 62.9 1,926 62.9 1,169 63.0
幸福感 1)全く幸せではない 74 1.5 46 1.5 28 1.5
2)あまり幸せではない 570 11.6 356 11.6 214 11.5 0.03 P=0.049
3)やや幸せ 2,941 59.8 1,869 61.0 1,072 57.8
4)非常に幸せ 1,335 27.1 793 25.9 542 29.2
表II.2 年収と等価収入の平均値
男性N=3,064 女性N=1,856
度数 平均値 標準偏差 度数 平均値 標準偏差
(万円) (万円)
年収 3,064 451 380.4 1,856 372 313.6
等価年収 3,064 308 252.3 1,856 263 207.9
65〜74歳
年収 2,283 459 369.6 1,382 391 317.5
等価年収 2,283 313 245.8 1,382 274 209.4 75〜84歳
年収 781 428 409.7 474 315 295.0
等価年収 781 294 270.2 474 231 200.2
1人暮らし
年収 292 324 286.8 433 214 188.6
等価年収 292 324 286.8 433 214 188.6 同居家族あり
年収 2,772 465 386.6 1,423 420 327.9
等価年収 2,772 307 248.4 1,423 278 211.2
表II.3 A市世帯収入と平成19年 国民生活基礎調査の平均所得金額
度数 平均値(万円) 標準偏差
A市世帯人員1人当たり平均収入∗1金額 4,920 207.78 176.43 A市等価収入 4,920 291.16 237.56 A市世帯収入 4,920 421.42 358.71
平成19年 国民生活基礎調査159)
世帯主の年齢が65歳以上の世帯の - 186.7 -世帯人員1人当たり平均所得金額
高齢者世帯∗2の1世帯当たり - 298.9 -平均所得金額
世帯主の年齢が65歳以上の1世帯当たり - 432.0 -平均所得金額
∗1A市の調査では,「世帯全体の収入」を問う設問で,税金などの必要経費に ついては明記していない.
∗2高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか,又はこれに18歳未満の未婚 の者が加わった世帯をいう.
3-2 各調査項目の相関
各調査項目の記述統計と単相関行列
男女別に,各調査項目の記述統計と単相関行列を表に示した(男性:表II.4, 女性:表II.5).
“社会経済的要因”である『等価収入』と『教育歴』は,『主観的健康感』とほ とんど相関がなかった.『等価収入』と『主観的健康感』の相関係数は,男性が r=0.093(P<0.01),女性がr=0.081(P<0.01),『教育歴』と『主観的健康 感』の相関係数は,男性がr=0.080(P<0.01),女性がr=0.111(P<0.01) であった.分析で用いる変数の中で,最も相関係数が小さい変数の組み合わせ であった.
『幸福感』は『生活満足感』との関連がかなり強く,男性がr=0.578(P<0.01), 女性がr=0.611(P<0.01)と,分析で用いる変数の中で,最も相関係数が大 きい変数の組み合わせであった.『幸福感』,『生活満足感』は『主観的健康感』
とやや関連あり,『幸福感』と『主観的健康感』の相関係数は,男性がr=0.396
(P<0.01),女性が r=0.362(P<0.01)であった.『生活満足感』と『主 観的健康感』の相関係数は,男性がr=0.372(P<0.01),女性がr=0.359
(P<0.01)であった.
表II.4 記述統計と単相関行列(男性)
N=3,064
平均値 標準偏差 教育歴 等価収入 生活満足感 幸福感
教育歴 3.38 0.762 1
等価収入 3.57 2.067 0.215∗∗ 1
生活満足感 2.49 0.720 0.180∗∗ 0.200∗∗ 1
幸福感 3.11 0.650 0.133∗∗ 0.190∗∗ 0.578∗∗ 1
主観的健康感 2.90 0.706 0.080∗∗ 0.093∗∗ 0.372∗∗ 0.396∗∗
∗∗P<0.01, Pearsonの相関係数
表II.5 記述統計と単相関行列(女性)
N=1,856
平均値 標準偏差 教育歴 等価収入 生活満足感 幸福感
教育歴 2.98 0.662 1
等価収入 3.19 1.911 0.228∗∗ 1
生活満足感 2.51 0.695 0.114∗∗ 0.182∗∗ 1
幸福感 3.15 0.668 0.113∗∗ 0.209∗∗ 0.611∗∗ 1
主観的健康感 2.85 0.714 0.111∗∗ 0.081∗∗ 0.359∗∗ 0.362∗∗
∗∗P<0.01, Pearsonの相関係数
3-3 重回帰分析による媒介分析の結果
『教育歴』『等価収入』,および『生活満足感』『幸福感』と,『主観的健康感』
との関連を検討するため,男女2群に,重回帰分析を用いて媒介効果を検討し た(表II.6,II.7).
まず,独立変数を『教育歴』『等価収入』,従属変数を『主観的健康感』として 重回帰分析を行った(モデル1).男性では,『教育歴』(β =0.063,P=0.001),
『等価収入』(β=0.079,P<0.001)は,『主観的健康感』との統計的に有意な 関連が見られた(表II.6モデル1).調整済み決定係数は0.012(P<0.001)で あった.女性では,『教育歴』(β=0.097,P<0.001),『等価収入』(β=0.059,
P=0.013)は,『主観的健康感』との統計的に有意な関連が見られた(表II.7
モデル1).調整済み決定係数は0.014(P<0.001)であった.
次に,『生活満足感』を独立変数に投入した(モデル2).男性では,『教育歴』
(β=0.010,P=0.556),『等価収入』(β =0.017,P=0.319)はモデル1と比 べて標準化係数が低下し,『主観的健康感』との統計的に有意な関連が消失し た.『生活満足感』(β =0.336,P<0.001)は統計的に有意な関連が見られた
(表II.6モデル2).調整済み決定係数は0.138(P<0.001)であった.『生活満 足感』の投入により,『教育歴』『等価収入』の標準化係数が低下したことから,
『生活満足感』が,『教育歴』と『等価収入』を媒介していることが示唆された.
女性では,『教育歴』(β =0.070,P=0.002)は,『主観的健康感』との統計的 に有意な関連が見られた.しかし,『等価収入』(β =0.061,P=0.951)の有 意な関連は見られなくなった.『生活満足感』(β =0.350,P<0.001)は有意 な関連が見られた(表II.7モデル2).調整済み決定係数は0.132(P<0.001) であった.『生活満足感』の投入により,『等価収入』の標準化係数が低下した ことから,『生活満足感』が『等価収入』を媒介していることが示唆された.
さらに,『幸福感』を独立変数に投入した(モデル3).男性では,『教育歴』
(β =0.006,P=0.737),『等価収入』(β =−0.003,P=0.863)の標準化係 数はさらに低下し,モデル2と同じく統計的に有意な関連は見られなかった.
『生活満足感』 (β =0.213,P<0.001)は有意な関連が見られた.『幸福感』
(β =0.273,P<0.001)は有意な関連が見られた(表II.6モデル3).調整済 み決定係数は0.187(P<0.001)であった.『幸福感』の投入により,モデル 2に比べ,さらに『教育歴』『等価収入』の効果が低下したことから,『幸福感』
が,『教育歴』と『等価収入』を媒介していることが示唆された.また,『生活 満足感』の標準化係数が低下したことから,『幸福感』が『生活満足感』を媒 介していることが示唆された.女性では,『教育歴』(β =0.065,P=0.003) はモデル2とほぼ同様な標準化係数を示し,有意な関連が見られた.『等価収 入』(β =−0.020,P=0.359)の標準化係数はやや低下し負の値を示した.統 計的に有意な関連はなかった『生活満足感』 (β =0.217,P<0.001)は有意 な関連が見られた.『幸福感』(β =0.226,P<0.001)は有意な関連が見られ た(表II.7モデル3).調整済み決定係数は0.163(P<0.001)であった.『幸 福感』の投入により,『生活満足感』の標準化係数が低下したことから,『幸福 感』が『生活満足感』を媒介していることが示唆された.
以上のことから,男性では,『生活満足感』は,『教育歴』および『等価収入』
を媒介して『主観的健康感』と関連していることが示唆された.『幸福感』は,
『生活満足感』を媒介して『主観的健康感』と関連していることが示唆された.
女性では,『生活満足感』は,『等価収入』を媒介して『主観的健康感』と関連 していることが示唆された.『幸福感』は,『生活満足感』を媒介して『主観的 健康感』と関連していることが示唆された.また,『幸福感』は,媒介効果がみ られる変数である『生活満足感』を媒介して『主観的健康感』と関連している という,多重媒介効果を持つことが示唆された.
Amosによる,重回帰分析(モデル3)の分析結果*11を男女別に示した(図 II.2).上述したSPSSによる分析結果と一致している.参考として,独立変数 の中では相関係数が最も低い,『教育歴』と『幸福感』の相関(男性r=0.133, P<0.01,表II.4,女性r=0.113,P<0.01,表II.5)を示すパスを削除した モデルの分析結果も示した(図II.3).
*11重回帰分析モデルは,飽和モデルであるため,Amosでは適合度指標が出力されない160).
表II.6重回帰分析の結果(男性)
N=3,064
項目モデル1モデル2モデル3βtP値βtP値βtP値
教育歴0.0633.413P=0.0010.0100.589P=0.5560.0060.336P=0.737
等価収入0.0794.314P<0.0010.0170.996P=0.319−0.003−0.173P=0.863
生活満足感0.36621.168P<0.0010.21310.551P<0.001
幸福感0.27313.598P<0.001
調整済み決定係数R 2=0.012P<0.001R 2=0.138P<0.001R 2=0.187P<0.001 決定係数変化量∆R 2=0.126P<0.001∆R 2=0.049P<0.001
従属変数:主観的健康感,β:標準偏回帰係数
*注:モデル3(男性)等価収入VIF=1.087,その他の変数VIF=1.062−1.623
表II.7重回帰分析の結果(女性) N=1,856 項目モデル1モデル2モデル3 βtP値βtP値βtP値 教育歴0.0974.105P<0.0010.0703.154P=0.0020.0652.964P=0.003 等価収入0.0592.486P=0.0130.0010.061P=0.951−0.020−0.917P=0.359 生活満足感0.35015.878P<0.0010.2178.048P<0.001 幸福感0.2268.353P<0.001 調整済み決定係数R2 =0.014P<0.001R2 =0.132P<0.001R2 =0.163P<0.001 決定係数変化量∆R2 =0.118P<0.001∆R2 =0.031P<0.001 従属変数:主観的健康感,β:標準偏回帰係数 *注:モデル3(女性)等価収入VIF=1.098,その他の変数VIF=1.071−1.540
N=3,064 N=1,856
*飽和モデルのためAmosでは,適合度指標は出力されない.
図II.2 『主観的健康感』を従属変数とする重回帰分析(男女2群)
N=3,064 N=1,856
図II.3 『主観的健康感』を従属変数とするパス解析(男女2群)
3-4 共分散構造分析の結果
重回帰分析による媒介分析の結果を参考にモデルを設定し,共分散構造分析 を行った.
N=3,064 N=1,856
誤差変数:e1−e5
図II.4 “社会経済的要因”と主観的指標との共分散構造分析
モデルの比較
次に,重回帰分析モデル,パス解析モデル,共分散構造分析モデルの比較を 行った.重回帰分析による媒介分析の結果を参考にモデルを設定し,パス解析 を行った(図II.2).通常,重回帰分析では,独立変数間に相関(共分散)を認 める.しかし,重回帰分析モデルは飽和モデルとなり,飽和モデルの適合度指
標は測定することができない160) *12 *13 *14 *15.参考のため,独立変数のうち 相関が最も小さい『教育歴』と『幸福感』の相関(男性:0.133,女性:0.113) を示す双方向のパスを除いてパス解析を行い,モデルの適合度指標を求めた
(図 II.3,表II.8).パス解析モデルの適合度指標は,AICは134.998,GFIは 0.994,AGFIは0.905,NFIは0.978,CFIは0.979,RMSEAは0.088であっ た.また,モデル間比較のため,ブートストラップ法により乖離度(モデル対 母集団)*16の値を求めた149, 162).モデル間でブートストラップ標本を等しくす るための乱数シード数は,各モデルとも1とした.乖離度(モデル対母集団)
は,重回帰分析モデルでは 53.8,共分散構造分析モデルでは62.6,パス解析
モデルは130.7であった.乖離度(モデル対母集団)の最も小さいモデルは重
回帰分析モデル,次に共分散構造分析モデル,パス解析モデルの順であった.
*12 Amosユーザーズ ガイドでは,AIC=Cˆ+2qと定義されている161, 162).
狩野によると160),Amosでは,AIC=TML+2qと定義されている.TMLはカイ2乗値,q はモデルにおける推定されたパラメータの数.
*13 SPSSでは,シンタックスでSTATISTICSに“SELECTION”を追加することで,重回帰分 析のAICが求められる163).
(SPSSのFAQが,リンク切れのため,以下に引用.)
Q. 04. SPSSの線形回帰分析で赤池情報化基準(AIC)を出力できますか?
A. 04. SPSSでの線形回帰はF値に基づいて変数選択をおこなっていますが,シンタックスを使用す
ることにより以下の統計量を算出することが可能です.
・赤池情報量基準(AIC/Akaike’s information criterion) ・雨宮予測基準(PC/prediction criterion)
・Mallowsの予測基準(MallowsのCp統計量)
・Schwarz Bayesianの基準(SBC) 以下の方法をお試しください.
1.線形回帰(分析>回帰>線形)を選択します.
2.適当な変数を選択してオプション等も設定し終わったら【貼り付け】をクリックします.
3. シンタックスエディタにREGRESSIONコマンドが自動出力されるので,以下の例のように
/STATISTICSに“SELECTION”を追加してください.(著者注:以下の例の図は略)
4.シンタックスを実行します(実行>すべて).
5.出力結果に“赤池情報量基準” “雨宮予測基準” “Mallowsの予測基準” “Schwarz Bayesianの基準”が 算出されます.
*14 SASでは,AIC=χ2−2d f
*15 AIC=nlog (Q
n
)
+2(k+1)
Q:残差平方和,k+1:推定したパラメータの個数 (鈴木義一郎, 1995)
*16 乖離度(モデル対母集団)は,ブートストラップ標本によるモデルの積率と,元のデータ セットから得られたモデルの積率との乖離の大きさの分布から求めた平均値149).小さい方 がよいモデルと判断される.