本研究の目的は,1)社会経済的要因(等価収入,教育歴)と,幸福感,生活 満足感,主観的健康感の3つの主観的指標との相互関連性を共分散構造分析を 用いて検討する.2)社会経済的要因(収入,教育歴)と,生活満足感,主観的 健康感,ADL,外出頻度および生存日数との相互関連性を共分散構造分析を用 いて検討することである.
仮説モデルとして,1)主観的健康感を従属変数,社会経済的要因(等価収 入,教育歴)と幸福感,生活満足感を独立変数とする重回帰分析を行う.
主観的健康感は,多数のコホート研究132, 133) により,死亡を予測する妥当 性があることが検証されており,生存日数の代替変数とする.独立変数のう ち,社会経済的要因(等価収入,教育歴)を時間的に先行する遠位の変数,調 査時点の状態を示す幸福感,生活満足感を近位の変数とする 134–136)(図I.11,
p. 40).共分散構造分析では,社会経済的要因(等価収入,教育歴)は潜在変
数とする.また,幸福感と生活満足感を近位の変数とし,変数間に関連がある
モデル137, 138) とする(図 I.12,p. 40).このモデルにより,社会経済的要因
(等価収入,教育歴)と主観的健康感の関連を明らかにする.また,幸福感と 生活満足感の差異13, 66, 67, 69, 73, 75)を明らかにする*18(図I.7).
2)Cox比例ハザード分析では,従属変数を死亡(生存:0,死亡:1,2004 年からの生存日数),独立変数を社会経済的要因(収入,教育歴),生活満足感,
主観的健康感,ADL,外出頻度とする.独立変数のうち,社会経済的要因(収 入,教育歴)は時間的に先行する遠位の変数134–136)とする(図I.11,p. 40). 共分散構造分析では,社会経済的要因(収入,教育歴)は潜在変数とする.ま た,生活満足感,主観的健康感,ADL,外出頻度は潜在変数“健康関連指標” とする(図I.8).
*18Layard65),Freyら13),Van Praag66),Easterlin67),Coyne69),Bok70)は,幸福感(happiness) 生活満足感(satisfaction)を交換可能(interchangeably)な用語としている.しかし,飽戸 ら73)は,「幸福感」と「生活満足感」とは「異なる側面を把握している」と指摘している.
Diener72),白石ら75)も同様の指摘をしている.(参照:I第3節 幸福感の概念,p. 11)
図I.7 仮説モデル:“社会経済的要因”と『幸福感』『生活満足感』『主観的健康感』
図I.8 仮説モデル:“社会経済的要因”と“健康関連指標”『生存日数』
本研究では,1)は,都市在宅高齢者の横断調査により,重回帰分析,共分 散構造分析を用いて相互関連性を検討する.2)は,追跡調査により,Cox比 例ハザード分析,共分散構造分析を用いて,社会経済的要因から生存日数への 影響を検討する.これらの関連性の検討から,高齢者における健康施策に関す る基礎資料を得ることを目的としている.
図I.9 本研究の仮説モデル