第 II 章
第 4 節 結果:性別 2 群(年齢調整)
4-1 対象者の基本属性
『年齢』および,各調査項目の分布を表II.11に示した.『性別』と『年齢』
に相関が見られなかった.
表II.11 調査項目とその分布
項目 カテゴリー 合計N=4,920 男性N=3,064 女性N=1,856 Kendall P値
度数 % 度数 % 度数 % のタウb
年齢 1) 65〜74歳 3,665 74.5 2,283 74.5 1,382 74.5 0.00 P=0.969
2) 75〜84歳 1,255 25.5 781 25.5 474 25.5
教育歴 1)小学校 82 1.7 51 1.7 31 1.7
2)中学校 705 14.3 374 12.2 331 17.8 −0.28 P<0.001
3)高等学校 2,121 43.1 986 32.2 1,135 61.2
4)大学・大学院 2,012 40.9 1,653 53.9 359 19.3
等価収入 1) 100万円未満 519 10.5 220 7.2 299 16.1
2) 100-200万円未満 937 19.0 587 19.2 350 18.9
3) 200-300万円未満 1,787 36.3 1,141 37.2 646 34.8
4) 300-400万円未満 752 15.3 478 15.6 274 14.8
5) 400-500万円未満 467 9.5 334 10.9 133 7.2
6) 500-600万円未満 156 3.2 97 3.2 59 3.2 −0.10 P<0.001
7) 600-700万円未満 61 1.2 38 1.2 23 1.2
8) 700-800万円未満 104 2.1 71 2.3 33 1.8
9) 800-900万円未満 35 0.7 27 0.9 8 0.4
10) 900-1,000万円未満 19 0.4 9 0.3 10 0.5
11) 1,000-1,200万円未満 27 0.5 19 0.6 8 0.4
12) 1,200-1,400万円未満 11 0.2 10 0.3 1 0.1
13) 1,400-1,600万円未満 22 0.4 16 0.5 6 0.3
14) 1,600-1,850万円未満 6 0.1 3 0.1 3 0.2
15) 1,850-2,300万円未満 12 0.2 9 0.3 3 0.2
16) 2,300万円以上 5 0.1 5 0.2 0 0.0
主観的健康感 1)健康でない 304 6.2 177 5.8 127 6.8
2)あまり健康ではない 654 13.3 403 13.2 251 13.5 −0.03 P=0.022
3)まあまあ健康である 3,289 66.8 2,038 66.5 1,251 67.4
4)とても健康である 673 13.7 446 14.6 227 12.2
生活満足感 1)いいえ 628 12.8 412 13.4 216 11.6
2)どちらともいえない 1,197 24.3 726 23.7 471 25.4 0.01 P=0.590
3)はい 3,095 62.9 1,926 62.9 1,169 63.0
幸福感 1)全く幸せではない 74 1.5 46 1.5 28 1.5
2)あまり幸せではない 570 11.6 356 11.6 214 11.5 0.03 P=0.049
3)やや幸せ 2,941 59.8 1,869 61.0 1,072 57.8
4)非常に幸せ 1,335 27.1 793 25.9 542 29.2
4-2 各調査項目の記述統計と単相関行列
男女別に,各調査項目の記述統計と単相関行列を表に示した(男性:表II.12, 女性:表II.13).
表II.12 記述統計と単相関行列(男性)
N=3,064 平均値 標準偏差 年齢 教育歴 等価収入 生活満足感 幸福感
年齢 0.25 0.436 1
教育歴 3.38 0.762 −0.050∗∗ 1
等価収入 3.57 2.067 −0.044∗ 0.215∗∗ 1
生活満足感 2.49 0.720 −0.011 0.180∗∗ 0.200∗∗ 1
幸福感 3.11 0.650 −0.025 0.133∗∗ 0.190∗∗ 0.578∗∗ 1
主観的健康感 2.90 0.706 −0.122∗∗ 0.080∗∗ 0.093∗∗ 0.372∗∗ 0.396∗∗
年齢(0:65-74歳,1:75-84歳) ∗P<0.05,∗∗P<0.01
表II.13 記述統計と単相関行列(女性)
N=1,856 平均値 標準偏差 年齢 教育歴 等価収入 生活満足感 幸福感
年齢 0.26 0.436 1
教育歴 2.98 0.662 −0.114∗∗∗ 1
等価収入 3.19 1.911 −0.088∗∗ 0.228∗∗ 1
生活満足感 2.51 0.695 −0.031 0.114∗∗ 0.182∗∗ 1
幸福感 3.15 0.668 −0.053∗ 0.113∗∗ 0.209∗∗ 0.611∗∗ 1
主観的健康感 2.85 0.714 −0.114∗∗∗ 0.111∗∗ 0.081∗∗ 0.359∗∗ 0.362∗∗
年齢(0:65-74歳,1:75-84歳) ∗P<0.05,∗∗P<0.01
4-3 重回帰分析による媒介分析の結果
さらに『年齢』を投入し,男女2群に,重回帰分析を用いて媒介効果を検討 した(表II.14,II.15).
まず,独立変数を『年齢』『教育歴』『等価収入』,従属変数を『主観的健康 感』として重回帰分析を行った(モデル1).男性では,『年齢』(β =−0.116, P< 0.001),『教育歴』(β =0.058,P=0.002),『等価収入』(β = 0.075,
P<0.001)は,『主観的健康感』との統計的に有意な関連が見られた(表II.14
モデル1).調整済み決定係数は0.025(P<0.001)であった.女性では,『年 齢』(β=−0.097,P<0.001),『教育歴』(β =0.084,P<0.001),『等価収入』
(β =0.053,P=0.024)は,『主観的健康感』との統計的に有意な関連が見ら
れた(表II.15モデル1).調整済み決定係数は0.023(P<0.001)であった.
次に,『生活満足感』を独立変数に投入した(モデル2).男性では,『年齢』
(β=−0.117,P<0.001)であった.『教育歴』(β=0.005,P=0.764),『等価 収入』(β =0.013,P=0.446)はモデル1と比べて標準化係数が低下し,『主 観的健康感』との統計的に有意な関連が消失した.『生活満足感』(β =0.367,
P<0.001)は統計的に有意な関連が見られた(表II.14モデル 2).調整済み
決定係数は 0.151(P<0.001)であった.『生活満足感』の投入により,『教 育歴』『等価収入』の標準化係数が低下したことから,『生活満足感』が,『教 育歴』と『等価収入』を媒介していることが示唆された.女性では,『年齢』
(β =−0.096,P<0.001),『教育歴』(β =0.058,P=0.010)は,『主観的健 康感』との統計的に有意な関連が見られた.しかし,『等価収入』(β =0.004,
P=0.857)の有意な関連は見られなくなった.『生活満足感』(β =0.350,
P<0.001)は有意な関連が見られた(表II.15モデル2).調整済み決定係数は 0.141(P<0.001)であった.『生活満足感』の投入により,『等価収入』の標 準化係数が低下したことから,『生活満足感』が『等価収入』を媒介している ことが示唆された.
さらに,『幸福感』を独立変数に投入した(モデル 3).男性では,『年齢』
(β =−0.113,P<0.001)であった.『教育歴』(β=0.001,P=0.960),『等
価収入』(β =−0.007,P=0.688)の標準化係数はさらに低下し,モデル 2 と同じく統計的に有意な関連は見られなかった.『生活満足感』 (β =0.215, P<0.001)は有意な関連が見られた.『幸福感』(β=0.270,P<0.001)は有意 な関連が見られた(表II.14モデル3).調整済み決定係数は0.199(P<0.001) であった.『幸福感』の投入により,モデル2に比べ,さらに『教育歴』『等価収 入』の効果が低下したことから,『幸福感』が,『教育歴』と『等価収入』を媒介 していることが示唆された.また,『生活満足感』の標準化係数が低下したこと から,『幸福感』が『生活満足感』を媒介していることが示唆された.女性では,
『年齢』(β =−0.090,P<0.001)であった.『教育歴』(β =0.053,P=0.016) はモデル2とほぼ同様な標準化係数を示し,有意な関連が見られた.『等価収 入』(β=−0.025,P=0.256)の標準化係数はやや低下し負の値を示した.統 計的に有意な関連はなかった『生活満足感』 (β =0.218,P<0.001)は有意 な関連が見られた.『幸福感』(β =0.223,P<0.001)は有意な関連が見られ た(表II.15モデル3).調整済み決定係数は0.171(P<0.001)であった.『幸 福感』の投入により,『生活満足感』の標準化係数が低下したことから,『幸福 感』が『生活満足感』を媒介していることが示唆された.
以上のことから,男性では,『生活満足感』は,『教育歴』および『等価収入』
を媒介して『主観的健康感』と関連していることが示唆された.『幸福感』は,
『生活満足感』を媒介して『主観的健康感』と関連していることが示唆された.
女性では,『生活満足感』は,『等価収入』を媒介して『主観的健康感』と関連 していることが示唆された.『幸福感』は,『生活満足感』を媒介して『主観的 健康感』と関連していることが示唆された.また,『幸福感』は,媒介効果がみ られる変数である『生活満足感』を媒介して『主観的健康感』と関連している という,多重媒介効果を持つことが示唆された.
表II.14重回帰分析の結果(男性) N=3,064 項目モデル1モデル2モデル3 βtP値βtP値βtP値 年齢(0:65-74歳,1:75-84歳)−0.116−6.463P<0.001−0.117−7.001P<0.001−0.113−6.958P<0.001 教育歴0.0583.164P=0.0020.0050.301P=0.7640.0010.050P=0.960 等価収入0.0754.118P<0.0010.0130.762P=0.446−0.007−0.401P=0.688 生活満足感0.36721.358P<0.0010.21510.722P<0.001 幸福感0.27013.574P<0.001 調整済み決定係数R2 =0.025P<0.001R2 =0.151P<0.001R2 =0.199P<0.001 決定係数変化量∆R2 =0.126P<0.001∆R2 =0.048P<0.001 従属変数:主観的健康感,β:標準偏回帰係数 *注:モデル3(男性)等価収入VIF=1.088,その他の変数VIF=1.004−1.540
表II.15重回帰分析の結果(女性)
N=1,856
項目モデル1モデル2モデル3βtP値βtP値βtP値
年齢(0:65-74歳,1:75-84歳)−0.097−4.197P<0.001−0.096−4.384P<0.001−0.090−4.222P<0.001
教育歴0.0843.552P<0.0010.0582.585P=0.0100.0532.419P=0.016
等価収入0.0532.255P=0.024−0.004−0.180P=0.857−0.025−1.137P=0.256
生活満足感0.35015.931P<0.0010.2188.137P<0.001
幸福感0.2238.265P<0.001
調整済み決定係数R 2=0.023P<0.001R 2=0.141P<0.001R 2=0.171P<0.001 決定係数変化量∆R 2=0.118P<0.001∆R 2=0.031P<0.001
従属変数:主観的健康感,β:標準偏回帰係数
*注:モデル2(女性)等価収入VIF=1.086,その他の変数VIF=1.025−1.078
*注:モデル3(女性)等価収入VIF=1.101,その他の変数VIF=1.025−1.625
4-4 共分散構造分析の結果
重回帰分析による媒介分析の結果を参考にモデルを設定し,共分散構造分 析を行った.共分散構造分析の結果(図 II.7),“社会経済的要因”(“ ”は潜 在変数を示す)から『主観的健康感』に対する標準化係数,男性0.01(C. R.
=−0.31,P=0.76),女性0.028(C. R.=0.57,P=0.57)は,男女ともに統 計的に有意ではなかった.
N=3,064 N=1,856
誤差変数:d1,e1−e5
図II.7 “社会経済的要因”と主観的指標との共分散構造分析
“社会経済的要因”から『生活満足感』『幸福感』『主観的健康感』への標準化直 接効果
“社会経済的要因”から三つの主観的指標への標準化係数を比べると,『幸福 感』より『生活満足感』の方が高く,『主観的健康感』が最も低かった.“社会 経済的要因”から『生活満足感』に対する標準化係数と,“社会経済的要因”か ら『幸福感』に対する標準化係数を比較すると,男女ともに,“社会経済的要 因”から『生活満足感』に対する標準化係数が統計的に有意に大きかった(男
性:C. R.=−6.56,P<0.01,女性:C. R.=−2.96,P<0.01).性別の多母集 団同時分析により“社会経済的要因”の効果を比較すると,“社会経済的要因” から『生活満足感』に対する標準化係数(C. R.=0.90,n.s.),“社会経済的要 因”から『幸福感』に対する標準化係数(C. R.=1.17,n.s.),“社会経済的要 因”から『主観的健康感』に対する標準化係数(C. R.=0.64,n.s.)のいずれ も,性差はみられなかった.『主観的健康感』の決定係数は,男性0.20,女性 0.17であった.
適合度指標は,χ2=28.429 (d f =10),P=0.002,NFI = 0.992,CFI = 0.995,AGFI=0.992,RMSEA=0.019であり,高い適合度が得られた.
“社会経済的要因”から『主観的健康感』への標準化間接効果と標準化直接効果
“社会経済的要因”から『主観的健康感』への標準化間接効果と標準化直接効 果を示した(図II.9,表II.17).標準化間接効果と標準化直接効果の推定値と 信頼区間はブートストラップ法によるバイアス修正済の値を用いた147–150).
“社会経済的要因” から『主観的健康感』に対する標準化間接効果は,男 性0.182(95% 信頼区間[CI] 0.154-0.218),P<0.001,女性 0.138(95%信 頼区間 [CI] 0.107-0.176),P<0.001 であった.“社会経済的要因” から『主 観的健康感』に対する標準化直接効果は,男性 −0.010(95% 信頼区間 [CI]
−0.073-0.052),P=0.774,女性 0.023(95%信頼区間 [CI]−0.072-0.115),
P=0.666, と,男女とも統計的に有意ではなかった.
『主観的健康感』への標準化間接効果と標準化直接効果の95%信頼区間を 比較すると,男性では,標準化間接効果(95%信頼区間 [CI] 0.154-0.218),
が標準化直接効果(95%信頼区間[CI]−0.073-0.052)より統計的に有意に大 きかった.女性では,標準化間接効果(95%信頼区間[CI] 0.107-0.176)と標 準化直接効果(95%信頼区間[CI]−0.072-0.115)は,統計的に有意な差はな かった.
* P<0.05,**P<0.01,n.s. = not significant
図II.8 “社会経済的要因”から『生活満足感』『幸福感』『主観的健康感』へ の標準化直接効果(年齢調整)
表II.16 “社会経済的要因”から『生活満足感』『幸福感』『主観的健康感』へ
の標準化直接効果(年齢調整)
男性 女性
推定値 95%CI P値 推定値 95%CI P値
生活満足感 0.401 0.343 - 0.465 P<0.001 0.300 0.234 - 0.366 P<0.001
幸福感 0.140 0.081 - 0.195 P=0.001 0.169 0.108 - 0.244 P<0.001
主観的健康感 −0.010 −0.073 - 0.052 P=0.774 0.023 −0.072 - 0.115 P=0.666
性別ラベル(下):標準化総合効果
* P<0.05,**P<0.01,n.s. = not significant
図II.9 “社会経済的要因”から『主観的健康感』への標準化間接効果と標準 化直接効果(年齢調整)
表II.17 “社会経済的要因”から『主観的健康感』への標準化効果(年齢調整)
男性 女性
推定値 95%CI P値 推定値 95%CI P値
標準化間接効果 0.182 0.154 - 0.218 P<0.001 0.138 0.107 - 0.176 P<0.001 標準化直接効果 −0.010 −0.073 - 0.052 P=0.774 0.023 −0.072 - 0.115 P=0.666 標準化総合効果 0.172 0.115 - 0.230 P<0.001 0.160 0.069 - 0.247 P=0.001