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結果と考察

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第 3 章  モノリスシリカを用いた微小酵素反応器の開発

3.3 結果と考察

3.3.1 ゾル-ゲルプロセスによるモノリスシリカの作製とモノリスシリカの表面観察

  モノリスシリカは、ゾル−ゲル法によってアルコキシシランと細孔形成剤(Porogen)を出発物 質として合成される。ゾル−ゲル法とは、金属の有機および無機化合物の溶液から出発し、溶液中 での加水分解・縮重合によって溶液を金属酸化物または水酸化物の微粒子が溶解したゾルとし、

さらに反応を進行させてゲル化した後に加熱することによって多孔質体を形成する方法である。

一般的に HPLC 用のモノリスシリカカラムは、ガラスキャピラリーや試験管内などにおいて TMOS から形成される。アルコキシシランとしては TMOS のほか、テトラエトキシシラン

(TEOS)も用いられるが、TEOSに比べてTMOSの方が加水分解・縮重合が進行しやすいとい Fig. 3-1 Diagram of the experimental system. Monolith enzyme reactor was placed upstream of an electrochemical flow cell.

う利点がある。また、TMOSの方がTEOSに比べて均一かつ細いポアが形成されやすく、表面積 が広いことも報告されている[15]。ゾル−ゲルプロセスにおける化学反応は、Fig. 3-2に示すよ うに、TMOSの加水分解、≡Si−O−Si≡を形成する縮合、≡Si−OH 同士の縮重合によるSiO2ネ ットワークの形成から構成される[14]。モノリスシリカの流路と骨格は、TMOSとPEGが酢酸 溶液中でスピノーダル分解による相分離によって秩序構造が生み出され、これが、加水分解−縮重 合により形成される。加水分解は進行するのが遅いために、ゾル−ゲル法においては酸あるいは塩 基触媒が用いられる。酸、塩基触媒のどちらを用いるかによって加水分解過程が異なることが知 られている。酸触媒を用いた場合、加水分解は塩基触媒を用いた場合に比べて短時間で進行する。

このとき、H3O+の求電子的攻撃によって起こるため、Si 上の OCH3の数が減少するに従い反応 数が減少すると仮定すると、Si(OH)4 ができる前に重合が進むことが示唆されている。このこと が生成したシリカが細長く、スルーポアの大きな構造をとることに寄与しているものと考えられ ている。このため、モノリスシリカを作製する際には酢酸などの酸触媒が用いられる。

Fig. 3-3に、作製したモノリスシリカ表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を示す。

Fig. 3-3(A)は、キャピラリー内に形成されたモノリスシリカの概観を、(B)は、モノリスシリカの 骨格と連続的なスルーポア構造を、(C)は、モノリスシリカ表面のメゾ孔をそれぞれ示している。

Fig. 3-3(A)から分かるように、モノリスシリカ形成時には、キャピラリー内壁のシラノール基が

関与しているため、モノリスシリカとキャピラリー内壁が結合している。PEGは、水素結合によ って、成長しているシリケートポリマーと強く結合するため、スルーポアのサイズを制御する働 きがある。このため、平均的なポアサイズは、PEGと TMOS との混合比によって大きく影響さ れる。Fig. 3-3(B)の結果から、今回作製したモノリスシリカのポアサイズは、1~10 µmである ことが分かった。Fig. 3-3(C)の結果から、10 nm前後のメゾ孔が形成されていることが分かる。

メゾ孔は、モノリスシリカ表面にアンモニア処理を施すことによって形成される。メゾ孔は 5~

50 nm の範囲で制御することが可能である。AOx の直径は不明であるが、参考として、グルコ

ース酸化酵素の直径は約8 nmである。酵素のサイズがおよそこれぐらいだと考えると、メゾ孔 の中に酵素を固定することも可能である。

 さて、クロマトグラフィーの分野では、粒子充填型カラムを用いた場合、その微細構造のため、

送液する際に高い圧力がかかることが知られている。一方、大きなスルーポア構造を有するモノ リスシリカ型カラムでは圧力が低く、送液が容易であるという特長があり、他のカラムと比較し て優位性が高いと言える。今回作製したモノリスシリカキャピラリー(長さ5 cm)について、液 体クロマトグラフィー用のポンプを使用し、PBSを5 µl/min.の速さで送液した際にかかる圧力 を測定したところ、490 kPaであった。この圧力では、シリンジポンプでも溶液を流すことが可 能である。この結果からも、今回作製したモノリスカラムが良い透過性を有していることが確認 された。このような低圧力損失によって酵素の固定や測定試料の導入が容易となる。これは連続 測定用の前反応器には欠かせないことであり、極めて重要な優位性である。

 

3.3.2 モノリスシリカ上への酵素固定条件の最適化

3.3.2.1 酵素の固定時間

  酵素の固定において最も重要なことの一つは、活性中心を形成する三次元構造の変化による酵 素活性の劣化を抑制することである。酵素の固定法には、担体結合法、架橋法、包括法などの方 法が挙げられる[17]。担体結合法には、物理吸着、イオン結合、共有結合による固定法が含ま れる。物理吸着は、水素結合や、ファンデルワールス力などによって生じるため、その結合力は 共有結合などの化学結合を用いる場合に比べれば弱いが、酵素の高次構造にダメージを与えるこ となく固定することができるというメリットを有している。酵素の直径、作製したモノリスシリ カの三次元構造、およびモノリスシリカ表面のメゾ孔のサイズ(10 nm前後)を考慮すると、物 理吸着でも安定に固定しやすいことが考えられるため、今回は、物理吸着によるAOxの固定を行 った。

Fig. 3-3 SEM photographs of monolithic silica. 3.0 kV and magnification A) 800x, B) 10000 x, C) 70000 x.

 酵素固定条件の最適化のため、はじめに固定時間の検討を行った。AA溶液の濃度は、100 µM とした。モノリスシリカ酵素反応器内で除去されなかったAAに起因する応答電流の大きさから、

各酵素反応器の性能を評価した。酵素溶液の導入時間は、0.5時間から徐々に増加させた。AA溶 液の流速は、5 µl/min.とした。酵素反応器内で除去されなかったAAに起因する応答電流は、0.5

~3 時間の範囲で減少した。これは、酵素固定時間の増加により、固定される酵素量が増加して いることが理由として考えられる。しかしながら、4 時間以上では変化が認められなかった。こ れは、酵素が吸着できるサイトがなくなり、これ以上酵素を固定できなくなっていることを示し ているものと考えられる。以上の結果から、酵素の固定時間は4時間に決定した。

3.3.2.2  酵素溶液濃度

  次に、酵素溶液の濃度について検討し た。濃度が異なる酵素溶液を三種類(100、 250、500 units/ml)用意した。Fig. 3-4 に、酵素濃度を変化させたときの、除去 されなかった AA に起因する応答電流曲 線を示す。どの酵素濃度で作製した酵素 反応器を用いても、除去されなかったAA の応答電流に違いは認められなかった。

この結果から、酵素濃度は100 units/ml でも十分であると考え、100 units/ml に決定した。

 

3.3.2.3  酵素反応器の長さ

  続いて、酵素反応器の長さについて検討した。Fig. 3-5に、1~11 cmの範囲で酵素反応器の 長さを変化させたときの、除去されなかった AA に起因する応答電流の変化を示している。酵素 反応器の長さが1~3 cmの範囲においては、AAの応答電流は急激に減少し、3 cm以上の範囲 においては応答電流は変化しなかった。これは、モノリスシリカが微細な三次元構造を有してお り、高い効率でAAとAOxが反応しているため、短いカラムにおいても十分な除去能力を有して いることを示している。この結果から、酵素反応器の長さは5 cmに決定した。本検討では、酵 素反応器が長いほど、高い除去効果が得られることを期待していたが、除去効果は飽和すること が分かった。酵素反応器の除去能力の飽和の原因について考えるため、AAとAOxの酵素反応式 を示す。

Fig. 3-4 Effect of AOx concentration on the response currents of the AA residue. Flow rate : 5 µl/min.

Fig. 3-5 Effect of the monolith column length on the response currents of the AA residue. Flow rate was 5 µl/min.

2AA+O2→2DHA+2H2O (AOx)

※DHA:Dehydroascorbic acid(デヒドロアスコルビン酸)

  第 2 章でも述べたように、酵素活性 には、試料中の酸素濃度も大きく影響 する。760 mmHg、25℃では、水溶液 中の酸素濃度は、8.26 ppm (258 µM) であるため[18]、反応式からも分かる ように、100 µMのAAを分解するのに 十分な量が存在していることが分かる。

しかしながら、酵素反応器の上流側で 酵素反応が生じた場合、下流側での酸 素濃度は減少すると考えられる。この ため、下流側に固定されている酵素は 酸素不足によって酵素反応の効率が低 下することが考えられる。従って、酵 素反応器の長さをある一定(本研究の 場合3 cm)以上増加させても反応効率

が向上しなかったのではないかと考えられる。もう一つ考えられる原因として、酵素反応生成物 による酵素反応の阻害である。AA は、酵素反応によりデヒドロアスコルビン酸(DHA)を生成 する。AAの濃度が高い場合には、生成されるDHAの濃度も増加するため、特に高効率に反応が 起こった場合には、その後、酵素反応が進行しにくいことが考えられる。AAが導入されると酵素 反応によって DHA が生成され、下流側へと流されていく。その結果、下流側に固定されている 酵素は反応効率が低減し、実質、上流側に固定されている酵素のみが酵素反応を連続的に起こす ことができているものと考えられる。このため、酵素反応器の長さをある一定(本研究の場合 3 cm)以上増加させても反応効率が向上しなかったのではないかと考えられる。

  以上の検討から、モノリスシリカ上への最適酵素固定条件は、酵素溶液濃度 100 units/ml、 酵素固定時間4時間、反応器の長さ5 cmと決定した。このような条件で作製したモノリスシリ カ酵素反応器の性能について、以下の評価を行った。

3.3.3 流速と除去効果

  モノリスシリカ酵素反応器、あるいはモノリスシリカが形成されていないガラスキャピラリー

(オープンキャピラリー)を電気化学セルに接続し、電気化学検出器から得られる応答に与える

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