第 3 章 モノリスシリカを用いた微小酵素反応器の開発
3.4 まとめ
測定妨害物質を高い効率で分解するために、ゾル−ゲル法により作製したモノリスシリカの表面 上に、酵素を修飾した酵素反応器を作製し、AAに対する除去効率を評価した。
1. 作製したモノリスシリカは、直径が1~10 µmのスルーポアと表面に10 nm前後の メゾ孔を有し、送液や酵素の固定に対して良好であることが分かった。
2. 酵素溶液を流しながら、物理吸着を利用して酵素を固定した。これにより、酵素を失 活させることなく、また長時間一定の除去効率が得られることを確認した。酵素の固 定には、モノリスシリカ表面との水素結合、ファンデルワールス力が働いているもの と考えられる。
3. 薄層電気化学セルに接続し、AAの除去効率を評価したところ、AAが100 µMのとき
に99.8%という結果が得られた。また、AAの濃度を500 µMまで増加させた場合に
おいても97%以上の高い除去効率が得られた。これは、モノリスシリカ上に効率良く 酵素が固定されていたことと、モノリスシリカ内の複雑な三次元構造によって、効率 良く酵素と基質が接触したことが主な原因であると考えられる。
4. モノリスシリカ酵素反応器を使用することにより、低濃度側の DA に対する感度が低 下することを確認した。これは、微量の酵素の脱落により、電極表面の清浄性が保た れていないことや、送液がスムーズでないことが考えられ、内部構造の最適化を行う 必要がある。
以上のように作製した酵素反応器では99%以上という高い除去効率を示した。酵素を失活させ ることなく固定できるこの手法は他の酵素にも応用できると考えられる。HPLC 用のモノリスシ リカカラムでは、モノリスシリカの大きなスルーポアと三次元ネットワーク構造の不均一性が移
動相中のバンドに拡がりをもたらすことが指摘されている。均一なモノリスシリカにおけるバン ドの拡がりを計算すると、構造の均一性によって性能が向上することが報告されており[20]、
今回検討したような酵素反応器への適用を考えた場合においても作製精度を向上させる必要があ る。検出器の感度に影響を及ぼすことなく、反応器の特性を向上させるためには、酵素の脱落を 抑制するために共有結合による酵素の固定法も検討する必要があることが示唆された。また、送 液の安定性向上や測定対象物質の保持を抑制するための表面修飾の検討も必要である。本研究で は、測定妨害物質除去用の反応器として検討を進めたが、本手法は、測定対象物質を高い反応効 率によって高感度に測定できるセンシングデバイスなど、バイオセンサー全般に適用できる技術 であり、その発展が期待される。
参考文献
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