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カテコールアミン検出用デバイスの電気化学特性

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第 2 章 前反応器−電気化学検出器集積型マイクロセンシングデバイス

2.3 結果と考察

2.3.4 カテコールアミンの高感度・高選択検出用センシングデバイスの作製と評価

2.3.4.2 カテコールアミン検出用デバイスの電気化学特性

  カテコールアミンのIDAE 上における酸化還元サイクル数は、流路の深さと送液条件によって 変化することが報告されている[31]。本デバイスにおいてもグルタミン酸検出用デバイスと同 様、MD プローブと接続してを用いることを想定している。高い感度を得るためには、できるだ け高い効率でカテコールアミンを回収することが必要となるため、流速を低く設定する必要があ る。流速を低く設定することは、試料の採取量を低減することにもつながり、生体への負荷を低 減するという観点から、低い流速で測定を行うことは重要である。そこで、流速と応答電流の関 係について調べた。

  IDAE 上における酸化還元サイクル数は、それぞれのカテコールアミン類の特性にも大きく依 存する。酸化されたカテコールアミン類は、試料のpH が3以上の場合において環化反応が進行 する。環化反応が進行すると、さらに

酸化されやすい物質(アドレナリンで あればleucoadrenochrome)に変化す るため、カテコールアミン⇔カテコー ルアミンキノンの酸化還元サイクルは 起こりにくくなる。DA、AD、NAは異 なる環化反応速度定数をもっており、

DAが最も遅く、ADが最も速いことが 報告されている[36]。生体試料そのも のや、灌流液を用いて透析された試料 の pH は 7 付近であり、環化反応の速 度の違いによって感度の違いが生じる と考えられる。そこで、特性が大きく 異なるDA、ADを用いて以下の検討を 行った。

  応答電流の流速依存性を調べる前に、IDAEに印加する電位を決定するため、ADのCV測定を 行った(Fig. 2-15)。酸化された AD は、酸化された DA に比べて還元されにくいため、IDAE への印加電位の決定にADを用いた。本CV測定の際には、作用電極として直径が3 mmのグラ ッシーカーボン電極を、対向電極として白金線を、参照電極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用 いた。AD溶液の濃度は、1 mMとした。電位は-0.6~0.65 Vの範囲で掃引した。掃引速度は、

0.01 V/sとした。電位の掃引は、-0.2 Vから開始し、二度連続して掃引した。その結果、酸化、

還元反応に起因するピークは、0.3、-0.2 V でそれぞれ観測された。加えて、二回目の掃引の際 に、-0.15 V付近においてleucoadrenochromeの再酸化に起因するピークが観測された。しか しながら、adrenalinequinone の還元電流は観測されなかった。これは、環化反応により、

Fig. 2-15 Cyclic voltammogram of adrenaline. The adrenaline concentration was 1 mM. The scan rate was 0.01 V/s. The potential scan was started from -0.6 to 0.65 V vs. Ag/AgCl (2 cycles).

adrenalinequinoneが消失したためであると考えられる。この結果から、ADの酸化還元ピーク は、-0.2 Vから0.6 Vの範囲で得られたことから、IDAEへの印加電位は、0.6 V、-0.2 Vに設 定することにした。Fig. 2-16(A)に、DAについての流速の三乗根と応答電流値の関係を示してい る。流速は、0.5~5 µl/min.の範囲で変化させた。DA溶液の濃度は、100 µMとした。本測定 の際には二つの測定モードを用いている。一つはデュアルモード(Dual mode)で、IDAEを構

成する一対の電極のそれぞれに酸化、

還元電位を印加して測定するものであ る。もう一つはシングルモード(Single

mode)で、IDAEを構成する一対の電

極の一方の電極のみに酸化電位を印加 して測定するものである。拡散層が流 路深さに比べて非常に薄い場合には、

定常電流値は流速の三乗根に比例する ことが知られており[37]、今回の測定 では、十分電極上に物質輸送が行われ ていると考え、流速の三乗根に対する 応答電流の変化を評価した。DAの場合、

シングルモードで測定を行ったときに は、流速の三乗根に比例して応答電流 値は増加した。これは、電極上への物

Fig. 2-17 The response current dependence on the cube root of the flow rate obtained from 100 µM of adrenaline. Solid circles: oxidation current with dual mode, open circles: reduction current with dual mode, squares: oxidation current with single mode.

Fig. 2-16 (A) The response current dependence on the cube of the flow rate obtained from 100 µM of dopamine. Solid circles: oxidation current with dual mode, open circles: reduction current with dual mode, squares: oxidation current with single mode. (B) The flow rate dependence of the collection efficiency.

質輸送が送液によってのみ生じているためである。一方、デュアルモードで測定を行った場合で は、同様な比例関係は認められず、2 µl/min.のときに、応答電流値の変曲点が存在した。ここで、

流速が0~2 µl/min.の範囲において酸化、還元電流値が増加したのは、物質輸送の増加によるも

のに加えて、酸化還元サイクルによる電極間の拡散量が増加したためであると考えられる。一方、

流速が 2 µl/min.以上で応答電流値が減少したのは、電子移動律速になっていることと Fig.

2-16(B)に示すような捕捉率の低下が原因であると考えられる。2 µl/min.以上の範囲で電子移動 律速になっていると考えたのは、シングルモードの場合に流速が2 µl/min.以下の範囲において は、100 µMのDAが全量反応することを理論計算と実験値から確認しているためである。

  捕捉率は、IDAE で得られた還元電流の酸化電流に対する比で表されるもので、電極幅、電極 間ギャップが2 µm程度であれば静止系では、100%に近い値が得られる。Fig. 2-16(B)からも分 かるように、流速が低いほど、捕捉率は高くなっている。流速が高くなるにつれて、捕捉率が低 下する原因は、流速の増加に伴い電極上への物質輸送量は増加するものの、酸化されたカテコー ルアミンが隣の電極において還元されずに通過してしまう量が増加するためであると考えられる。

続いて、ADについても同様な実験を 行った。その結果を Fig. 2-17 に示 す。酸化電流は、デュアルモードで もシングルモードでも、流速の三乗 根にほぼ比例する傾向が認められた。

一方、還元電流は、流速が 0.3~3 µl/min.の範囲でわずかに増加する にとどまった。さらに流速が増加す ると若干電流値は増加する傾向が認 められ、5 µl/min.のとき、酸化電流 値が800 nA であったのに対し、還 元電流値は350 nAであった。

  DA、AD について得られた酸化電

流値から増幅率(デュアルモードで 得られた酸化電流値/シングルモー

ドで得られた酸化電流値)を計算した。その結果をFig. 2-18に示した。DAの場合、流速の増加 に伴い、増幅率は5.1から1.9に減少した。この結果は、上述したように、流速の増加に伴い電 極上への物質輸送量は増加しているが、酸化されたDA が隣の電極において還元されにくくなっ ていることを示している。一方、AD の場合では、増幅率が約1 のまま変化しておらず、ほとん ど増幅されていないことが分かった。AD の場合では、流速による電流値の増加は、主に電極上 への物質輸送の増加によるもので、IDAE上で増幅されていないことが分かる。これは既報[36] にあるように、酸化されたAD(adrenalinequinone)は、素早く環化反応が起こることにより、

Fig. 2-18 The relationship between amplification efficiency and flow rate for DA and AD. The amplification was the ratio between the oxidation currents from the dual and single modes. Solid circles:

dopamine, open circles: adrenaline.

さらに酸化されやすいleucoadrenochrome に変化してしまうためである。この一連の反応によ って、IDAE上でのADの酸化還元サイクルが阻害され、DAに比べて低い応答電流値が得られて いるものと考えられる。

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