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累積グラフによる在庫管理

ドキュメント内 ii (ページ 54-59)

在庫管理をするためには在庫量の動きを目に見える形で捕えておくと分かりやすいでしょう。

ある部品倉庫の在庫量の時間変化をグラフに表すとすれば、入庫時に入荷した量だけ増え、出庫 時に出荷する量だけ減るという階段状のグラフが得られます。ガソリンスタンドのタンクの在庫 量といえば、タンクローリーがタンクに満たしている間は一定の割合で増え、車の給油時には一 定のスピードで減少して行くような連続的なグラフが描けます。

在庫のグラフ

しかし、実際にタンクの現在量を測れといわれたらどうすればよいでしょうか。

もし、ある時点での在庫量が分かっていて、そこから現在までの入庫量と出庫量がきちんと記 録されていれば、現在量を直接計らなくても、あるいは常時計器の目盛りを見ていなくても、現 在量が計算で求められることが分かります。実際、最初の在庫量プラス累積入庫量から累積の出 庫量を引けば、それが現在の在庫量になります。時間を横軸にして累積入庫量、累積出庫量を1 枚のグラフに重ねて描いたものを累積グラフということにします。累積入庫量、累積出庫量、2 本のグラフを描くだけでも、在庫のいろいろな問題が見えてくることが分かります。

在庫の累積グラフ

時刻tまでの累積入庫量をI(t)、累積出庫量をO(t)、時刻tの在庫量をZ(t)とすると Z(t) =I(t)−O(t) +Z(0)

と表わされる、というのが上で述べたことです。ただし、Z(0)は時刻0での在庫量を表します。

在庫量をなるべく少なく押さえるためには、この二本のカーブの間をなるべく狭くすることで す。在庫管理とは、制御可能な入庫、あるいは出庫の量を制御不可能な出庫、あるいは入庫の予 想累積曲線になるべく近くなるように制御することといっても良いでしょう。

二本のカーブを描くことで分かるのは在庫量だけでしょうか。横方向、すなわち時間軸に平行 な直線が二つの累積曲線によって切り取られる線分の長さは何を表しているでしようか。ガソリ ンタンクのような場合には当てはまりませんが、機械部品のように一つ二つと数えられるような ものの場合、もし先に入庫したものは先に出庫する、というやり方(先入れ先出し方式とも言う) ならば、(Z(0) = 0とすれば)累積入庫量がnになるのはn番目の部品が入庫した時刻、累積出 庫量がnになるのはn番目の部品が出庫した時刻になります。したがって、時間軸に平行な直 線が二つの累積曲線によって切り取られる線分の長さは先入れ先出し方式の場合の、部品の(あ るいはモノの)滞在時間といって良いでしょう。

7.3.1 グラフで解く制約付き在庫問題

在庫にはいろいろな制約が付き物ですが、この累積グラフを使うことによっていろいろな制約 問題を解くことができます。たとえば、次のような問題です。

(1)倉庫容量(在庫量)制約

在庫するためのスペースには限りがあります。オーバーフローしたら捨てるか、他所の倉庫を 借りなければいけないために費用が発生します。そこで「予想需要量(累積出庫量)が与えられ ているとき、そのすべての需要に応じるという前提で、倉庫容量制約のもとで、回数が最小とな る発注時点と発注量は何か」という問題を解く必要があります。

ある商品の将来の需要(出庫量)の累積量が次の図のように予想されているものとしましよう (ホントウは需要があるたびに、その需要量分だけジャンプしながら増えて行く階段状のグラフ になるのですが、変化の回数が多くて正確には描ききれないので、なめらかな曲線で近似した、

と考えてください)。倉庫の容量は図のように与えられているものとします。さらに、初期の在 庫量は0、発注したモノはすぐに届くとします。

最適化問題の答えは、累積入庫量のグラフを描くことによって示すことができます。累積入庫 量のグラフは、入庫したとき(発注したとき)発注量だけ垂直にジャンプする以外は変化なし( 平線)です。即納ですので、発注回数をなるべく少なくしたければ、在庫が無くなったときに倉 庫容量分発注すれば良いことが分かります。

結局、

時刻0で縦軸の倉庫容量を示す位置から(時刻0で発注したことになる)水平に進み、累 積出庫量のカーブにぶつかったら(在庫切れ)倉庫容量のぶん垂直に進み(発注する)、そ の後水平に折れ曲がって累積出庫量のカーブにぶつかるまで進み(在庫切れ)、. . . とい う動きを繰り返した折れ線

が「最適」累積入庫量のグラフになります。これは簡単。

練習7.1 累積出庫量のグラフが上の図のように与えられ、倉庫容量制約が図のように与えられ ているとき、発注回数が最小になる発注政策による累積入庫量のグラフを重ねて描きなさい。

(2)滞留時間(滞在時間、保管時間)制約

定期的な棚卸し作業の結果、あまり古いモノは捨てる、という制約があった場合はどう考えれ ばよいでしょうか。たとえば古くなると劣化する、あるいは腐るようなものは先入れ先出し方式 で、ある期間以内に出庫してやる必要がある、というような場合です。そこで、「予想需要量( 積出庫量)が与えられているとき、滞留時間制約のもとで、回数が最小となる発注量と発注時点 は何か」という問題を解く必要があります。

予想累積出庫量のカーブが上の図のように与えられたものとしましょう。もし、図の矢印で示 したような許容倉庫滞留時間(賞味期限と考えても良いでしよう)が与えられているとすると、

最初に倉庫容量分を発注してしまうと、2割くらいは賞味期限切れの商品を出庫することになる ことが分かるでしよう。したがって、最初の発注量を抑えなければいけません。すぐに分かるよ うに、入庫直後の累積入庫量グラフと累積出庫量グラフとの水平距離が賞味期限以下でなければ いけないことになります。

結局、賞味期限を守った最小発注回数に基づいた累積入庫量のグラフは、

垂直方向の線分が倉庫容量以下、水平方向の線分が賞味期限以下、という二つの制約を持 つた折れ線(階段関数)

になります。これを効率よく描くにはどうしたらよいでしょうか、考えてください。

練習7.2 累積出庫量のグラフが上の図のように与えられ、倉庫容量制約、賞味期限制約が図の ように与えられているとき、発注回数が最小になる発注政策による累積入庫量のグラフを描きな さい。

(3)最小保持制約

この言葉自体はあまり定着したものではありませんが、入庫してから何か手を加えないと出庫 できない、というようなケースを考えてください。たとえば、規格をそろえるとか、処理を施す とか、何らかの都合で、入庫してから一定期間経過しないと出庫できないという場合です。ある いは、これと逆のケースで、累積出庫グラフを顧客の納期と考えると、それに間に合わせるため にはたとえば、出庫する何日か前には入庫していなければ間に合わないという状況を考えても良 いでしょう。

そこで、たとえば、「将来の需要がだいたい予測できたとして、与えられた倉庫容量制約、最 大許容滞留時間、最小滞留時間制約条件の下で、発注回数がもっとも少ない発注方法、つまり発 注量と発注時点、を求めなさい」という問題を解く必要があります。

これまでの二つの問題はいずれも、倉庫が空になったとき発注すれば良かったのに対して、こ の問題では、そうなってから発注したのでは間に合いません。入庫直後の商品はすぐに出庫出来 ないからです。したがって、累積入庫量のグラフは累積出庫量のグラフより、最小滞留時間分手 前の時点で垂直方向に転じなければいけません。ということは、累積出庫量のグラフを処理時間 分だけ左にずらし、その線を累積出庫量のグラフと思い、賞味期限マイナス処理時間を新たな倉 庫滞留時間の上限と見なして、二番目の問題を解けば良い、ということが分かります。三つの制 約を同時に考えながら入庫量のグラフを描くのは結構大変です。累積出庫グラフをうまく利用す れば、解決できますが、分かりますか。

練習7.3 累積出庫量のグラフが上の図のように与えられ、倉庫容量制約、倉庫滞留時間の上下 限制約が図のように与えられているとき、発注回数が最小になる発注政策による累積入庫量のグ ラフを描きなさい。

ドキュメント内 ii (ページ 54-59)