• 検索結果がありません。

定期発注方式と定量発注方式

ドキュメント内 ii (ページ 67-71)

そこで、在庫切れによる損害を費用換算し、保管費用との兼ね合いで、多少の在庫切れは我慢し てもらう、という考え方が合理的です。在庫切れによる損失は機会(損失)費用と呼ばれます。

売れるものがなかったので儲け損なう、品揃えの悪さから店の評判を落とし将来の需要に悪い影 響を与える、などによる損失を評価したものです。

実際にこの損失額を費用換算することはむつかしいので、品切れは20回に1回程度に抑える、

というような基準を設けるのが普通です。上のヒストグラムで言えば、需要の多い方から5% カットした後の最大需要量と平均需要の差を95%安全在庫量と呼び、それを発注点にする、と いうことが良く行われています。

過去の需要が無かったり、データが少なくてヒストグラムがあまり安定していない場合は、確 率モデルの出番です。毎日の需要Xは独立で平均m、標準偏差σに従うとすると、n日間の需 要の平均はnm、標準偏差は√nσとなり、nが大きければ正規分布で近似することが出来ます。

そうすると、正規分布の理論から、リードタイムL日間の需要X1+· · ·+XL が平均より 1.65

以上多い確率は、

P³

X1+· · ·+XL≥Lm+ 1.65 ´

=P

µX1+· · ·√+XL−Lm

1.65

Z

1.65

1

e−x2/2dx= 0.05 と計算できるので、安全在庫は1.65

とすれば良いことが分かります。これが95%安全在庫 量です。1.65は正規分布の上側5%点と呼ばれる値です。

練習7.8 90%安全在庫量を計算するためには、正規分布の上側10% 点が必要です。これを ExcelNorminv関数を使って求めなさい。また、リードタイムが4日の場合、95%安全在庫 量と90%安全在庫量を計算して、比較しなさい。

7.6.2 定量発注方式と定期発注方式

以上をまとめると、最適な定量発注方式は、1日の需要の標準偏差から計算される95%安全在 庫量を発注点として、在庫量が発注点になったら、経済的発注量を発注する、というものになり ます。発注量が経済的発注量になるのは、将来の需要が予測できないとしたら平均値で考えるの が最も合理的、という考えに基づいています。

定量発注方式を取つた場合の在庫グラフ

定期発注方式の場合は、発注量を決めることが大きな問題です。定期発注方式では、発注時期 が決まっているので、ある時点での発注量は、発注直後から平均を上回る需要が続いた場合でも 在庫切れを起こさないように十分な量にしておく必要があります。具体的には、予想を上回る需 要による在庫の減少を回復できるのは、次回の発注が納入された時点、つまり、発注間隔プラス リードタイムだけ先になります。したがって、在庫切れを起こさないための安全在庫は発注間隔 プラスリードタイム中のばらつきを吸収できるくらい大きく取る必要があります。

定期発注方式の場合の安全在庫の考え方(もし超過需要が続いたら)

この計算も、定量発注方式の場合と同じように、確率モデルを使って考えることが出来ます。

95%安全在庫量は、1日の需要の標準偏差をσ、発注間隔をN、リードタイムをLとして、

1.65

N+によって与えられます。

安全在庫量を比較すると、定量発注方式は常に在庫のレベルを監視して、発注点が来たらその 都度発注できるので、発注時期が固定されている定期発注方式に比べると、安全在庫量が少なく なっています。ということは、定期発注方式の方が、常に在庫を監視していなくても良いので、

管理面では優れていますが、在庫切れのリスクに備えるための保険である安全在庫量のための保 管費が嵩みやすい、ということになります。

ここまでの話は需要変動が予測できない場合の話です。もし需要の変動がある程度予測できる とすれば、もう少し巧いやり方があるかもしれません。例えば、しばらくは需要の減少が続く、

ということであれば、定期発注方式の場合に、発注量の計算にその予測を織り込むことが出来る かもしれません。「定量」発注方式の場合は需要量が一定と仮定した場合の最適発注量をあらか じめ固定していますので、このような変動に対しては対処できません。これに対して、予測を 使って、発注点も経済的発注量もその都度計算をやり直し、新しい発注点により、新しい経済的 発注量を発注する、というような動的な発注方式を考えることも出来るでしょう。

状況はその都度変化しますので、これらの複雑な状況に対して、理論的に最適解を与えること は難しくなってきています。その場合には、それぞれの状況をきちんと記述し、予想される需要 の変動を確率モデルとして表し、コンピュータを使って将来の動きを仮想的に実現させてみる、

という実験的方法で、良い解を見いだして行くという数値実験的なアプローチが取られます。こ のような考え方はコンピュータシミュレーションと呼ばれ、複雑な状況における問題解決の方法 として、必須のアプローチ方法になります。

練習7.9 発注間隔が7日の定期発注方式で、リードタイムが2日、一日の変動の標準偏差が10 と与えられている場合、95%安全在庫量を計算しなさい。定量発注方式の場合の95%安全在庫 量に比べてどれくらい増えたことになるのか、計算しなさい。

ドキュメント内 ii (ページ 67-71)