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多品目の在庫管理 – ABC分析

ドキュメント内 ii (ページ 77-82)

単品生産、販売ということもあるでしょうが、多くの場合、いちどきに多種類のモノを在庫と して抱えているのが普通です。工場の部品倉庫には何万種類の部品が在庫されています。コンビ ニの品数は数千種と言われています。それら多品目はすべて一様に同じ重要度を持っているわけ ではなく、したがって、同じ品切れでも品目によってその機会損失費(あれば(売って)儲けら れたはずのお金を逃したことに対する損害の見積もり)は一様ではありません。機会損失費が大 きいものほど品切れが生じないように多めに在庫し、常に監視している必要があります。そこ で、重要なモノとそうでないモノに分け、在庫管理に掛ける費用を重要度に応じてうまく配分す れば、一律に管理する場合に比べて、損失を押さえることができることが期待できます。

重要度を測る一つの尺度は取扱量、あるいは取扱金額の多少でしょう。たとえば下の図は某薬 品メーカで扱っている1商品ジャンルの単位時間あたりの取り扱い物量をまとめたものです。棒 グラフは一つの製品の取扱量を示し、単調増加曲線はそれを累積したものです。物量を大きさの 順に並べてから累積グラフを描くことで、上に凸のなめらかな曲線が得られます。

在庫価値のパレート図

図中の説明でも分かるように、上位11品目、全体の2割、で全体の8割の物量になっている ことが分かります。棒グラフがもっと左の方に歪んでくると、この曲線はさらに上の方に移動 し、逆に品目間にばらつきが少なくなるとこの曲線を下回ることが分かります。つまり曲線の膨 らみは品目毎の物量のアンバランスの度合いを表現している、ということができるでしょう。そ の意味で、この累積グラフは不平等曲線、あるいはパレート図(パレート曲線)と呼ばれてい ます。

同じような考え方で、下位の方から累積していったグラフはローレンツ曲線と呼ばれ、所得の 不平等さ加減を分析する際に用いられています。大ざっぱに言って、富の8割は人口の2割の人 が所有している、その2割の人の中の2割の人が8割のうちの8割を所有している、...というよ うな規則がある(これを「80-20の法則」と言うことがあります)ということを見いだしたのは 19世紀のイタリアの経済学者パレートですが、それを累積グラフで表現したのがローレンツで す。所得の低い人から順番に並べて累積所得を計算し、横軸に人口、縦軸に累積所得を取ってプ

ロットすると、下の図のように、下に凸な曲線ができます。このローレンツ曲線は、富の配分の 不平等差を表現するものとして、広く知られています。パレート図はこれを反転させ、大きいも の、重要なものから累積して行くという発想ですから、品質管理や在庫管理で広く使われるよう になりました。例えば「故障の8割は2割の原因から生じる(ので、その2割の原因を取り除く ことに重点を置く)」というように使われます。

ローレンツ曲線

上の図は物量についてのパレート図ですが、在庫管理の場合はそれに単価を掛けた資産価値を 計算したパレート図を描くのが普通です。つまり、品目毎に「物流量」×「単価」を計算して、そ れを大きい順に並べた棒グラフを作り、上と同じ手順でパレート図を描くのです。そのグラフで は左に来るモノほど資産価値が高いため、左に行くほど「重要度」が大きい品目が並ぶことにな

ります。80-20の法則が成り立っているとすれば、資産の8割は2割の製品に集中している、と

言うことができます。この「重要度」に応じて在庫管理の方法を切り替えなさい、というのが、

ABC分析と呼ばれる在庫管理法です。

もう少し具体的に説明しましょう。資産価値に関するパレート図が描けたら、縦軸の目盛りを 100分率に置き換えてください。そして、累積価値で70%以下の品目群をA群、70%より 大きく90%以下の品目群をB群、それ以外をC群とします。もっとも価値の高いA群の品目を 重点管理、B群の品目を普通の管理、品数は多くても価値が小さいC群の品目を手抜き管理とす る管理の仕方をABC分析といいます。70%、90%という数字は特に根拠があって決められ たものではなく、経験則です。したがって、本によっては別の数字を推奨しているケースもあり ます。

ABC分析

「重点管理」とは、在庫を手厚くするという意味ではありません。逆にきめ細かく対応し、な るべく在庫を減らすようにしなければいけません。なぜならば、価値が高いということは在庫を 持てば持つほど資本(負債)を寝かせることになるからです。

練習7.15 次の表は薬品卸の扱う品目の単価と数量の表です。Excelを使って品目ごとの価値

(単価×数量)を計算し、価値の高いもの順に並べて累積価値を計算し、パレート図を作成しな さい。ABC分析を行うために、A群(上位7割)B群(次の2割)C群(残りの1割)に分 類しなさい。

品番 単価 在庫量 品番 単価 在庫量 品番 単価 在庫量

1 150 116 11 560 76 21 40 425

2 3770 653 12 280 118 22 800 92

3 810 1603 13 2980 241 23 1470 73

4 670 82 14 50 123 24 940 338

5 1630 151 15 310 45 25 570 84

6 1810 131 16 2030 60 26 1820 412

7 1420 3483 17 800 325 27 140 49

8 40 97 18 2340 754 28 60 1503

9 30 69 19 80 138 29 940 430

10 1280 72 20 1490 98 30 420 57

A群(上位7割)の品番

B群(次の2割)の品番

ヒント:

1. 各品番毎に「資産額(=単価×在庫量)」を計算する 2. 品番を入れ替えて、資産額が大きいもの順に並ぶようにする

3. 資産額の累積を計算し、それらを総資産額で割っておく(資産額がk番目までの品番の合 計資産額を総資産額で割ったものをFk とする)

4. (k/30, Fk)(k= 0,1, ...,30)を折れ線で結ぶ。

5. Fk0.7を満たす最小のkkとすると、資産額がk番目の品番までがA群に割り当 てられる

参考図書

「在庫管理」をテーマにした本は「ハウツー」ものが多く、社会に出て実際の現場に出てみな いと分からない細かな技術が多い。ここで説明したような事柄についてはむしろ、ORの教科書 の1章として発見されることが多いので、いくつか覗いてみてください。

8 シミュレーション

8.1 はじめに

8.1 Yahooのゲーム情報をみると、「ガンダムなんとか」だとか「なんとかモンスター」のよ

うな「シミュレーションゲーム」情報が満載です。自分が主人公になったつもりになってアドベ ンチャーを続けるという設定は、現実世界では体験できないファンタジーを存分に味わうことが できます。

8.2 ゲームセンターに置いてあるドライビングシミュレータはF1ドライバーに自分を化身 させて、レースのフレーバーを気楽に味わうことができるようになっています。クラッシュして もそれはスクリーン上でのこと、自分の身の危険は全く考える必要がありません。航空会社では コックピットの実物模型を作ってパイロットの訓練を行っています。フライトシミュレータです が、機体故障だとか、天候異常などの突発事故に備えての訓練は、実機を飛ばして訓練したので は危険すぎるというので、欠かせない訓練装置です(http://www.fs21.com/fs-e.htm8.3 消防は実際の建物の延焼過程を知るために、部屋の中でどのように火が燃え広がってい くかを観察し、防火・防災のための対策を考える実物を燃やしてデータを取るという火災実験を 行っています。

(やってはいけません。http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/kasai/h23/top.htm

8.4 コンサートホールは音響が命です。作ってみたら全く鳴らなかった、ではすまされませ ん。そこで、音響をテストするためにコンサートホールの十分の一模型を作って、実際に音を出 して測定してみる、というチェックを行っています。

(http://www.nagata.co.jp/news/news0611.htm

8.5 レベニューマネジメントを導入する場合は、あらかじめいろいろなケースについて客の 需要、予約パターンなどを予想し、割引チケットの販売枚数を決めています。

8.6 ランダム回答法の確からしさを数量的に裏付けるために、何回も調査実験をする代わり

に、Excelrand()関数を使ってコンピュータ実験を行い、質問の選択確率が推定精度に大きく

影響することを確かめました。

8.7 日程計画における各作業の所要時間はばらつくので、3点見積もりによって所要時間を 推定しますが、それをベースにPERTを組もうと思っても、通常の方法ではうまくできません。

そこで、ばらつく所要時間のそれらしい値を実際に作り出してクリティカルパスを計算する、と いうことを繰り返し行い、だいたいのプロジェクト所要時間を推定するという、確率的PERT の分析法が取られます。

将来起こるかもしれない複雑な出来事を仮想的に実現させて擬似体験することをシミュレー

ション(simulation、模擬実験)といいます。経営システム工学におけるシミュレーションの例

としては、生産工場の設計問題、在庫管理、サプライチェーンマネジメント、生産工程・管理

(CIM・FMS)、物流システム・プラントなどの設計・管理、通信網の設計、VLSIの設計、

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